そもそも、法則(英:law、独:Gesetz)と規則(英:rule、独:Regel)の区別も問題で、法則の厳密性と違って規則は例外をゆるすものとして混同を避ける向きもある[6]。 スティーヴン・トゥールミンはその著書『科学哲学入門』(1953年)において、法則は、"法則本体" と "適用範囲" の要素に分離できることに言及し(例えば「xがAならば、xはBである」という本体部分と、「xがa,b,c、、、s,t,u の範囲ならば」という適用範囲の指定があり)、それらを分離して吟味すべきことを述べた。トゥールミンは「法則というものは有効範囲が不明な周遊券のようなものである」と指摘。我々は有効範囲が不明な周遊券を持っており、旅に出てとにかくそれを使ってみる。そして無事使えると、事後的に "ここは周遊券の有効範囲に入っていたのだ" とする。同様に法則も、新たな領域においては実際に適用できるのかそうでないのか事前には判らない。無事適用できると事後的に "ここは適用領域の中だったのだ" とする、と指摘。つまり、法則の一回一回の適用行為は一種の「賭け」であり、法則を適用できるとの考えは、過去の適用の成功事例をもとにしたあくまで帰納的な推測にすぎない、またそれゆえに「法則」は確かさをもって新しい事例を導き出すことはできない、と指摘した。これは、因果性に対するヒュームの懐疑論に似通う。 かつて法則は、観察・実験を繰り返すことで帰納的に得られる、と信じられていた時代もある。だが現代の科学では、カール・ポパーによってなされた指摘・提唱も織り込みつつ、法則というものは、命題の中で限られた回数ではあるが観察・実験で検証されたものをとりあえず反証例が見つかるまでの間だけ、仮説的に法則として認める、と考え、法則というのはあくまで仮説にすぎない、とする考え方がおおむね採用されるようになっている。また、そのような仮説的法則を複数個体系化したものが「理論」だ、と言われるようにもなっている。「自然法則」も参照 自然法則の関連項目 : (物理法則 / 法則の破れ 「法則」というのは、そう呼ぶ人が事象間に一定の関係があると見なしている場合に用いる用語であるが、(まさにその定義どおりではあるものの)提唱している当人が一定の関係があると感じて法則と呼んでいても、他の多くの人から見れば、一定の関係は無いように疑われ、科学的には裏付けの無い命題だとか、ただのジンクスの類だ、と判断される場合もある。また提唱している当人が、そうした周囲の判断・違和感を知りつつ、あえてそのような違和感を楽しんでもらうため、あるいは世界の主観的な見え方をそれはそれとして楽しんでもらうために、何らかの命題を “法則” と呼んでいる場合もある。(例:マーフィーの法則) 道徳法則に分類される法則というものは、「こうあるべし」ということを表明している。「こうである」という事実を表明しているのではない。「ヒュームの法則」参照。
トゥールミンの指摘
法則、仮説、理論
俗的な意味での“法則”
道徳法則
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 現在の日常語でそうだというのではなく、語源的にという意味で。
出典^ a b c d 村上陽一郎『奇跡を考える』岩波書店、p.133-138
^ a b 安藤聡『英国庭園を読む:庭をめぐる文学と文化史』彩流社、2011年、281-283頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-7791-1682-7。
^ 柴田光蔵『法律ラテン語格言辞典』玄文社、1985年、68ページ。
^ アンブローズ・ビアス『悪魔の辞典』「例外」、郡司利男訳、こびあん書房、1982年。森安達也「ギリシャ語・ラテン語のことわざ」、『月刊言語』1986年4月号「特集 世界のことわざ―民族の知恵が語る」大修館書店。
^ ベンジャミン・リー・ウォーフ「科学と言語学」、池上嘉彦訳『文化人類学と言語学』弘文堂、1970年、49ページ。
^ 栗田賢三・古在由重編『岩波哲学小辞典』「規則」、岩波書店、1979年。カント『実践理性批判』第一部第一篇第一章第一節注。マックス・ウェーバー「R・シュタムラーの唯物史観の「克服」」松井秀親訳、『完訳・世界の大思想1 ウェーバー 社会科学論集』河出書房新社、1982年、特に「四 「規則」概念の分析」135ページ以下。
関連文献
竹内薫『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』光文社新書、2006年2月16日。ISBN 978-4-334-03341-5。
関連事項
例外、特異点
経験則
保存則
物理法則一覧、法則の破れ
化学の法則
en:Fundamental psychological law
法律(律令。律、令)
起草、立法、施行、法律の改定(英語版) / 法解釈 / 違法性。脱法行為。
戒律、十戒 / 破戒
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基準改定