水上オートバイ
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最近はボートサーフィンなどのイベントでも、レスキュー艇として使用される機会が増えており、2005年8-9月にかけて岐阜県海津市の長良川で開催された世界ボート選手権においても地元ショップの協力により、水上オートバイがレスキューのために用意された。

市川市消防局でもレスキューに水上オートバイを使用している。2007年6月3日付けで宮崎市消防局に全国で初めて水上オートバイの愛好者で作る「水上バイク隊」が発足した。

2010年には水上バイク愛好者やライフセーバーなどからなる日本青バイ隊が発足した。
水上オートバイの危険性

水上オートバイは、その構造および力学的特性により、ほかの乗り物にはない危険性を内包している。そこから生まれる緊張感も水上オートバイの魅力の一つではあるが、マナーやルールを無視する愛好家が見受けられ、また、シーズン中の事故がマスコミで大きく取り上げられるため、「水上オートバイは反社会的である」というイメージが広がりつつある。この節では、その「水上オートバイの危険性」について、簡単に説明する。
乗員にとっての危険性

船舶は、自動車やオートバイと違い、レバー又はペダルの操作による制動機構はなく、の抵抗を用いて減速・停止する(近年の水上オートバイの量販モデルには、リバース機構を用いた疑似的なブレーキ機能を装備したモデルもある。)。特性として低速走行時には特に不安定であり、転倒しやすい。ある程度以上のスピードになると安定するが、そのバランスは波の衝撃などによって崩れ、操縦者がバランスを制御しきれない場合は、操縦者の落水・転倒や、船体の転覆を招く。特に雨天時には視界が悪くなるので、天候の変化に留意するとともに、やむを得ず雨天時に操船する場合は安全に低速で走行する必要がある。

また、水上オートバイは、二輪車と同様に、乗員を保護する箱構造を持たず、むき出しのまま乗船するものであるため、救命胴衣の着用は義務であるが事故の際は乗員は身ひとつで放り出され、衝撃を受け止めることとなるとともに水に触れるので体温が奪われやすくなる点に注意が必要となる。しかも、いったん水上に放り出された場合、意識がなければ溺死の危険性があり、仮に意識があっても、水上オートバイと離れたり、機関が作動しなければ、人間の力では岸まで自力で帰還することは極めて困難であることも危険性を増大させる要素である。

水上オートバイの持つ高い機動性も、危険を拡大する方向に向いうる。水上オートバイは船舶と比べて小さいため、水面では目立ちにくい。をしている最中でも、隙間を縫って走る水上オートバイの進路を漁船がふさいだり、水面で停船している漁船が直進する水上オートバイの進路をふさいだりすることによる衝突事故の多くは、漁船操船者が水上オートバイを見落したことによって発生するものである。水上オートバイは他の操縦者からすれば不必要かつ急な高速ターンをすることかあり、予想しきれない行動ゆえの衝突事故を起こしやすい。

そのほか、ウォータージェット推進装置から噴き出した水が肛門から体内に入って内臓を傷つける死傷事故も起きている[3]
周囲にとっての危険性

水上オートバイはその手軽さから、モラルの低いライダーによる暴走や無資格者による未熟な操船が後を絶たず、地元住民や観光客に深刻な騒音被害を与えることがある。また、漁場近くで水上オートバイを操縦して漁場を荒らし、漁獲量を減らしたり、海水浴場近くで操縦したりして海水浴客との衝突事故を起こし、ライダーや海水浴客が死亡や重傷を負うといった事例も報告されている。2013年8月には能登島イルカウォッチングが行われている入り江で12台の水上オートバイが約3時間にわたりイルカを追い回し、その後イルカの姿が見られなくなる事件が起きた[4]海上保安庁水上警察による取り締まりや、メーカーや愛好者団体によるマナー向上活動の取り組みはされているが[5]、最終的には操縦者の人間としてのモラルの問題であるところが大きい。

水上オートバイに関する苦情が増えていたこと等を受け、2017年には、2020年東京オリンピック等に対応するため警視庁による設置された有識者懇談会(座長藤原静雄)により、航行区域や飲酒運転、騒音等の規制や安全講習会の開催を定めるように提言が行われた[6]

兵庫県明石市では、市内の海岸で遊泳中の人が、近くを水上オートバイが猛スピードで通過したり、水上オートバイによって大量の水しぶきをかけられるなどする被害を受けているとして、被疑者不詳のまま、殺人未遂と兵庫県水難事故防止条例違反の容疑で神戸海上保安部告発を行った[7]

また、水上オートバイの出す水流および排気ガスが環境面に与える影響も指摘されており、対策が講じられている。木曽川長良川では、水流がの産卵場所である川床を破壊しないよう、航行規制が行われるなどの取り組みがされている。排気ガスについては、従来水上オートバイのほとんどが2ストローク機関という極めて環境負荷の高いエンジンを搭載していたが、近年は主要市場である米国の厳しい環境・騒音規制もあり、4ストローク機関や環境対応型の2ストローク機関への転換、低騒音タイプの吸排気システムの装備が進んでいる。2006年の時点で、日本国内でラインナップされている水上オートバイは20機種(ヤマハ7、カワサキ4、シードゥー9)あるが、販売の主流である3人乗りのランナバウトはすべて4ストローク機関を搭載しており、従来型2ストローク機関を搭載したものは4機種(すべて定員1名)と少数派になっていたが、2021年現在、日本国内で販売されている量販モデルは全て4ストローク機関を採用している。

環境対応型の2ストローク機関には、エンジン燃焼室内に燃料を直接噴射して排気ガスの低公害化を図るもの(カワサキ STX1100DI・ULTRA1100DI、ボンバルディエ SEADOO 3D-DIなど)と、電子制御式燃料噴射装置と排気管に備えた触媒装置の併用により排気ガスを浄化するもの(ヤマハ MJ-GP1300R)があった。日本国内でも、「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」(琵琶湖ルール)により、従来型2ストロークエンジンの使用が禁止(経過措置あり)されるなどの取り組みがなされており、フリースタイル競技用などの一部のモデルを除いては、従来型2ストロークエンジンの使用は順次減少していくものと思われる。
日本における水上オートバイ事故対策


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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