欧州や米国では水道事業を民間に開放しているところもあり、必ずしも自治体が提供する公営事業とは限らない。イギリスやフランス、オランダ等のように水道事業を民間会社が行っているのが一般的な国もあり、これらの国の水道運営会社は世界各国にも進出している。水道世界3大企業はフランスのスエズとヴェオリア・ウォーター、イギリスのテムズ・ウォーターである。このほかにもベクテルのような建設関連企業が海外での水資源開発や水道事業の受託を行っている。
歴史的には、リヨン市の水道事業が民間委託化されたのが1853年であるが、欧米で民営化が広く行われるようになったのは20世紀に入ってからであった。2008年現在、全世界の水道供給人口50億人のうち、民営化された水道企業が水を供給しているのは4億人である[12][13]。パリでは1985年から2009年まで約25年間に民間が運営をしていた間に料金が2倍になったが、水道の漏水率が22%から4%と改善した。フランスでは他の自治体も民営化したが、9割は民間管理を更新した[14]。
世界市場での水道企業シェア国企業名給水人口
フランススエズ1億2500万人
フランスヴェオリア1億0800万人
イギリステムズ・ウォーター7000万人
フランスSAUR3700万人
イギリスユナイテッド・ユーティリティーズ
日本の水道法では「水道事業」を一般の需要に応じて水道により水を供給する事業のうち、給水人口が100人を超えるものとしている[5]。この水道事業には上水道事業と簡易水道事業が含まれる[5]。
上水道事業 - 給水人口が5,001人以上の水道により、水を供給する水道事業[5]。
簡易水道事業 - 水道事業のうち給水人口が5,000人以下であるもの[5](水道法第3条第3号)
なお、上水道事業は法律用語として水道法に定義されているわけではなく、簡易水道事業(水道法第3条第3号で定義)以外の水道事業を指すために慣用的に用いられている概念である[5]。
このほか水道法には、専用水道、簡易専用水道、水道用水供給事業(水道により水道事業者に対してその用水を供給する事業)も定義されているが、これらは水道事業とは別の区分である[5]。 日本中に張り巡らされている水道管の全長は約66万キロメートル、地球16周分の長さになるが、水道管の耐用年数は約40年で60年以上たっているため、約2000か所毎日破裂している。水道管をすべて更新するには130年以上かかると計算されている[14]。 日本でも水道法が2001年に改正され、水道事業の包括的な民間委託が可能となった[15]。 2025年には世界全体で100兆円の市場となると言われている水道事業には、商社やメーカーだけでなく水道事業のノウハウを持つ日本の自治体の水道局も参入へ向けた行動を起こしている[16]。 日本国内でも水道の民営化や包括的な委託の受け皿となるべく企業が設立されるとともに、一部の地方都市で実際に包括的な委託を受託した例もある[17][18]。しかし、日本国内では大規模な水道事業を民営化したり、運営全てを民間企業に委託(包括的委託)した例は無い。なお、浄水場の運転操作や保守点検等の一部分や、料金徴収など周辺事業を民間委託している例は多数あるが、これらは水道事業に関わる経営判断を含め多くの部分を民間に任せている欧米の方式とは異なっている。日本国内では経済的合理性や海外進出を考える商社やメーカー等の企業育成を考えて、水道企業を民営化したほうがよいとする意見や、水資源の公共性や水道の安定供給・安全性を考えて公営事業のままでよいとする意見など種々ある。しかし、国連テクニカルアドバイザー曰く、どのみち現行の水道料金は老朽化した水道管を維持するのに足りず、「水と安全はタダ」という日本的発想を料金を上げて赤字の現在を変えないといけないと警鐘を鳴らしている[14]。 アメリカ合衆国の水道事業体は、環境保護庁(EPA)により、市町村水道、専用水道、季節専用水道の3つに分類されている[19]。
水道施設の管理
水道事業の運営
アメリカの上水道
市町村水道(Community Water System(CWSs) - 1年を通じて定住人口に対し給水している水道事業体[19]
専用水道(Non-Transient Non-Community Water Systems(NTNCWSs) - 25人以上の定住人口に対して6か月以上給水している自家用水道(学校・工場等)の水道事業体[19]
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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