水泳
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熱中症の危険が低いので「暑い日に好適な運動」としても選ばれるが、脱水症にならないように水泳においてもあらかじめ水分補給はしっかりしておくことが望ましい[4]

競技としての水泳を競泳という。初期[いつ?]には、川・池・湖・海などの水面をロープなどで区切って簡易なコースをつくり行われることが一般的であったが、次第に人工的なプールでの競技が普及した。初めはプールには屋根がなかったが、屋外の塵や枯葉などによる水質悪化を防ぐため、屋内プールが普及した。さらに、水温も調節されるようになった。現在、水泳の競技大会はプールで行われている。一方、プールでない水面つまり海や湖など自然の水面(オープンウォーター)で長距離を泳ぐ競技が「オープンウォータースイミング」やトライアスロンの「スイム」である。

水泳は人気のあるスポーツであり、プロ選手だけでなく一般市民もレクリエーションとして、また健康を目的として水泳を楽しんでいる。自ら行う運動としての水泳は、特に設備の整った先進諸国において人気が高く[注釈 1]ウォーキングエアロビクスに次ぐ競技人口を持っている[5]。日本でも水泳をする人は多く、2012年の調査では日本で1年以内に水泳を行った人数は1200万人を数え、ウォーキングとボウリングに次いで実施人口が多かった[6]
歴史泳ぐシカ(米国カリフォルニア州シャスタ湖

全ての動物は泳ぐ動物から進化したので、多くの動物が生まれつき泳げる。いわゆる恐竜の子孫だとされ、飛翔するようになった鳥類ですら泳げる。地表の70%が海であり、陸にも川・湖・池が多くあるため動物は地表を移動すればしばしば泳ぐことにもなる。なお樹上の進化の歴史が長くなった霊長類は他の動物よりは泳ぎが苦手な傾向がある。

人類は地表を移動するために川や湖を泳いだだけでなく、さまざまな目的で泳いできた。泳いでいる人を描いた約9000年前の壁画がある。古代ギリシア時代には水泳が盛んであったことも当時の絵画や彫刻からわかる。古代ギリシア・古代ローマ時代の身体訓練では水泳が重要で、「文化人の条件」としても、文字が読めることと並んで水泳ができることが必要とされていた。アッシリア王国の旧地から発掘されたレリーフには、泳いで川を渡っている兵士が描かれている。記録としては、古代エジプトのパピルス文書(紀元前2000年)、アッシリアのニムルド出土の兵士の図(紀元前9世紀)、古代中国荘子列子淮南子などがある[7]中世までの泳ぎは動物の模倣で、犬掻き平泳ぎに似ていた。19世紀に入り、スポーツの近代化とブルジョワジーが「賭けレース」をするようになったことを背景として泳ぎにスピードが求められるようになった。「速く泳ぐための泳ぎ」がつくられてゆき、もっとも原始的な泳ぎの形であるとともに平泳ぎの原型となる「両手で同時に水を掻き、両足で同時に水を後方に押しやる泳ぎ」から「両手で同時に水を掻き、両足を左右に開いたのち勢いよく水を挟んで前進力を得るウェッジキック」が考案され、現在の平泳ぎが完成した[7]。19世紀には西欧において水泳の一般化と競技化が進み[8]、1837年にはイギリスにおいて初の水泳競技大会が開催されている[9]。1875年にはマシュー・ウェッブが世界初のドーバー海峡横断泳を成功させ、水泳人気はさらに高まった[10]。20世紀に入ると女性の水泳参加も徐々に進んでいき、1912年のストックホルムオリンピックからは水泳女子種目が開始された[11]

アメリカ合衆国などではコーチと母親が一緒になって乳幼児をプールに浮かべて泳がせる教室もあり、吸収の速い乳幼児に水に触れさせることで簡単に泳ぎを習得させている。その時期を過ぎると、逆に人は訓練無しには泳げなくなってしまう。一方で、一度習得すると長い間泳いでいなくても忘れることはなく、最も忘れ難い運動とも言われている。特に泳ぎが下手な人間のことを俗に「カナヅチ」という。
教育Pont d'Ienaでの水泳教室(Garsonnet画、1852年

ハーバード大学医学部によると、通常、子どもは4歳まで水泳能力を獲得するための認知能力を持たないので、注意が必要であるとしている[12]
欧州での水泳教育

ドイツオーストリアでは、子どもの約90%に「初歩泳者」(Fruhschwimmer)資格を取らせることを目的とした小学校のカリキュラムがある。教育大臣によって設定された目標は95%であり、実際のパーセンテージは一部の学校で75%と低い。この資格を定めたのは、オーストリアでは民間組織と政府機関の共同委員会であるオーストリア水救助作業委員会(Arbeitsgemeinschaft Osterreichisches Wasserrettungswesen)である。次のレベル1の 「自由泳者」(Freischwimmer)は、15分間の自由形、1mの高さからの飛び込み、および水泳のルール10項の習得を必要とする。レベル3「日常泳者」(Allroundswimmer)は、クロールと背泳ぎ各100メートルのメドレー、100メートル自由形2分30秒未満、水平潜水10メートル、2.5キログラムの重りをつけての垂直潜水2メートル(厚い物体を拾う)、背泳ぎ50メートル、同程度の体重の人との20メートルの救助泳(英語版)、水泳のルール10項の習得を必要とする。ドイツでは「水泳記章」(Schwimmabzeichen)は初歩、銅、銀、金の4つのレベルに分かれる。「初歩泳者」の水泳テストでは、飛込、25メートル自由形、水面下のものの拾得を行う。銀バッジでは、400メートル自由形12分以内、2メートル以上の垂直潜水(物体を拾う)、飛込、10メートルの水平潜水が必要である。ライフガード証明書は、組織ごとに別々に制定されている。初歩レベルは、世界最大の水難救命機関のドイツ救命協会(ドイツ語版)DLRGでは下級救助者(Junior-Retter)、ドイツ赤十字の水難救助分社である水守衛社では下級水救助者(Juniorwasserretter)に相当する。

スイスでは 「水泳試験」(Schwimmtests)は技能横断的な構成になっていない。各能力は単独でテストされ、複数のテスト証明書がグループを成す。基本レベル・グループなら「カニ」(Krebs)、「カワウソ」(Seepferd)、「カエル」(Frosch)、「ペンギン」(Pinguin)、「鳥類」(Tintenfisch)、「ワニ」(Krokodil)、「北極熊」(Eisbar)の7種の試験がある。

スウェーデンデンマークノルウェーフィンランドでは、5年生(11歳)で、すべての子供が泳ぐ方法と水の近くで緊急事態に対処する方法を学ぶべきだと定めている。オランダベルギーでは、水泳の授業を政府が支援している。フランスでは、小学校2-3年生・4-6歳の体育で水泳が行われる。英国には、11歳までに泳げない児童を対象に、集中的な毎日のレッスンを受けるよう求める「トップアップ制度」がある。スコットランドでは、8-9歳の生徒が水泳の授業を受ける。一般に、STA(水泳教師協会)またはASA(アマチュアスイミングアソシエーション)の2方式の制度に従い、優秀カリキュラムには泳げる距離についての定めがない。
日本での水泳教育

日本赤十字社が、安全に水と親しみ、事故を防止しつつ泳ぎの基本や身を守る方法を習得するため、また水の事故に遭った場合の救助法・手当法なども習得するための講習を行っている[13]。救助員Iと救助員IIの講習がある[13]

日本では、9年間の義務教育課程である小学校および中学校で、水泳教育が適切な水泳場を確保できない場合を除き必修化され「体育」の授業で水泳が行われている[14](なお小学校低学年では「水遊び」と呼ばれる)。1960年代から文部省が、プールや体育館などの体育設備の設置に補助金を支出したことにより、プールの設置が進んだ[15]。夏休みにプール指導が行われている学校も多い。なお2012年度以降、学習指導要領は小中学校の授業での飛び込みの指導を禁止している。学校や地域によっては、水難事故に備えた着衣水泳なども行われている。日本泳法古式泳法の伝承、海での遠泳寒中水泳などを教育訓練の一環として行っている学校もある。また、水泳授業以外でも学校主催の旅行や自然学校、林間学校で海や川などでの体験学習として楽しむ水泳なども学校管理下や自治体の主催で幅広く行われている。この他、自衛隊員消防隊員などの特定職では一定上の水泳の能力を得られる教育を行っている[16]

水難から身を守り、総合的な身体能力を養うために、幼少時から水泳を習うことは非常に効果的であり、またスポーツ少年団より手軽で保護者負担がないことから、水泳は習い事としても人気である。2015年の調査では37.9%の子供が学校以外にスイミングスクールなどで習い事として水泳を学んでいる[17]。また成人しても、数多く開設されているスイミングスクールフィットネスクラブ、公営のプールなどで日常的に水泳を行う者も青年・中高年層を問わず多い[18]


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