本作の構想は1991年から存在しており、スコセッシの「念願の企画」といわれていた[8]。企画は2009年から具体化し、ダニエル・デイ=ルイス、ベニチオ・デル・トロ、ガエル・ガルシア・ベルナルが出演の交渉に上った[9]。しかし企画は一時棚上げされ、その間にスコセッシは『シャッター アイランド』と『ヒューゴの不思議な発明』を製作した。2010年、『ウルフマン』の宣伝の際にデル・トロは「我々がやろうとしていた映画『沈黙』は先延ばしになっているが、私はとても楽しみにしている」と述べていた[10]。
2011年12月、スコセッシは『沈黙』が次回作になると述べた。デイ=ルイス、デル・トロ、ベルナルが出演するか否かについては明言しなかった[11]。しかし2012年3月、スコセッシはかつて棚上げになっていた『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の製作に着手した[12]。2012年5月にはチェッキ・ゴーリ・ピクチャーズのCEOが『沈黙』が同社の製作予定作品の筆頭だと語った[13]。
2012年12月、チェッキ・ゴーリ・ピクチャーズは本作に関わる同社との契約を反故にしたとしてスコセッシを提訴した。同社によれば、スコセッシは1990年に『クンドゥン』の製作完了後『沈黙』を製作することに同意したが、『ディパーテッド』、『シャッター アイランド』、『ヒューゴの不思議な発明』を監督するために、2004年と2011年に本作の製作を延期する代わりに「相当量の補償とその他の有益な援助」を支払う契約を交わしたとされた。これらの額は「映画1本あたり100万?150万ドル、プラス最大20%のスコセッシのバックエンド補償」といわれた。訴状の主な争点は、スコセッシが『ヒューゴの不思議な発明』に関する違約金の支払いを怠り、また『沈黙』に先立って『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を製作したのは契約違反だという主張だった。スコセッシの代理人は「これらの主張は、昨年双方の合意で明示された条件と完全に矛盾し、食い違い、相反するものだ」と述べた。スコセッシはまた訴訟を「マスコミを使った売名行為」「無益な行動」と一蹴した[14]。
2013年4月、『沈黙』の撮影が2014年7月から台湾で開始されると発表された[8]。2014年1月までにスコセッシは台湾でロケハンを始めており、撮影は同年夏開始予定とされていた[15]。プロデューサーのアーウィン・ウィンクラーによると、製作が長く難航したのは17世紀の日本という舞台を再現するのが非常に高くつくためで、台湾は予算が抑えられるために撮影地に選ばれたという[16]。 2013年5月、イエズス会司祭セバスチャン・ロドリゴ役にアンドリュー・ガーフィールドが、通詞役に渡辺謙が配役された[17]。2014年1月には司祭フランシス・ガルペにアダム・ドライバーが、教父クリストヴァン・フェレイラ役にリーアム・ニーソンが配役された[18][19]。2015年1月、スケジュールの都合から渡辺が降板し、浅野忠信が代役に起用された[20]。 主要撮影は2015年1月30日から5月15日まで台湾で行われた[21][22]。 2015年1月28日、本作の野外セットにおいて、危険性が指摘されていた構造物の補強中に天井が落下し、作業員1人が死亡、2人が怪我を負った[23]。 2014年7月にパラマウント映画が米配給権を獲得した。同社は当時2015年末の公開を見込んでいた[24]。2016年8月にスコセッシが語ったところによると、本作は同年10月には完成する見込みで、暫定的に11月か12月の公開が予定されているものの、具体的な公開時期は配給のパラマウント次第だとされていた[25]。2016年9月、2016年12月23日に公開されることが発表された[26]。 日本については当初2013年5月のカンヌ国際映画祭でギャガが配給権を獲得したと報じられていた[27]。しかしその後2016年2月のヨーロピアン・フィルム・マーケットでKADOKAWAが権利を獲得したと報じられ[28]、2016年9月には同社の配給によって2017年内に公開されること[29]、11月には公開日が2017年1月21日に決まったことがそれぞれ発表された[30]。 タイム誌の企画「Top 10 Everything of 2016」で、「2016年に公開された映画のトップ10」の第5位に選ばれる[31]。 年映画賞賞対象結果出典
配役
撮影
公開
評価
受賞
2016ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞イッセー尾形次点[32]
2017第15回視覚効果協会賞
第31回全米撮影監督協会賞