気管支喘息
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特にクレソンは高いレベルでヒアルロニダーゼと脱顆粒の両方を抑制する作用がある[28][29]。妊娠初期にアブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、クレソンなど)を摂取すると幼児の喘息症状の発生率軽減に寄与する可能性が示唆されている[12]

古くから水泳によって改善するといったことも言われているが、呼吸筋を鍛えたことにより病状が良くなったと感じるため(ピークフロー値の上昇)で、炎症が治まったわけではない。場合によってはプールの塩素によってさらに悪化することもあり注意が必要である。水泳による疲労、塩素で喘息を発病した患者もいる。

直接の治療行為には該当しないが、ピークフローメーターにより日頃のピークフロー値の記録をしておくことで自覚症状のない軽い発作を発見できたり、発作がおきやすい時期、時間帯等を把握しやすくなるため、喘息の管理に有効である。ピークフローは症状の変化に先行し変化することが知られている。また重篤な患者ほど自覚症状が出現しにくいためピークフローによって客観的な評価が必要である。ピークフローは3回測定を行い、最高値を記録する。

慢性呼吸不全の患者には在宅酸素療法を行う。
管理
長期管理

喘息のガイドラインとして、国際的に最も信頼されているのは、WHOによるThe Global Initiative for Asthma (GINA) である。Evidence-levelの高い優れた最新の文献を基に、数年毎にアップデートされている。世界中の国・地域において、各々のローカルな喘息ガイドラインが存在するが、多くは、このGINAを参考に作成されている。他に、国際的に知られている喘息のガイドラインとして、米国喘息管理・治療ガイドライン (EPR3) がある。日本では、主に、日本アレルギー学会が作成する喘息予防・管理ガイドライン2021(JGL2021)および日本小児アレルギー学会が作成する小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023 (JPGL2023) が用いられる。
喘息に特徴的な症状
発作性の
呼吸困難、喘鳴、夜間や早朝に出現しやすい咳。
可逆性気流制限
自然にあるいは治療により寛解する気流制限が認められる。PEF(ピークフロー)値の日内変動が20%以上、β2刺激薬吸入によって1秒率が12%以上増加、かつ絶対量で200ml以上の増加が認められる。
気道過敏性の亢進
アセチルコリンヒスタミン、メサコリンに対する気道収縮反応の亢進が認められる。気道過敏性を認める疾患は喘息だけではなく、咳喘息、アレルギー性鼻炎慢性閉塞性肺疾患、鬱血性心不全、ウイルス性呼吸器感染後などでも認められる。

これらによって気管支喘息と診断をしたら、長期管理を開始する。なお、発作中であったら発作の治療を優先する。長期管理の方法はガイドラインによってわずかな差異があるものの基本はほとんど同じであるためGINA2006に基づいて説明する。なおICSは吸入ステロイド、LABAは長期作用型β2刺激薬、LTRAはロイコトリエン受容体拮抗薬である。

薬物療法ステップ1ステップ2ステップ3ステップ4ステップ5
第一選択なし低用量ICS低用量ICS+LABA高用量ICSプラスLABA経口ステロイド
オプションなしなし高用量ICSまたはLABAの代わりにLTRALABAの代わりにLTRAなし

GINA2006では治療目標である良好なコントロールに関して問診によって評価できるとしている。
日中に週3回以上症状が出現

喘息によって日常生活によって制限がある

夜間に喘息症状のために早朝おきることがある

症状を抑えるために気管支拡張薬を週に3回以上使用

ピークフローが自己最高値もしくは予測値の80%未満

喘息増悪発作が過去1年に1回以上ある

上記の6項目のうち3項目以上に該当したらコントロール不良であり、ひとつでも該当すればコントロール不十分、また喘息増悪発作が最近認められたらそれだけでコントロール不十分とする。3ヶ月ごとに治療効果判定を行い、コントロール良好群であれば、ステップダウンし、コントロール不良群であればステップアップする。コントロール不十分が持続する場合もステップアップを検討する。

JGL2006ではステップ1が症状によって規定されており、その症状にコントロールするようにコントローラーを決定する。ステップ2のコントローラーでステップ2の症状が認められればコントロール不良でありステップ3にステップアップする。
one airway one disease

喘息とアレルギー性鼻炎副鼻腔炎がよく合併することはよく知られており、これらは独立した危険因子であるが関連が深く「one airway one disease」[注 1]として知られ[30]、同時に治療することで治療効果が高まると考えられている。特に、アレルギー性鼻炎や花粉症の合併は多い。アレルギー性鼻炎の治療は症状に合わせて選択される。詳細は「アレルギー性鼻炎」を参照

薬剤のタイプ鼻漏鼻閉くしゃみかゆみ眼症状
経口抗ヒスタミン薬++±++++++
経口抗ロイコトリエン薬++++++
点鼻抗ヒスタミン薬+±++?
点鼻ステロイド薬+++++++++
点鼻血管収縮薬?++???
点鼻抗コリン薬++????
点鼻抗肥満細胞薬++++?

急性発作

初期治療としては酸素投与とリリーバー投与となるが、呼吸困難、喘鳴の原因が心疾患など喘息発作以外の可能性もある。

喘息発作の程度は小発作(呼吸困難はあるが横になれ動ける)、中発作(呼吸困難で横になれないが動ける)、大発作(呼吸困難で動けない)に分類される。

軽度中等度重度
呼吸困難苦しいが横になれる苦しくて横になれない苦しくて動けない
会話通常会話短い文章単語のみ
呼吸状態呼吸補助筋の使用なし呼吸補助筋の使用あり胸骨上部陥凹(陥没呼吸)
PEF値> 80%60 - 80%<60%
SpO2> 95%91 - 95%<90%

発作時の対処
初期治療
まずは初期治療として
酸素投与、および吸入β2刺激薬の投与を行う。シムビコートタービュヘイラー吸入を行う。以前はサルブタモール(サルタノールインヘラー)2吸入、20分毎3回やプロカテロール(メプチンエアー他)2吸入、20分毎3回などが行われていたが、作用時間が短いため、反復しての吸入を患者は強いられていた。ホルモテロールは即効性がある上、長時間作用するためコンプライアンスが向上する。フルティフォームもホルモテロールを含有するが、日本においては発作時吸入は認可されていない。また酸素飽和度 (SpO2) が92%以上になるようにコントロールする。定量噴霧式吸入器 (MDI) によってうまく吸入できない高齢者や重度の気流制限を認められる場合は超音波ネブライザーを用いて吸入を行う。サルブタモール吸入液(ベネトリン他)0.3ml - 0.5ml (1.5mg - 2.5mg) を生理食塩水2mlと混ぜて吸入を行うことが多い。サルブタモールと生理食塩水の量、比に関しては十分量の吸入がされていれば治療効果に差はないとされており、ネブライザーの形状にあった量とすることが重要である。ネブライザーでもMDIと同様、20分毎3回の吸入を行い、少しでも効果が見られたら2時間まで20分毎の吸入を繰り返してよいとされている。初期治療で改善が認められない場合や中等度以上の発作、あるいは窒息死のリスクファクターがある場合はさらにステロイドの点滴を追加する。メチルプレドニゾロン(ソルメドロール他)40mgを生理食塩水50mlに融解し30分の点滴投与やヒドロコルチゾン(ソルコーテフ他)200mgを生理食塩水50mlに融解し30分の点滴投与を行う。


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