泡沫候補
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そこで、このような候補者について文字通り「独自・独特の観点や価値観で立候補し選挙活動を行っている」という意味を表し、且つ、短く簡潔に表現した慣用句として「独自の戦い」が用いられている。
使用例(神奈川11区)(横須賀市三浦市小泉純一郎前)が盤石。参院議員から転じた斎藤勁新)は無党派層にどこまで食い込めるかがカギ。瀬戸和弘(新)は党勢拡大を狙う。天木直人(無新)、羽柴秀吉(無新)は独自の戦い。━━ 2005年8月27日 日本経済新聞朝刊「衆院選公示前の情勢・南関東」から引用
泡沫候補締め出し
新聞社と行政との取り決め

岩瀬達哉が森岡健作名義で発表した「泡沫候補撃退マニュアル!!」(『別冊宝島356 実録! サイコさんからの手紙』宝島社に収録、一部は岩瀬達哉『新聞が面白くない理由』講談社にも加筆修正の上収録)によると、1967年第31回衆議院議員総選挙を前に、朝日新聞毎日新聞読売新聞の3社は法務省自治省と、泡沫候補を紙面から締め出すための取り決めを行ったという。記事での締め出しだけではなく、選挙広告の拒否も「泡末締め出しで最もやってもらいたい」(〔ママ〕、法務省担当者)とされた[5]。このカルテルは1977年ごろ立ち消えになったが、内容はほぼ引き継がれているという。

なお、自治省がこうした文書を出した経緯は、前回の1963年に行われた第30回衆議院議員総選挙肥後亨事務所(選挙期間中に「背番号」と改名)という確認団体が大量に候補者を出して、問題となったことがきっかけとなった。

岩瀬が朝日新聞社の内部文書として示した文書によると、朝日は3社の中でも最も泡沫候補の排除に力を入れている。朝日はまず「ホウマツ 〔ママ〕取り扱い要領」[6]を作成し、要領に従った泡沫候補締め出しを進めた。1977年第11回参議院議員通常選挙に際して、改訂版となる「特殊候補応対要領」を作成し、まずこの文書が社外秘であることを強調した上で、「柔らかく応対するが、最終的には突っぱねる」「相手の抗議、質問に対しては、慎重に受け答えするが、自分の方から議論することは絶対に避ける」などと門前払いを指示し、「特殊候補」との想定問答も掲載した[7]。また、1989年にさらに改訂した「特殊候補の扱い」を作成した。同文書では候補者を3つに分け、それぞれ報道に格差をつけるよう指示している。
一般候補
政党などに属している候補者、または諸派・無所属でも現職及びその後継の候補者。
準一般候補
当選の可能性は別として、まじめなミニ政党などの候補者。
特殊候補
売名や営利などに利用したり、自己実現的欲求を満足させるために数々の選挙に立候補、あるいは自己の政見を述べるよりも、他の候補に対する妨害や支援を主目的にするなど、候補者としての客観的な評価が認められない候補。

このように区分した上で、「準一般候補」は「スペースなどの制約で、候補者紹介や、政見アンケート類の扱いが小ぶりになるのもやむを得ない」としている[8]。さらに、「特殊候補」に対しては紙面からなるべく排除するように指示している。具体例として『主要六政党の候補者に聞いた』『立候補した六人のうち有力四候補の意見を紹介』『主な候補の一日を追うと――』などの表現を入れ、ある特定候補があたかも立候補していないかのように扱ったわけではないことを断る[9]

などの手法を挙げている。これらは、実際に紙面でしばしば用いられている。

さらに、特定候補の締め出しについての社外からの問い合わせには『毎日の紙面はニュース価値によって新聞社が扱いを決めている。紙面スペースなどとの兼ね合いで決まる』『届け出一覧などの公報的役割の記事では平等な扱いだ』『インタビューなどの企画ものは、誰にインタビューするかなどは新聞編集権の範囲だ』『これらの扱いは、公選法一四八条の報道・評論の自由として裁判上も定着している』[9]

と説明するよう指示しているという。
報道姿勢への対応

岩瀬の取材に対し、朝日新聞社は事実上回答を拒否している。ただし、「特殊候補」については、その締め出しは「選挙報道に関する確立された判例をいくつか参照」すれば何ら批判される行為ではないという旨の回答があった[10]。また、産経新聞記者村山雅弥のブログ[11]によると、「売名的な行為に手を貸すことになるとの考え方から、弊紙では候補者のプロフィール記事などでは泡沫候補を外し、それ以外の人を「主な候補者」といった形で紹介しています」と産経新聞では泡沫候補の排除を行っていることを明らかにしている。

その候補者がまじめか売名目的かといった基準は、結局主観に左右されるため、実際にはその候補者の得票予測で基準が設定されていると見られている。

ただし、候補者の内容にかかわらず、法律上の政党要件を満たした政党公認を受けたり、無所属であっても当選の可能性がある候補者を排除することはない。また、それまでの選挙で「特殊候補」として無視されていても、その候補者が政党の公認を受ければ、「一般候補」としての扱いになる。さらに、選挙戦が一騎討ちとなった場合、片方は普段は無視される「特殊候補」扱いを受けていても、この時だけは政見も含めて報じることもある。一騎討ちでなおかつ片方を「特殊候補」扱いする場合は、「(有力と見なした候補に対する)事実上の信任投票」などと報じられる。また6人が立候補し、このうち2人が特殊候補である場合に「事実上4人の争い」とするような表記もしばしば行なわれる。

政党については、法律上の政党要件の有無、国会議員所属の有無が大きな評価基準となっている。公職選挙法における政党要件は、以下の基準である。

所属国会議員が5人以上いれば、無条件[12]

所属国会議員数にかかわらず、直近の衆院選か参院選で全国得票率が2%以上

ただし、政治資金規正法では、所属国会議員が1人以上いれば、参院選は前々回に2%以上でも要件を満たす

たとえば、新社会党第18回参議院議員通常選挙(1998年)までは議席を持っていたので、独自の党名で報じられた。しかし、以降は政党要件と議席を失ったため「諸派」扱いに転落した。政党要件の有無は大きな比重を占めているようで、第44回衆議院議員総選挙(2005年)では候補者を立てなかった自由連合(この時点で政治資金規正法上の政党要件あり)が議席勢力図には掲載されているのに、新党大地は議席を獲得したにもかかわらず、政党要件を得ていないことから、NHKを除き勢力図では「諸派1議席」として扱い、注釈で新党大地としていた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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