民法_(日本)
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これに対し、明治民法の制定が旧民法の「修正」という形式をとったことと、起草者の一人である梅謙次郎が「独逸法と少なくも同じ位の程度に於ては仏蘭西民法又は其仏蘭西民法から出でたる所の他の法典及び之に関する学説、裁判例といふものが参考になって出来たものであります」(梅謙次郎「開会の辞及ひ仏国民法編纂の沿革」仏蘭西民法百年紀念論集3頁)と述べているのを直接の根拠として[注釈 2][70]、日本民法典は、構成についてはドイツ民法典の構成に準じた構成がされているが、内容についてはむしろフランス民法典を少なくとも半分以上ベースとして構築されていると星野英一によって主張され[71]、ドイツ法学の影響を受けた判例・通説を批判的に再検討しようとする動きが学会の有力な潮流となり、内田貴により立法論としても展開されるに至った[72]後述)。

これに対しては、上記梅発言をもってフランス民法典が最も主要な母法とするのは論理の飛躍である、現に、最もフランス民法寄りと評される梅[73]自身すらも、民法典起草に当たってはフランス民法典ではなくドイツ民法草案を最も重要な範に採ったことを公式に明言し[74]、ドイツ法学から学んで日本民法解釈論に生かすべきことを強調しており[75][76]、他の起草当事者も同旨を延べている[77]ことが無視されており(仁井田益太郎の項参照)、フランス法の過度の強調ではないか[78]、そもそも独・仏・英米法学はたがいに隔絶したものではなく、いずれもローマ法に淵源を持ち、相互に影響を与えながら発展してきたものであるから、ドイツ法学を排撃してフランス法学に傾倒する根拠を欠いている等の批判がされている[79]

なお、明治民法中フランス民法は714回(59.6%)、イタリア民法は695回(58.1%)、スペイン民法は649回(54.2%)、ベルギー民法は638回(53.3%)参照されるなど[80]、確かに日本民法はその過半数においてフランス法系の民法が参照されている。しかし、ドイツ民法草案は790回参照されており(66.6%)、単純に外国法の参照数のみからいう限り、日本民法に最も影響を与えたのはドイツ民法であるとの研究がある[注釈 3][82][83]

いずれにせよ、日本民法は、特定の母法のみに基づくというよりも[84]、日本民法をして真に日本人自身の民法たらしめることが肝要であると説かれている[85]

このようにしてアジア諸国で最も早くに成立した日本民法典は、その後、植民地支配や法整備支援を通じて他のアジア諸国の民法にも影響を与えている。なお、タイ民商法典は、その起草者によれば、日本民法典はドイツ民法を基本的に継承したものであるとの理解の下、日本人の手を一切介することなく、自発的に日本民法典を範にして成立したものであると証言されている[86][87]
構成

日本の民法典の編成は、パンデクテン方式を採用している。本則は第1条から第1050条で構成される。

フランス民法及び旧民法は親族編に相当する人事編を冒頭に置くのに対し、近代個人主義的観点から、各人の身分関係に基づく権利変動よりも、その意思に基づく契約による権利変動を中心に据えるべきとの考えから、ザクセン民法典及びドイツ民法草案に倣い、親続編を相続編と共に財産に関する部分の後に配列した[88]。このため、講学上は第1?3編(総則、物権、債権)を財産法又は契約法、第4、5編(親族、相続)を身分法[89]又は家族法と呼ぶ[注釈 4]
財産法の構成

財産法が対象とする法律関係に関するルールは、所有関係に関するルール(所有権に関する法)、契約関係に関するルール(契約法)、侵害関係に関するルール(不法行為法)に分けられる。このうち後2者を統合して、特定の者が別の特定の者に対し一定の給付を求めることができる地位を債権として抽象化し、残りについて、物を直接に支配する権利、すなわち特定の者が全ての者に対して主張できる地位である物権という概念で把握する構成が採用されている。

そして、債権として抽象化された地位・権利に関しては、債権の発生原因として契約法にも不法行為法にも該当しないものがあるため、そのような法律関係に関する概念が別途立てられる(事務管理不当利得)。物権に関しても、所有権を物権として抽象化したことに伴い、所有権として把握される権能の一部を内容とする権利に関する規定も必要になる(用益物権担保物権)。また、物権と債権に共通するルールも存在する(民法総則)。

このような点から、財産法は以下のように構成されている。

第1編 総則

第1章 通則

第2章

第3章 法人

第4章

第5章 法律行為

第6章 期間の計算

第7章 時効


第2編 物権物権法

第1章 総則

第2章 占有権

第3章 所有権

第4章 地上権

第5章 永小作権

第6章 地役権

第7章 留置権

第8章 先取特権

第9章 質権

第10章 抵当権


第3編 債権

第1章 総則

債権の目的 - 債権の効力 - 多数当事者の債権及び債務 - 債権の譲渡 - 債務の引受け - 債権の消滅


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