気象庁震度階級
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長周期地震動の影響を受ける高層建築物などでの揺れは特に計測震度との解離が大きく、2003年(平成15年)の十勝沖地震では石油タンクのスロッシングによる火災被害が発生したほか、2011年(平成23年)の東北地方太平洋沖地震東日本大震災)では震源域から離れた大都市でも高層ビルでの被害が顕著となった。こうした問題を受けて、長周期地震動に関する新たな情報発表が検討されている[18]。2013年3月23日から4段階の「長周期地震動階級」を設定し、気象庁ウェブサイト上にて「長周期地震動に関する観測情報」の試行発表を開始[19]、2019年(平成31年)3月より本運用に移行した。

震度階級と名称の変遷[20]1884年 - 1898年1898年 - 1936年1936年 - 1949年1949年 - 1996年1996年 - 現在
震度0 / 微震(感覚ナシ)震度0 / 無感震度0
微震震度1 / 微震震度I / 微震.mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  震度1
弱震震度2 / 弱震(震度弱キ方)震度II / 軽震  震度2
震度3 / 弱震震度III / 弱震  震度3
強震震度4 / 強震(震度弱キ方)震度IV / 中震  震度4
震度5 / 強震震度V / 強震  震度5弱
  震度5強
烈震震度6 / 烈震震度VI / 烈震  震度6弱
  震度6強
 震度VII / 激震  震度7

なお、ある地震においてその地点が震度0であったことを「無感」といい、最大震度0の地震を「無感地震」という。これに対し、震度1以上であったことを「有感」といい、最大震度が1以上の地震を「有感地震」という。
震度の測定
観測体制

震度と計測震度の関係表[21]震度計測震度
00.5未満のすべて
  10.5以上 1.5未満
  21.5以上 2.5未満
  32.5以上 3.5未満
  43.5以上 4.5未満
  5弱4.5以上 5.0未満
  5強5.0以上 5.5未満
  6弱5.5以上 6.0未満
  6強6.0以上 6.5未満
  76.5以上のすべて

日本における気象庁震度階級は、1997年4月から、それまでの体感や被害状況による判定に代えて、全国に配置された計測震度計(seismic intensity meter)という自動計測機器により測定され、発表されている。

震度計設置を開始した当初の1991年からは、波形を収録する機能がない「90型震度計」が採用されていた。1994年からは、改良されてデジタル波形をメモリーカードに収録する機能が付いた「93型震度計」が展開された。その後、観測可能な加速度上限値を2倍以上としサンプリングレートも2倍とするなどの改良を加えた「95型震度計」に切り替えられた。現在気象庁の震度計はすべて「95型震度計」である[22][23]
95型震度計の諸元[24]
観測成分 NS(南北動)、EW(東西動)、UD(上下動)の3成分(震度は3成分合成)測定範囲 2048gal - -2048galサンプリング 100Hzレート、24ビット収録基準 計測震度0.5以上(1分単位で収集)収録媒体 ICメモリーカード

気象庁の「震度情報」に利用されている計測震度計の設置台数は、2009年末時点で約4,200台、2011年8月時点で4,313台となっており、計測震度に切り替えられた当初の約600台から大きく増加した。これは、日本の震度観測網が世界でも類を見ないほど密になっていることを示している。うち、気象庁が管理しているものが約600台、防災科学技術研究所が管理しているものが約800台、地方公共団体(都道府県市町村・その他の行政機関)が設置したものが約2,900台となっている[25][1]

おおむね平成の大合併前の市区町村ごとに1つの地震計を設置し、島嶼部や過疎地ではさらに多めに設置することを目標に整備され、ほぼ網羅されている。

このほかにも、地方公共団体などが設置している震度計で気象庁の情報に利用されていないものや、公的機関・公共交通機関などがダム河川鉄道などの安全確保を目的に独自に設置しているものも多数ある。
震度計の設置環境

震度の信頼性を高めるため、震度計の設置環境には一定のルールがある。設置環境が悪い震度計のデータは気象庁の震度情報に利用されないことになっている。

まず、震度計を設置するのは強固な震度計台の上とされている。震度計は、盛り土や崖などでは揺れが増幅される可能性があることから、地形が平坦で周囲に段差が無く地盤が安定した屋外に設置し、台の下3分の2以上が地面に埋没するようにしなければならない。また、周囲の構造物などにも規定がある。倒れて震度計に影響を与えかねない木や柵などからは十分離れていることが求められる。屋内の場合はなるべく1階の柱に近いところに設置することとし、地下1階 - 2階までは許されている。免震や制震の工事が施された建物には設置しない。

震度計は、震度計台または屋内の場合は床にしっかりと固定するようにしなければならない。震度計の機種ごとに定められた設置方法を守り、可能ならアンカーボルトなどで固定することが推奨されている。

気象庁は、震度情報へ利用する震度計の選別のため、設置環境をA - Eの5段階で評価している。A - Cは利用可、Dは原則として利用しないが精査した上で利用するもの、Eは利用不可である。

しかし、震度計の設置環境が悪いまま震度情報が利用され、後にその精度が疑問視され訂正された例がある。2008年7月24日の岩手県沿岸北部地震では、岩手県洋野町大野でこの地震の最大震度となる震度6強(後に6弱へ変更)が観測されたが、周辺市町村より際立って大きかったことから調査が行われ、同年10月29日には、大野の震度計は震度観測に不適切な環境として震度データから除外し、最大震度を、6強から6弱に訂正すると気象庁が発表した[26]。大野の震度計はもともと利用可と評価された震度計であったため、このような設置環境の悪化事例がほかの地震計で発生している可能性も指摘されている。
観測所の配置密度と最大震度

上記にある通り1996年に気象庁の発表地点である震度観測点が大幅に増加したことにより観測所の配置密度は飛躍的に高くなり、震源の近くで大きな震度が観測される可能性が高くなった。例えば1984年の大きな被害がありながら最大震度4とされている長野県西部地震、および1946年の巨大地震でありながら最大震度5とされている昭和南海地震のように、1995年以前では大きな地震でも震源の近くに観測点がなければ最大震度は小さくなっていた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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