洪水
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被害地での対処を行うに当り、作業者には安全帽ゴーグル、重労働用の軍手ライフジャケット防水タイプのブーツ型安全靴などの装備を計画段階で整えられる[31]

洪水は世界各国で大きな被害をもたらしている。1980年代後半より世界の洪水発生件数は増加傾向にあり[32]、2000年から2017年にかけて、世界では年間平均で約8669万人が洪水の被災者となり、5424人が洪水により死亡しているが、これは死者数では地震や暴風雨、異常気温などより少ないものの、被災者数では自然災害の中で最も多い数字である。2018年には世界の洪水被災者は約3538万人、死者は2859人だった[33]

なお、日本における洪水被害額は、1993年から2002年の合計で外水氾濫が1.3兆円(54%)、内水氾濫が1.1兆円(46%)であり、ほぼ同値となっている[34]。@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .mod-gallery{width:100%!important}}.mw-parser-output .mod-gallery{display:table}.mw-parser-output .mod-gallery-default{background:transparent;margin-top:.3em}.mw-parser-output .mod-gallery-center{margin-left:auto;margin-right:auto}.mw-parser-output .mod-gallery-left{float:left;margin-right:1em}.mw-parser-output .mod-gallery-right{float:right}.mw-parser-output .mod-gallery-none{float:none}.mw-parser-output .mod-gallery-collapsible{width:100%}.mw-parser-output .mod-gallery .title,.mw-parser-output .mod-gallery .main,.mw-parser-output .mod-gallery .footer{display:table-row}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div{display:table-cell;text-align:center;font-weight:bold}.mw-parser-output .mod-gallery .main>div{display:table-cell}.mw-parser-output .mod-gallery .gallery{line-height:1.35em}.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div{display:table-cell;text-align:right;font-size:80%;line-height:1em}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div *,.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div *{overflow:visible}.mw-parser-output .mod-gallery .gallerybox img{background:none!important}.mw-parser-output .mod-gallery .bordered-images .thumb img{outline:solid #eaecf0 1px;border:none}.mw-parser-output .mod-gallery .whitebg .thumb{background:#fff!important}

浸水後に出された災害ゴミ2018年西日本豪雨

洪水により運ばれてきたごみ

洪水後、通行を妨げていたため道路の端に集められた流木

洪水流による道路舗装の損壊

洪水がもたらす恵み

洪水は人間の生活面や経済面に多くの破壊的影響を与える。しかし、洪水によって農地に肥沃な土壌がもたらされたり、また生態系に適度な攪乱をもたらすことで豊かな動植物相が生まれるなどの利点も存在する[35]

こうした洪水による恵みで最も著名なものはエジプトナイル川流域のものである。ナイル川下流域のエジプトでは7月中旬、エチオピア高原に降るモンスーンの影響で氾濫を起こすが、このナイル川の洪水(英語版)は水位の上下はあれど氾濫が起きないことはなく、鉄砲水のような急激な水位上昇もなく、毎年決まった時期に穏やかに洪水が起こった。そしてなによりも、この洪水は上流より肥沃な土壌を毎年ナイル河畔にもたらし、エジプトの豊かな農業生産を支えていた[36]。この洪水の影響を調整するために文明が発達し、世界最古の文明であるエジプト文明が成立した。この洪水は19世紀末にいたるまでエジプトの経済を支えていたが、20世紀に入ると通年灌漑が可能となって逆に洪水はエジプト農業の障害となり、1970年アスワン・ハイ・ダムの建設によってエジプトで洪水が起こることはほぼなくなった[37]

また、バングラデシュにおける洪水(英語版)ではガンジス川の氾濫によって例年のように被害が報告されるが、これは大規模すぎる洪水の場合であり、適度な洪水の場合は「ボルシャ」と呼ばれ、田畑に肥沃なシルトを運んできてくれる恵みの存在であると考えられている[38]

乾燥地帯や亜乾燥地帯では、年間を通して降水量が不規則な中、非常に重要な水資源となる。淡水の洪水は、河川回廊の生態系を維持する重要な役目を持ち、流域の生物多様性を支える[39]。また、洪水による氾濫は湖や川などに非常に多くの栄養素を供給し、そして捕食者が少なく栄養素に富む氾濫原が産卵に適する事もあり、数年間にわたり漁獲量を高める効果もある[40]ウェザーフィッシュのように洪水を使って生息域を広げる魚もいる。魚類だけでなく鳥類もまた、洪水によって引き起こされる利益を享受する[41]
破堤と応急的堤防補強

水が河道内に収まりきらなくなり、堤防を乗り越えて外に溢れ出すことを越流という。また、堤防が崩壊して一気に堤防内に水があふれ出すことを破堤という。破堤はただ単に崩壊するほかに、越流地点において上部や河道の反対側から氾濫水によって堤防が削られて崩壊することもある。この越流破堤は破堤のなかでも最も一般的なものである[42]

土嚢による浸水防止

釜段工

土嚢と止水板による地下鉄入口の応急対策

洪水モデル

降雨および洪水のモデル化の試みは19世紀に端を発し、以後さまざまなモデルが提案されてきた[43]

アメリカ陸軍工兵隊が制作した水理解析ソフトウェアHEC-RAS (the Hydraulic Engineering Centre model)[44][45]は、無料で利用できる最も一般的なモデルの一つである。TUFLOWなど他のモデルでは[46]、1Dと2D 要素を結合させ、河道から氾濫原に至る洪水の深さを導いている。波浪や河川による氾濫を面的に捉える手法は時代遅れになりつつあったが、2007年に発生したイギリスの洪水は、表層を流れる水の動きを重視する方向へ転換させた[47]


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