法規
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立憲君主制の下における法規概念(「国民の権利を制限し、国民に義務を課する成文の一般的法規範[7]」(一般的権利制限規範説[8][注釈 3]))をそのまま維持する考え方もあるが、国民による民主的なコントロールを重視し、

権利・義務という枠組みを外し、単に一般的・抽象的な法規範[注釈 4]を法規とする見解(一般的規範説[8][注釈 5][注釈 6]

権利を制限するだけではなく、広く国民の権利義務に関係する法規範を実質的法律に含め、例外的ではあっても、個別的・具体的な法規範をも含める見解(権利関係規範説[13][注釈 7]

一般的規範説と権利関係規範説との中間にあって、実質的法律を「国民の権利に関係する一般的抽象的法規範」と捉え、一般性の要素を維持しつつも権利制限規範の要素を権利関係規範にまで拡張し、「一般的規範性」と「権利関係性」の双方を実質的法律のメルクマールとする見解(一般的権利関係規範説[3][注釈 8]

日本国憲法41条後段は、国会に対し、他の憲法規定に抵触しない限り、どのような内容の形式的法律をも制定する権限を与えたとする見解(形式的法律概念一元説[3][注釈 9]

などがある。

以上のような法規概念の捉え方の差異は、憲法の明文上法律事項とされているか否か明確ではないものとの関係で、特に問題にされる。

例えば、日本国憲法の下では、内閣の組織については法律事項とされており(日本国憲法第66条1項)、これに基づき内閣法が制定されているが、内閣の統括の下にある行政機関の定めをどうするかについては、憲法上明文の規定がない。そのため、立憲君主制の下における法規概念を前提とすれば国会が定める法律による必要はないとも考えられるが、実際には法律が制定されている(国家行政組織法など)。この点については、立憲君主制の下における法規概念を前提に、行政庁による行政処分は国民の権利義務に影響を与えるという前提のもと行政組織の定めも法規に該当するという理解、上記に掲げた法規概念を広く解する見解を前提として、行政組織に関する定めも法規に該当するとする理解などがある。

また、勲章褒章などの栄典について法律で定めることを要するかも問題とされる。この点に関する政府による見解は、立憲君主制における法規概念を前提に、日本国憲法第7条7号による栄典の授与については、国民の権利を制限し又は国民に義務を課すものではないから法律で定める必要はないとし、太政官布告たる褒章条例などを政令で改正する措置を採っている。これに対し憲法学者の間では、日本国憲法の下では栄典制度は法律事項であり、政令で定めることはできないという見解が支配的である。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ なお、石川健治によれば、Rechtssatzを「権利命題」と訳すのは、客観法という意味で用いられているRechtを主観法(権利)という意味でのRechtと取り違えたものであって、端的にいって誤訳であるとされるが、日本国憲法41条論における「法規」概念は、結果として、もはや権利命題と読んでも大過ないものになっているのもまた、事実であるとされている[1]
^ もっとも、大日本帝国憲法下においても、学説において見解の対立があった[3]。例えば、穂積八束は、帝国議会の協賛を必要とする立法事項を憲法上に個別に明文規定がある場合に限定しており[4]美濃部達吉は、法規概念に一般性の要件を含めず[5]市村光恵は、逆に、実質的意味の法律を一般的抽象的規範として理解しつつ、大日本帝国憲法中の「法律」を全て形式的意味で捉え、形式的法律概念一元説に立っているとされる[6]
^ 19世紀のドイツ公法学に由来するといわれる一般的権利制限規範説を採用する論者は現在はいないとされているが、内閣法11条、内閣府設置法7条4項、国家行政組織法12条3項の背景には、一般的権利制限規範説の発想があるとされる[8]
^ 「一般的」とは、法の受範者が不特定多数人であることを意味し、「抽象的」とは、法の対象・事件が不特定多数であることを意味し、行政行為裁判と区別する意味で重視される。
^ 例えば、佐藤 1983, p. 628、芦部 2002, p. 270、杉原 1989, p. 214、樋口 1998, p. 214、浦部 2000, p. 528、阪本 2000, p. 277、辻村 2004, pp. 414?415であり、憲法学の多数説であるとされることがあるが[9][10]、むしろ、学説の分布状況としては、一般的規範説と一般的権利関係規範説とが拮抗しており、少数説ながら、権利関係規範説と形式的法律一元説が無視できない状況であると要約されている[3]
^ なお、一般的規範説は、国会が措置法処分的法律)と称される個別的・具体的な法規範を定立することを例外的に許す見解(例えば、芦部 2002, pp. 270?271であり、一般的規範説の中では多数説であるとされる[11]。)と、それを許さない見解(例えば、樋口 1998, p. 232、浦部 2000, p. 528、阪本 2000, pp. 277?278など。)とに分かれる[3]。しかしながら、一般的規範が全て国会で定められなければならないという主張と、国会は一般的規範しか定めることができないという主張とでは、次元が異なっている[3]。一般的規範の定立が国会の専管事項であると解釈しても、そのことから直ちに国会が他の国家機関との競合的所管事項として個別的規範を定立することは許されないという結論が導かれるわけではない[12]
^ 例えば、伊藤 1995, p. 421などがその数少ない例であるとされる[3]
^ 例えば、清宮 1979, p. 204、佐藤 1995, pp. 144?147、戸波 1998, p. 364、長谷部 2004, p. 326、内野 2005, p. 132[3]
^ 例えば、高橋 2001, pp. 215?216}、松井 2002, p. 157[3]

出典^ 芹沢, 市川 & 阪口 2011, p. 302(石川健治執筆)
^ ラーバント, パウル『歳計予算論』法制局、1890年。NDLJP:1079342。 
^ a b c d e f g h i 赤坂 2005, p. 149.
^ 穂積八束『憲法提要(下巻)』(第5版)有斐閣、1915年。NDLJP:1874579。 
^ 美濃部達吉『憲法撮要』(改訂第5版)有斐閣、1932年。NDLJP:1267441。 
^ 市村光恵『帝国憲法論』(改訂第13版)有斐閣、1927年。NDLJP:1080997。 
^ 芦部信喜「現代における立法」『憲法と議会政』東京大学出版会〈東大社会科学研究叢書〉、1971年。doi:10.11501/11894665。 
^ a b c 赤坂 2005, p. 148.


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