水蒸気
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一部の水(液体)が蒸発を始める温度を、その圧力における飽和温度とよび[注釈 3]、逆にその圧力を、その温度における飽和圧力(飽和蒸気圧)とよぶ。標準大気圧の水の飽和温度は 100 ℃ であり、100 ℃ の水の飽和圧力は 760 mmHg = 1013.25 hPa である。飽和温度は圧力が上昇すると共に上昇する。

飽和温度の水(液体)を飽和水(水以外では飽和液)、蒸気を飽和蒸気とよび、飽和温度以下の温度の水(液体)をサブクール水(水以外ではサブクール液)、飽和温度以上の温度の蒸気(気体)を過熱蒸気(水以外でも同じ)とよぶ。サブクール水または過熱蒸気の熱力学的状態は、二つの状態量(通常は圧力と温度)で指定することができる。水の T-s 線図

蒸気泡を含んだ水や水滴を含んだ蒸気は一般に湿り蒸気とよばれる。水と蒸気が熱力学的平衡(圧力と温度があい等しい)であれば、飽和水(液)と飽和蒸気の混合物である。湿り蒸気であれば圧力は飽和圧力であり、温度は飽和温度である。湿り蒸気の熱力学的状態は圧力または温度に加えて、次式の乾き度(英語版) χ を用いて指定することができる。 χ = m v a p o u r m t o t a l {\displaystyle \chi ={\frac {m_{\mathrm {vapour} }}{m_{\mathrm {total} }}}} m v a p o u r {\displaystyle m_{\mathrm {vapour} }} :気体の質量、 m t o t a l {\displaystyle m_{\mathrm {total} }} :全体の質量水の h-s 線図

圧力が高くなると、気体の飽和蒸気の比体積(単位質量あたりの体積)は小さくなり、一方飽和水の比体積は飽和温度が高くなるため少しずつ大きくなり、ある圧力で飽和水と飽和蒸気の状態は一点に合体する。この状態は臨界点とよばれ、臨界点以上の圧力では液体と気体の区別をつけることはできなくなる(⇒超臨界流体)。水の臨界点は、圧力 220.64バール (22.064 MPa; 217.75 atm) 、温度 373.95 °C (647.10 K) 、比体積 0.0031700 m3/kg である。

湿り蒸気を密閉容器の中でゆっくり冷却すると、蒸気の一部が凝縮すると共に温度と圧力が低下する。湿り蒸気を維持したままある温度に達すると、湿り蒸気の一部に氷が生じ、温度も圧力も変化しなくなる。この状態を三重点とよび、水の場合は、温度 0.01 °C (273.16 K)、圧力 0.006112バール (0.0006112 MPa; 0.006032 atm) である。水の三重点は国際単位系の温度定義の基準点に用いられている。

三重点の水をさらに冷却すると、水が氷に変化(凝固)し、水がなくなると温度と圧力が再び低下し始め、蒸気が氷に変化(固体と気体間の状態変化を総じて昇華という)する。液体の水は、三重点と臨界点の間の限られた圧力範囲で存在することになる。これらの事がらは、水に限らず一般の物質に共通した性質である。
水蒸気の利用

食品分野では古くから蒸し料理、澱粉性食品の加工や焼成に用いられてきた[4]。業務用厨房機器や食品加工装置(スチームコンベクションオーブンなど)や調理家電(炊飯器など)にも利用されている[4]圧力釜オートクレーブもほぼこれを利用している。

また、水蒸気を利用した蒸気機関は、主に産業革命以降に熱エネルギーから運動エネルギーへ変換する動力源として重要な役割を担った[4]汽力発電火力発電原子力発電)で蒸気タービンの駆動に利用されている。

このほか、水蒸気を熱媒とした蒸気暖房蒸し風呂、高温を利用した清掃用具(スチームクリーナー)がある。
注釈^ 水全体の温度が均一になる程度にゆっくりと加熱するとする。強く加熱すると加熱面近くの水の温度が上昇し、場合によってはそこから蒸気泡が生じる。液中から蒸気泡が生じる蒸発を沸騰とよぶ。
^ 気体の占める部分は空気等を除去し、液体と同じ圧力の水蒸気だけとする。
^ 標準大気圧 760 mmHg での飽和温度を特に沸点とよび区別する。水の沸点は 100 ℃(正確には 99.9743 ℃)である。沸点という用語は、圧力を標準大気圧に限定せずに、広く飽和温度の意味で用いられる場合もある。

参考文献[脚注の使い方]^ 渡辺勇三「面白科学実験を数量的に議論する」日本科学教育学会年会論文集34巻 一般社団法人 日本科学教育学会、2023年11月30日閲覧
^ 山下 晃「手作り実験あれこれ―教育の現場からPart3 (1)」可視化情報学会誌18巻70号192-197頁 社団法人 可視化情報学会、2023年11月30日閲覧
^ a b c 石田博幸、木村久美子「ブラジルとアジア諸国の科学用語比較」 、2023年11月30日閲覧
^ a b c伊與田 浩志「熱と空気と過熱水蒸気の話?乾燥と食品加工の研究から?」 日本熱物性学会、2023年11月30日閲覧

関連項目ウィキメディア・コモンズには、水蒸気に関連するカテゴリがあります。

蒸気

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