治外法権
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1995年10月の日米合同委員会合意により、殺人又は強姦という凶悪な犯罪であるケースでは、身柄を日本の警察・検察側に引き渡し、日本の司法により裁判をおこなうことになった[14]

公務中の事故の捜査については、米軍に優先的な裁判権・捜査権限があるため、米軍機の墜落事故や公務車両の事故などについて、警察や海上保安庁検察庁が事故現場の保全・管理や立ち入り制限、証拠の押収、損害補償裁判(民事)など、日本の司直の手を離れることなどが、基地周辺住民の感情を逆なでする要因となっている(横浜米軍機墜落事件沖国大米軍ヘリ墜落事件沖縄自動車道における演習中の交通事故、キャンプ・ハンセン空軍ヘリ墜落事故)。また、AFNは日本国内にある無線局でありながら、運用にあたって適用されるのは、電波法ではなく、国際電気通信連合憲章やアメリカの連邦通信規則であり、規制も総務省総合通信基盤局ではなく、国際電気通信連合や連邦通信委員会からのみ受ける。

また、日本国民が在日米軍施設内で事件を起こした(と看做された)場合は、日本国刑法ではなくアメリカの統一軍事裁判法で処断され、軍法会議に掛けられかねないことになる。
自衛隊地位協定

[注 7]日本が自衛隊を海外派遣する際に、自衛隊の任務を独立に遂行する目的で、必要な特権および免除について現地政府と合意する方法が採用されている。過去には1994年ザイール国への陸自駐屯時の交換公文、2003年?2009年の「イラク復興支援活動」におけるクウェート国基地使用の交換書簡、ソマリア沖海賊対処のためのジブチ国との交換公文の締結がある。例えば2003年12月22日にクウエート国との間で締結された「交換公文」については、刑事裁判権は日本側にあり、公務執行中に生じた事案を除き、民事および行政の裁判権はクウェート国側にあるものであった。またこれ以外に国連PKOとして国連が受入国と「PKO地位協定」(国連地位協定)を締結する場合があり、これは国連憲章105条「自己の任務を独立に遂行するために必要な特権及び免除を享有する」にもとづき、国連と受入国の間で具体的に規定されるものである。PKO派遣については1992年のカンボジアへの国連PKO派遣以降、14の国連PKO参加実績がある。

[注 8]国連PKOについて。国連軍地位協定モデル案によれば「国連平和維持活動の軍事部門の軍事構成員は、【受入国・地域】で犯すことのあるすべての犯罪について、各参加国[注 9]の専属管轄に属する」(47項b)すなわち公務内外を問わず犯罪行為の管轄権は派遣国が専属的に行使すると規定する。カンボジア派遣の自衛隊員による交通事故3件について日本がそれぞれ関係者を処分しているのはこれによる。交換公文方式について。ルワンダ難民救援を目的とした自衛隊の派遣のさいは日本とザイール共和国との間で公文を交わしており、これによれば「同隊員は、刑事裁判権に関しては、公務中の行為であるか否かを問わずすべての行為についてザイール共和国の裁判権からの免除を享有し、また、民事裁判権及び行政裁判権に関しては、公務中の行為についてザイール共和国の裁判権からの免除を享有する」とされた。
在ジブチ自衛隊基地

上記の日米間ではアメリカ合衆国側の有利の条約になっているが、日本とジブチにおいては日本側が有利になる条約を結んでいる(日本ジブチ地位協定)。ジブチ共和国における自衛隊の海外基地での活動の法令は全て日本の刑法によって裁かれる他、公務中、公務外問わず、自衛隊の事件、事故の裁判において日本側に裁判権がある。

自衛隊の資産の差し押さえや情報開示もジブチ共和国政府の介入は日本国政府との条約で禁止されている[15][16]。ジブチ自衛隊基地内も日本の刑法が適用され、ジブチ共和国政府はジブチ自衛隊基地内に立ち入る際には日本国政府(内閣総理大臣官房長官等)の許可が必要である。

日本国内では横田空域が度々在日米軍と共に問題視されているが、ジブチ共和国の上空の一部の制空権は航空自衛隊及び日本国政府の管轄下となっている。

また、ジブチ国民が自衛隊の基地内で事件を起こした場合は、ジブチの刑法ではなく、日本の刑法で裁かれ、日本国政府と自衛隊の二者で会議が行われる。その間にもジブチ共和国政府による介入は認められない。
その他の例

マルタ宮殿 - イタリアローマにあるこの建物だが、イタリア政府はマルタ騎士団に対する治外法権を認めている。マルタ騎士団はではなく領土を持たない信徒修道会であるため、マルタ騎士団が合法的に支配できる唯一の土地と言える。

国際連合本部ビル - アメリカニューヨーク市マンハッタンにあるビル。アメリカはこの建物の国際連合の所有を認めており、法律で不可侵と定められている。

国際度量衡局 - フランスセーヴルにある建物。フランスは国際度量衡委員会の所有を認めている。国際連合本部ビルと国際機関が所有する特徴としては同じだが、この建物は法律で不可侵と定められていないため、問題として挙げられている。

グァンタナモ米軍基地

バイコヌール

脚注
注釈^ 外交慣例によるそれは除く。
^ この性格からしばしば在日米軍の「治外法権的立場」などと婉曲表現されることが多い。
^ 米軍は2014年から、「国際社会における合衆国軍隊に対する脅威」を理由に、2020年時点で日本国に報告を行っていない[11]
^ 参照:沖縄米兵少女暴行事件
^ 法令上は速度超過や駐車違反など道路交通法違反、不正改造などの道路運送車両法違反なども本来は日本の法令と司直により裁断されるものであり、これらが在日米軍地位協定により捜査・司法権限の競合をおこしているため、日本が裁判権を放棄した事案についても精査が必要である。もっとも本来日本政府が徴収すべき反則金罰金(及びこれらを滞納した場合の差押えの権利)、発すべき整備命令などが放棄されており、在日米軍の法的ステイタスに問題がないわけではない。
^ 参照:在日米軍裁判権放棄密約事件
^ この項目は、三宅孝之 (2019), p. 114から起筆した。
^ この項目は、岩本誠吾 (2010), p. 122-124から起筆した。
^ 兵員提供国のこと

出典^ .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}広部和也. "治外法権". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2024年4月7日閲覧。
^ "治外法権". ブリタニカ国際大百科事典. コトバンクより2024年4月7日閲覧。
^ "治外法権". 旺文社世界史事典 三訂版. コトバンクより2024年4月7日閲覧。
^ "領事裁判". 百科事典マイペディア. コトバンクより2024年4月7日閲覧。
^ 木村時夫 1981.
^ 木村時夫 1981, p. 2.


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