民法_(日本)
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1896年、明治29年法律第89号により定められた民法第一編、第二編、第三編(総則物権債権)及び1898年6月21日の明治31年法律第9号により定められた民法第四編、第五編(親族相続)で構成されており、また附属法令として6月15日、明治31年法律第11号民法施行法が公布され[6]、全体が7月16日から施行された。これによりいくつかのそれまでの法規が廃止された[7]。原案起草者は穂積陳重富井政章梅謙次郎の三名である。

この民法典は、社会情勢と価値観が大きく転換する明治維新の後に妥協的に成立したものであったため[8]、民法典論争からの代表的な保守的論客であった穂積八束の影響を受けた教育界から日本古来の美風を害し、従来の家族制度を無視するものであると批判されていたが、それとは逆に、大審院をはじめとする法曹界においては戸主権の弊害が意識されていたため[9]1925年(大正14年)の「親族法改正要綱」「相続法改正要綱」に結実したように、戸主権の制限を加え、また女子の地位向上、男女平等を実現しようとする改正論が支配的な流れとなり、その後、日本国憲法の制定を機に、その精神に適合するように、法律上の家制度の廃止を中核として後2編を中心に根本的に改正された[10]

この時中心となったのが、起草委員を務めた奥野健一我妻栄中川善之助らであり[11]信義誠実の原則権利濫用の法理もこの時明文化された(現行1条2項及び3項)。

上記のとおり、民法典は形式上は明治29年の法律と明治31年の法律の二つの法律から構成されているとみることもできたが、後者(親族、相続)は、前者と一体をなすもので実質は同一法典であるから[12]、通常は、民法を引用するときは、明治31年法の第四編以下を当然に含む意味で民法(明治二十九年法律第八九号)と表記される[13](有力な反対説がある[14])。

また、民法施行法は両者を一体の法として扱っており、民法の条名も通し番号となっていることから、実質的には一つの法典と考えることも可能であり[15]、さらに、口語化と保証制度の見直しを主な目的とした民法の一部を改正する法律(平成16年法律第147号)が2005年に施行されたことに伴い民法の目次の入換えがされ、入換後の目次が一体となっていることから、今後は一つの法典として理解することになる[16]

制定当時の民法と現在の民法は形式上は同じ法律であるが、家族法(身分法)についてはその内容に大きな変化が加えられているため、戦後の改正以前の民法(特に家族法)を「明治民法」と称することもある。

なお、日本における民法編纂の歴史については民法典論争を、民法の口語化については民法現代語化を参照
沿革
旧民法以前

日本では、中国式の法典である律令法大宝令8世紀初頭に成立して、民法の規定もその要部を占めていた。しかし、12世紀末に武家時代になってから、律令法はその効力を失い、広く一般社会に通用するまとまった形での民法典は存在しなかった[17]。なお、戸令応分条(相続法)について述べた記述が江戸時代の国学者、村田春海の随筆『織錦舎随筆』にみられる[18]

そして、19世紀半ばに鎖国政策が崩壊した後、諸外国から不平等条約の改正の条件として、民法典の制定を求められたため、早急にこれを制定する必要を生じた[19]明治新政府の初代司法卿である江藤新平が、箕作麟祥に対して、フランス民法を「誤訳もまた妨げず、ただ速訳せよ」と命じたのは、このような事情を背景としている[20](敷写民法[21])。もっとも、むしろ江藤は国内法統一による富国強兵に重きを置いていたようである[22]。特に外国人に適用されない家族法は不平等条約改正の必須条件ではないため、外国法を模倣する必要がないことは早くから認識されていた[23]

なお、明治民法が実際に制定されるまでも、民法の全分野につき多数の法令が出されていた[24]
旧民法

現行民法の叩き台となったのが、1890年(明治23年)4月21日と同年10月7日に公布され、民法典論争により施行延期となり、そのまま施行されずに終わった、ボアソナードらの起草に成る民法典、いわゆる旧民法と言われる『民法財産編・財産取得編・債権担保編・証拠編』(明治23年法律第28号)と『民法財産取得編・人事編』(明治23年法律第98号)である[25][26]

ただし、この旧民法においても、人事編及び財産取得編の相続・贈与・遺贈・夫婦財産契約に関する部分(いわゆる身分法又は家族法)は、特に日本固有の民情慣習を考慮する必要があるとの考えから、司法省民法編纂会議の磯部四郎及び熊野敏三ら日本人委員のみが起草した[27]。したがって、旧民法草案[28]が旧民法公布までの10年間の間にボアソナード自身、あるいは日本人委員の手によって手を加えられていることもあり、そのまま旧民法というわけではない[29]


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