水素電池
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日本国内では経産省補助事業として中国電力中部電力が共同実施している[6]
固体酸化物形燃料電池 (SOFC)詳細は「固体酸化物形燃料電池」を参照

固体酸化物形燃料電池(SOFC, Solid Oxide Fuel Cell)は、固体電解質形燃料電池とも呼ばれ、動作温度は700-1,000℃を必要とするので高耐熱性の材料が必要となる。また、起動・停止時間も長い。電解質として酸化物イオンの透過性が高い安定化ジルコニアランタンガリウムペロブスカイト酸化物などのイオン伝導性セラミックスを用いており、空気極で生成した酸化物イオン(O2-)が電解質を透過し、燃料極で水素あるいは一酸化炭素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。そのため、水素だけではなく天然ガス石炭ガスなども、脱硫処理は必要であるが、簡単な水蒸気改質処理(一酸化炭素の除去が不要で、燃料中に若干の未改質ガスを含む改質)により燃料として用いることが可能である。活性化電圧降下が少ないので発電効率は高く、すでに56.1%LHVを達成している例もある。家庭用・業務用の1kW-10kW級としても開発されている[注 3]。原理的には発電部分における改質(ニッケルを含む燃料極における直接内部改質)が可能であるが、吸熱反応による発電部分の極端な温度変化を防ぐために、プレリフォーマー(発電反応による熱や反応後の燃料を燃焼した熱を利用した間接内部改質)を採用するのが一般的である。固体高分子形燃料電池等の他の燃料電池で使用される白金パラジウム等の貴金属系の触媒が不要で燃料極としては、ニッケルと電解質セラミックスによるサーメット、空気極としては導電性セラミックスを用いる。大型SOFCは、燃焼排ガスをガスタービン発電や蒸気発電に利用すれば、極めて高い総合発電効率を得ることが出来ると予測されるため、火力発電所の代替などの用途が期待されている。[注 4][注 5]

日本ガイシ株式会社は2009年6月11日に独自構造のSOFCを開発し、世界最高レベルの63%の発電効率(LHV)と90%の高い燃料利用率を達成したと発表した。[7]

JX日鉱日石エネルギーは2011年10月、市販機としては世界初となるSOFC型「エネファーム」を発売した[8]
アルカリ電解質形燃料電池 (AFC)詳細は「アルカリ電解質形燃料電池」を参照

アルカリ電解質形燃料電池(AFC, Alkaline Fuel Cell)は、水酸化物イオンをイオン伝導体とし、アルカリ電解液を電極間のセパレータに含侵させてセルを構成している。PEFCと同様、高分子膜を用いるタイプも報告されている。最も構造が簡単であり、アルカリ雰囲気での使用であることから、ニッケル酸化物等の安価な電極触媒を利用することができること、常温にて液体電解質を用いることからセル構成も単純にできるため、信頼性が高く、宇宙用途などに実用化されている燃料電池である。一方、改質した炭化水素系燃料から水素を取り出す場合、炭化水素が混入しているとアルカリ性電解液が炭酸塩を生じて劣化する。同様に空気を酸化剤として用いると電解液が二酸化炭素を吸収して劣化するため、純度の高い酸素を酸化剤として用いる必要がある。水素の純度を高めるためには、パラジウムの膜を透過させることにより純度を高める。電解質が水溶液であるため、作動温度域は電解液が凍結・蒸発しない温度に制限される。また、温度によりイオンの移動度(拡散係数)が変わり、発電力に影響するため、温度条件が厳しい。ニッケル系触媒は配位性のある一酸化炭素、炭化水素、酸素および水蒸気等により活性が下がるので水素燃料の純度は重要である。これらを不純物として含む改質水素の使用は望ましくない。

21世紀現在の燃料電池の研究開発上ではほとんど目を向けられることはないが、年少向けの教材から、アポロ計画スペースシャトルまで広く「実用化」されている。アポロ13号における事故はこの燃料電池に供給する液体酸素供給系統の不具合に起因したものであり、燃料電池そのものの問題ではない。

ダイハツ工業産業技術総合研究所と共同で水加ヒドラジン(N2H4・H2O)を燃料として0.50W/cm2の出力密度を達成したと発表している[9]。この場合、燃料電池への炭化水素の混入はなく、排出物は水と窒素のみとなる。
直接形燃料電池 (DFC)

直接形燃料電池(DFC, Direct Fuel Cell)は、改質器を介さずに燃料を直接セルスタックに供給する形式で、メタノールエタノールジメチルエーテルヒドラジンホルムアルデヒドギ酸アンモニア等を使用するものが試みられてきた[注 6]。つまり、DFCは燃料電池それ自身の方式を指す言葉ではない。固体酸化物形燃料電池は全てDFCに属する。燃料として用いる物質に炭素が含まれている場合、反応(発電)によって二酸化炭素が生成して排出される。そのため、アルカリ性水溶液の電解質は炭酸塩を生成するので使用できない。ヒドラジンのような還元性の燃料を使用する場合には貴金属の触媒が不要になるため、貴金属フリー液体燃料燃料電池として注目される。燃料供給ポンプや放熱ファンを使うか否かで、パッシブ型とアクティブ型に区分される。燃料極の白金に反応中間体である一酸化炭素が強吸着(被毒)してしまい反応速度が遅く、水溶性の高い燃料を用いた場合では燃料のクロスオーバーが起こるため、電力・発電効率とも低いが小型軽量のものが作れる。直接形メタノール燃料電池(DMFC)では、数十mW-10W程度の小規模小電力発電に適している。これらは小型携帯電子機器の電源としての用途が考えられている。一方で設置型には1kw級の発電能力を有する物もある[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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