こうした大きな因子のほか、その地方の地形や標高なども気候に影響を与えている。標高は高いほど気温が低くなり、同じ緯度でも低地が温帯であるのに対して高地が冷帯に属するなどということは珍しくない。例えば赤道直下に位置するキリマンジャロ山の場合、山麓低地はサバンナ気候であるが、標高が上がるにつれて熱帯雨林・雲霧林と植生が変化していき[12]、標高3000mで森林限界、4400mで植生限界となり、5500m以上では氷河の広がる氷雪気候となる[13]。また標高が上がるほどに乾燥限界は下がるため、低地が砂漠であっても高地がステップ気候に属するような場合もある。 気温、降水量、風、湿度、気圧、天気など、気候を述べるのに必要な気候の一面のことを気候要素という。気候要素は数えればきりがなく、雨の降り方、雪の質、台風の進路や勢力など多岐にわたる。 1要素ごとにまとめる場合は単純平均や移動平均等を用い、表やグラフで表現すると理解しやすい。いくつかの気候要素を同時に表現する場合、雨温図、ハイサーグラフ(クライモグラフ)がよく用いられる。 広く使用される気候区分は、数km以上の大規模な地域の気候を区分したものである。一方、一地方や一国、都市の規模で見た区分があり、中気候や小気候と呼ばれる。もっとも広く使用される気候区分はケッペンの気候区分であるが、ほかにも地表面における水収支によって気候を区分するソーンスウェイトの気候区分や、風系によって区分するフローンの気候区分、気団や前線などによって区分するアリソフの気候区分などの気候区分が存在する[14]。 ケッペンの気候区分は、植生に着目した気候区分である[15]。まず気候を樹木が生育できる気候(樹林気候)と生育できない気候(無樹林気候)に分類し、無樹林気候から乾燥度で乾燥帯、温度で寒帯を区分し、樹林気候は気温によって熱帯、温帯、冷帯(亜寒帯)の3つに分類したうえで、気温と降水量、降雨パターンによって各気候帯内でさらにいくつかの小気候に分類されている。 熱帯は最寒月の平均気温が18℃以上、年平均降水量が乾燥限界以上の地域を指し、赤道を中心として南北の回帰線(23度26分22秒)付近までの低緯度地方に分布する。熱帯気候は降雨パターンによって、乾季のない熱帯雨林気候、弱い乾季のある熱帯モンスーン気候、明確な乾季のあるサバナ気候の3つに分かれる[16]。サバナ気候のwとsは、それぞれ冬季に乾季があるもの(w)と夏季に乾季があるもの(s)の違いである。 乾燥帯は最暖月の平均気温が10℃以上であり、年平均降水量が乾燥限界以下の地域を指す。緯度20?30度付近の中緯度地帯に主に分布するが、寒流の流れる大陸西岸や、海から遠い大陸の中心部にも存在する。乾燥帯は降雨量によって、草原の広がるステップ気候と植生のほとんどない砂漠気候に分けられる[17]。砂漠気候・ステップ気候はともに平均気温によって、年平均気温が18℃以上の場合(h)と18℃未満の場合(k)に二分されている。 温帯は最寒月平均気温が氷点下3℃以上18℃未満、最暖月平均気温が10℃以上で年平均降水量が乾燥限界以上の地域を指し、緯度30?40度前後の中緯度地方に主に分布する。温帯は降雨パターンと夏季の気温によって、乾季がなく暑い夏を持つ温暖湿潤気候、乾季がなく涼しい夏を持つ西岸海洋性気候、冬が乾季となる温帯夏雨気候、夏が乾季となる地中海性気候の4つに分かれる[18]。 冷帯は最寒月平均気温が氷点下3℃未満、最暖月平均気温が10℃以上であって年平均降水量が乾燥限界以上の地域を指し、緯度40度以上の高緯度地方に主に分布する。ただし南半球にはこの地域に陸地が少ないこともあり、冷帯に属する地域はほぼ北半球のみに限られている[19]。冷帯は降雨パターンによって、乾季のない冷帯湿潤気候、冬が乾季となる冷帯冬季少雨気候、夏が乾季となる高地地中海性気候の3つに分かれる。ただし高地地中海性気候に属する地域は非常に小さな範囲に限られている。 寒帯は最暖月平均気温が10℃未満の地域を指す[20]。寒帯のみ、乾燥限界が気候帯の条件に含まれていないが、これは非常に気温の低い地域の場合水蒸気の供給が少ないため降水量が極端に低くなり、なおかつ蒸発も少ないので乾燥地とはならないためである。主に北極や南極中心に極点付近に分布する。寒帯は気温によって、短い夏の間には植物が生育可能となるツンドラ気候と、植物の生育がまったく不可能である氷雪気候の2つに分けられている。 日本においては大気候として中南部の温暖湿潤気候および北部の冷帯湿潤気候のどちらかに国土のほとんどが属しているが、それとは別に、日本国内のみをいくつかの小気候に分類することも行われている。日本国内の気候は、夏季の多雨多湿と冬季の少雨乾燥を特徴とし太平洋岸に広がる太平洋側気候、夏季にやや降雨が少なく冬季に豪雪となる日本海側気候、年間を通じて降雨量が少ない瀬戸内海式気候、年間を通じて温暖多雨である南日本気候の各小気候に分かれている。太平洋側気候のうち中央高地地方は、年間を通じて降雨量が少ない中央高地式気候と分類される場合もある[21]。また太平洋側気候は東日本型、九州型、南海型、日本海側気候はオホーツク型、東北・北海道型、北陸・山陰型の小気候にさらに分かれている。 都市部は自動車やエアコンなどからの排熱が多く、さらに密集する建造物は風を通しにくい上、アスファルト舗装や建造物によって地面が覆われているため蒸発が少なく、高温で乾燥した都市気候と呼ばれる特有の気候を作り出す。さらにこうして滞留した熱は、ヒートアイランド現象を引き起こす[22]。 微気候 洞窟の中は外よりも気温が低く、生物環境なども周囲とは大きく異なる。オアシスには植物が密集しており、乾燥のために植物が無い砂漠と比べて対照的である。同様に、乾燥した地域を流れる川の河畔には植物が生育する。コンクリートで覆われたビルの屋上は、その性質のために温度が高い。しかし、植物を植えるなどして温度を下げることが可能である。また、地下や公園などの気候も周囲と異なる微気候である。 気候はそもそも変化する中の平均的状態であり、短期間である程度の変動幅を持つのがふつうである。また、長い時間的スケールの中でも変化をしてゆく。しかし、その変化はしばしば自然や人間活動に影響を及ぼし、許容されないような被害が起こることがある。
気候要素と気候
気候区分詳細は「気候区分」を参照全世界のケッペン気候区分図
大気候
熱帯(グループA)
熱帯雨林気候(Af) - 熱帯モンスーン気候(Am) - サバナ気候(Aw、As)
乾燥帯(グループB)
砂漠気候(BWh、BWk) - ステップ気候(BSh、BSk)
温帯(グループC)
温暖湿潤気候(Cfa) - 西岸海洋性気候(Cfb、Cfc) - 温暖冬季少雨気候(Cwa、Cwb、Cwc) - 地中海性気候(Csa、Csb、Csc)
冷帯(亜寒帯)(グループD)
冷帯湿潤気候(Dfa、Dfb、Dfc、Dfd) - 冷帯冬季少雨気候(Dwa、Dwb、Dwc、Dwd) - 高地地中海性気候(Dsa、Dsb、Dsc、Dsd)
寒帯(グループE)
ツンドラ気候(ET) - 氷雪気候(EF)
高山気候(グループH)
高山気候はケッペンの気候区分には無い区分で、トレワーサが後に追加したものである。
その他の分類
亜熱帯
海洋性気候
大陸性気候
内陸性気候
中気候・小気候
日本における気候区分
微気候
気候の変動性1991年のピナトゥボ山の噴火によりこの年は全世界で気温が低下した