水筒
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保温と保冷を比較した場合、外気との温度差の大きい高温の液体を保温することは、保冷よりより敷居が高くなる。したがって、外界の気温との差が大きい状態で液体を長時間高温状態に保つことが要求される登山向け製品の場合、簡易なワンタッチ式の中栓を採用せずに、利便性を犠牲にしてもあえて断熱性の高い古典的なスクリュータイプの栓を採用している場合がある[2]
歴史

人類は、昔は身の回りにある素材、植物性素材や動物性素材で水筒を作った。世界各地でそれぞれ、液体を携行するための数々の工夫が行われていた。

ペルシアでは、おそらく5千年ほど前から、ヤギ子牛などの革で作った袋が使われた。中東のさまざまな言語でそれぞれの呼び方があるが、たとえばペルシア語では「 ??? カーク(カック)」と呼ばれる(ペルシア語版の記事 fa:??? も参照可能)。(なお古代アッシリアの壁画には、そのような袋を、水袋としてだけでなく、中に空気をためておいて泳ぐ際の浮袋としても使っている図が残されている。) 中東では、こうした水袋の利用が広まった。普通の革(表皮)で作った袋では毛穴や縫い目から水がしみ出るので、耐水性を持たせやすく、もともと袋の形状をした胃袋や膀胱を利用して袋を作ることは多く、さらにそうした素材で「内袋」を作っておいて、その外側に毛皮の袋を縫って「外袋」を作り、二重構造の丈夫な水筒を製作することもあった。なおこの「水袋」で携行した液体は水に限らず、酒類や油類など、水以外の液体もこの袋で携行した。の胃袋で作った水筒に水ではなくを入れて運んだところ、中の乳が凝固してチーズが偶然生まれたという説はよく知られている。

イスラエルの遺跡で出土した、紀元前1世紀-紀元前2世紀ころの革製の水筒

スペインでbotaと呼ばれる、伝統的な革製の水筒。主にワインを入れて持ち歩き、たっぷり飲む。「直飲み」はしない。先端がとがっていて、液体の出口の穴が小さく作ってあり、口の数センチほど上に掲げて、袋に手で圧力をかけて、ワインの細い流れを口にめがけて「飛ばす」。こういう使い方をするので、ノズル部分がいつも清潔に保たれる。

たとえば、植物性の素材で作った水筒としては、アジアでは竹筒の水筒(の適度な長さに切り節(ふし)を利用して水密容器として使い、小さな穴をあけ、小さなをつけたもの)やヒョウタン(瓢箪)の水筒(ひょうたんの上端を切り、水にひたして何日も放置し中身を腐らせてから、中身を棒状のもので取り出して容器にしたもの)に木製のをつけたもの)があった。(アフリカ原産とされるヒョウタン類が栽培植物として世界各地に広まったのは、食用としてよりもヒョウタンの耐水容器としての有用性が高かったからである。)

木製の水筒(小樽類)- 木材の接合部を蜜蝋で密閉したり、漆や柿渋などの塗装によって水漏れを防いだ。

紙製の漆塗り - を塗布することで耐水性を持たせた漆器製の水筒。[要出典]

中国などでは陶磁器の水筒というものもあった。

モンゴルの陶器製の水筒。

中国製の瓢箪の水筒。酒を入れて持ち歩いた。「おちょこ」とセット。18世紀-19世紀のもの。



軍用水筒

各国の軍隊で様々なスタイルの水筒が採用されてきた歴史がある。

近・現代の軍用水筒は金属製が一般的である。金属製水筒は頑丈であることに加え、緊急時には直接火にかけてお湯を沸かすことも可能で「サバイバル」装備としても適しており、中の水や茶を煮沸消毒もできるということになる。ブリキ製、後にはアルミニウム製の水筒が主流となり、キャンバスのカバーで覆われた金属製の水筒を肩や腰から下げるスタイルは、ごく一般的な兵士の装備であった。液体を移して加熱できるキャンティーンカップ(英語版)が外装されているタイプもある。中にはお湯を沸かしやすいよう、水平に置いた時にやかんの形状になるように工夫された水筒や、専用カップと固形燃料用の燃焼台などがセットになった水筒などもある。

近年では[いつ?]軍用水筒も徐々にプラスチック製品へと移行しつつあるが、長年の実績と、火にかけられるというメリットを持つ金属製水筒もいまだ健在である。

1882年から1885年ころのイギリス軍の水筒

1898年ころのニュージーランドのイギリス軍の標準的な水筒

第一次世界大戦中のイギリス軍の水筒

第二次世界大戦中のイギリス軍の水筒


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