津軽弁
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津軽弁の語のアクセントには、ある場所から高くなり、それ以降もそのまま高く続くという規則性がある[13]。共通語のアクセントの場合は、あるところから低くなるという特徴があり、低くなる直前の拍を「アクセント核」と呼ぶ。津軽弁の場合は、高くなった直後の拍をアクセント核と呼ぶ。例えば、「雨」は2拍目にアクセント核があり、「低高」と発音し、「雨も」は「低高高」である。「帯」は1拍目にアクセント核があり、最初から高い「高高」。「帯も」は「高高高」。「飴」にはアクセント核がなく、単独では「低高」だが、助詞が付くと高音部が移動して、「飴も」は「低低高」となる。
文法
用言

動詞活用は基本的に共通語と同じだが、五段活用をする動詞の「行こう」「やろう」などにあたる形はなく(代わりに「行ぐべ」のように「べ」を使う)、四段活用である。また「買う」「習う」などのワ行四段動詞が、「かる」「ならる」のように、ラ行四段活用やラ行変格活用となることがある[14]。一段動詞の命令形は、「起ぎろ」、「開げろ」のように「ろ」語尾を使うが、日本海側の西津軽郡では「起ぎれ」、「開げれ」のように「れ」語尾とすることがあり、秋田弁北海道方言と共通する。サ行変格活用の「する」は、未然形では「しねぁ」または「さねぁ」(しない)、終止形は「し」または「しる」、仮定形は「せば」、命令形は「しろ」または「しれ」「せ」となる[15]

形容詞は、終止形語尾が連母音融合を起こした形、例えば「赤い」なら「あげぁ」が語幹となっており、それ自体は活用しない。連用形は「あげぁぐ」(赤く)、仮定形は「あげぁば」(赤ければ)となり、語幹に直接「ぐ」「ば」などの接尾辞を付ける。カリ活用は発達しておらず、過去形「赤かった」は「あげぁくてあった」「あげぁふてあった」と言う。南部弁でカリ活用が発達しているのとは対照的である。

形容動詞では、連体形が「しずがだもり」(静かな森)となって、終止形と同形になる。また仮定形も、「静かだら」(静かならば)、あるいは「静がだば」のように「-な」ではなく「-だ」に統一された形となる[16]
助動詞など各表現
意志・勧誘・推量「べ」
意志・勧誘・推量には、「べ」を用いる。推量には、「べ」に「おん」を付けた「びょん」を使う
[17]。「かぐべ」(書こう)、「あげぁべ」(赤いだろう)、「しずがだべ」(静かだろう)のように原則として終止形に付くが、一段動詞には「おぎべ」(起きよう)、「あげべ」(開けよう)のように未然形に付く[16]カ行変格活用「来る」の場合、「くるべ」のほか、「くべ」「きべ」と言う話者もいる[15][16]。「らしい」にあたる語として、共通語と同じ「らし」もあるが、「降るよんた」のような「よんた」を主に使う[18]
丁寧
「ます」に相当する丁寧の表現は、「かぎし」(書きます)、「おぎし」(起きます)のように連用形に「し」(す)を付ける。「し」の否定は「せん」の変化した「へん」「ひぇん」[16][19]。より丁寧な表現として「書ぐでごし」(書きます)、「行ぐでごし」(行きます)、さらに丁寧な表現として「書ぐでごえし」「行ぐでごえし」のような表現が、弘前を中心に使われていたが、現代では聞かれなくなった[19]。「読みへ」(読みなさい)、「おぎへ」(起きなさい)のように、連用形に「へ」をつけると丁寧な命令表現となり[20][21]、「かいでけへ」(書いてください)、「起ぎでけへ」(起きてください)のようにも言う[20]
断定
断定には、共通語と同じく「だ」を使い、丁寧形は「です」。「です」の否定が「でひぇん」(←でせん)となる点が共通語と異なる[22]
継続相
共通語の「ている」にあたる継続には、「くってら」(食べている)、「書いでら」(書いている)のように「てら」「でら」を用いる。若年層では、「くっちゅ」「書いじゅ」のような「ちゅ」「じゅ」、あるいは「書いじゃ」のような「ちゃ」「じゃ」と言う場合がある。「ちゅ」を使う若年層では、「みでら」(見ていた)のように「てら」を共通語の「ていた」にあたる完了の意味でも用いるようになっている。元来の津軽弁では、完了の意味には「見であった」のように「てあった」を用いる[17]。(例)手紙 書イジュはんで(手紙を書いているから)[23]
可能・受身・自発・使役
可能を表す形には、「かげる」(書ける)、「おぎれる」(起きられる)、「あげれる」(開けられる)、「これる」(来られる)のような可能動詞形(四段動詞以外は、可能動詞から類推して発生した形)と、「書ぐにいい」「起ぎるにいい」のような形があり、前者は能力可能を表す。また受身を表すのに「かがえる」(書かれる)、「おぎらえる」(起きられる)のように「える」「らえる」(「れる」「られる」からrが脱落したもの)が使われるが、この形で可能も表す[24]。自発を表すのには、「書かさる」「押ささる」「積まさる」「起きらさる」のように「さる」を使う。使役を表すのには、「かがせる」(書かせる)、「おぎらせる」(起きさせる)、「こらせる」(来させる)のように「せる」「らせる」を用いる。
助詞
格助詞等

共通語の「が」にあたる、主語を表す格助詞は使われず、無助詞で表す(例)花咲いだ(花が咲いた)。「を」にあたる対格も普通は無助詞だが、強調する場合には「ごど」「ば」などを使うことがある(例)「さげごどのむ」(酒を飲む)。係助詞「は」も用いられず、「雨ぁ」(雨は)のように軽く母音が入る程度だが、強調する場合には「きゃ」「だきゃ」があり、「わきゃ行く」(私は行く)のように用いる[25]

共通語の「に」にあたる語には、「ね」と「さ」がある。「さ」は元々は「へ」にあたる方向を示す語であったが、意味範囲が拡大している。(例)「せんせさ聞ぐ」(先生に聞く)、「静がさなる」(静かになる)

準体助詞としては、例えば「行くのをやめる」なら「行ぐのごどやめる」「行ぐのやめる」「行ぐんずやめる」のように複数の言い方がある[26]。「行ぐんず」は、五所川原市を中心とした日本海側で使う[26]
終助詞・間投助詞

文末の動詞・形容詞に付いて意味を強める「じゃ」(「でぁ」とも)がある。(例)さびじゃ(寒いな)

間投助詞では、「さ」「きゃ」「の」「な」「ね」がある。「さ」「きゃ」は主に女性が使い、「の」は男女両方、「な」は主に男性[27][28]。「ね」に「す」を付けると丁寧になる。弘前の年配女性では「ねす」の変形「ねさ・ねは」が使われ、上品な表現とされる[28]
接続助詞

「から」にあたる理由(順接既定条件)の接続助詞には、「降るはんで」(降るから)のように「はんで」を使う。室町時代京都で使われた「ほどに」が、「ほでえ」「ほで」「はで」と変化したもの[29]。南部弁では「すけ」を使い、津軽弁の「はんで」と対立する。「はんで」は「ばて」となることもある[30]。「けれども」にあたる逆接既定条件の接続助詞には「ばって」を使い、「ども」などを使う南部弁と対立する。順接の仮定条件には、「行くってせば」(行くとすれば)のように「せば」「へば」を使い、逆接の仮定条件には「降るばたて」(降るとしても)のように「ばたて」を使う[27]
体言

一人称代名詞には、主に「わ」が使われ、ほかに「おら」等もある。「わ」は古語由来の語で、対応する二人称は「な」だが、「な」は現在の津軽では急速に衰退し、「おめ」が使われるようになっている。「わ」の複数形は「わんだい」「わんだじ」、「おめ」の複数形は「おめだじ」[31]

「お茶っこ」「机っこ」のように、名詞に「こ」を付けて親愛の意味合いを添えることが多い。東北方言一般に使われる接尾辞である。
代表的な津軽弁の表現

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出典検索?: "津軽弁" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2016年12月)


「あさぐ」→「歩く」

「あずましい」→「とても気持ち良い」。例:(温泉で)「あずましぃ?」→「極楽、極楽ぅ?」

「あっつい」→「熱い」

「あっちゃ」、「かっちゃ」、「おかちゃ」、「おが」→ 年配の女性全般。母親。

「あぐど」→「かかと」

「あめる」→「腐る」

「あべ」→「来い」、「おいで」

「あっぺ」→ 左右反対や前後反対など。表裏反対は「かっちゃ」。

「あっぺる」→「盗む」

「あんちか」、「わんちか」、「わんつか」→「ほんの少し」

「あげた」→「上顎」顎(あぎと)

「あんべ」→「気分」、「居心地」

「いだわしぃ」→「もったいない」

「いとまが」→「ほんの少しの間」

「いぐでねぇ」→「ろくでもない」

「いずぅ」、「いずい」、「いんずい」→ 下着がキツくてむず痒いとき、セーターがチクチクするとき、新しい靴がしっくりこないときなど、体に違和感や気持ち悪さを感じたときに発する言葉。

「うだで(ぇ)」、「うだでぐ」→「凄い」、「大変」など。語源は古語の「うたてし」。

「うって」、「うっと」→「沢山」

「うづげる」→「甘える」


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