カタック、バラタナーティヤム
(インド)などインドと中国両方の影響を受けた地域だが、インドの文化の方が基層にあり、ヴェトナム・フィリピンを除いてはインド文化圏の辺境と言えそうである。始めインドからヒンドゥー教と仏教が、13世紀以後はイスラム教が流入し、半島部では仏教が、島嶼部ではイスラム教とヒンドゥー教がそれぞれ優勢である。このような歴史からか、インドで3?4世紀に成立した「ラーマーヤナ」(ラーマ王子の物語。インドの叙事詩)を題材とする舞踊劇や影絵芝居が方々で見られ、音楽とともに上演されて人気を博している。
東南アジア独自の要素としては、青銅のゴング(銅鑼)やチャイム、青銅や竹や木製の鍵盤打楽器による野外の合奏が挙げられる。この地域では紀元前3?2世紀ころから儀式用のゴングが広く分布しており、これらは超自然的な力を持つと信じられてきた(ちなみにこれは日本にも伝わり、銅鐸となった)。そのような伝統に基づくものと考えられる。
音楽は基本的に5音音階の地域が多いが、調律は1オクターブをほぼ5等分や7等分するなど、中国ともヨーロッパとも大幅に違い、わざと濁った響きになるように作られている。調律が合わない時に発生する「うなり」が超自然的な力を持つと考えられたため。リズムは2拍子系だが、複数の声や楽器がからみ合い、非常に複雑なリズムを作り出す。 サハラ砂漠以北のアフリカをマグリブ(日が沈む地=西方の意)と言い、文化的には西アジアと連続体とされる。この地域の国々はほぼ全てイスラム教を信仰しており文化的にも近い部分が多い。アラビア語が広く話されているが、長い歴史を持つイランのペルシャ語(および近縁な言語、タジキスタンやアフガニスタン)、強勢を誇ったオスマン・トルコのトルコ語(および近縁な言語、アゼルバイジャン)も有力な言語である。 イスラム教の中では音楽を認める考えと邪悪なものとして退ける考えの対立が長く、キリスト教のように宗教儀式で公式に音楽を使うことはないが、聖典コーランの朗唱キラーアや1日5回の祈りを呼びかけるアザーンなどは大変音楽的に聞こえる。とくにコーラン朗唱には地域などにより何種類かあり,優秀者をたたえるコンクールもおこなわれる。 伝統音楽では、単旋律、即興的、メリスマ的(音が長く伸びながら上下に動く)、微分音(半音の半分の音程)の使用、非常に複雑な拍子(48拍子まである)、ウード、サントゥール(カーヌーン)、ネイ(尺八のような笛)、ダラブッカ(太鼓の一種)、ラバーブ、スルナーイ(チャルメラのようなダブルリード楽器)の使用など、共通する特徴が見られる。 なお、ウードは琵琶・リュート・ギターの、サントゥールはダルシマーやピアノの、カーヌーンはプサルテリウムやツィターやハープシコードの、ラバーブはバイオリン・二胡の、スルナーイはオーボエの祖先であり、長く先進地帯だったこの地域は楽器の宝庫である。また、オスマントルコ以来トルコはアラブ世界の音楽的中心地となったほか、古くから軍楽が見られ、その中で使われているシンバルやトライアングル、ナッカーラ(ティンパニの先祖)とともに、ヨーロッパの音楽に多大な影響を与えた。 カザフスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタン・タジキスタン・キルギスと中国の新疆ウイグル自治区を指す。北のステップ地帯(シャーマニズムの影響が残る)と南のオアシス地帯(トルキスタン=トルコ族の地とも呼ばれる。西アジアの影響をいち早く取り入れた)に分かれる。どちらもトルコ系言語が主流であり、アナトリア半島に進出したセルジューク・トルコも中央アジアからイランを経てである。遊牧民の末裔が多く住み、イスラム教信仰やトルコ語・ペルシャ語(に近い言語)使用など、西アジア地域との歴史的・文化的な関係が深く、楽器は西アジアと共通するものが多く、明らかに西アジアの音楽用語が使われていたりする(シャシマコームとは「6つのマカーム」の意味で、マカームとはアラブ音楽の音階・旋法・旋律の意味である)。ただしカルナイ(長いトランペットのような楽器)はウズベキスタン・タジキスタンの楽器である。西アジアの音楽を主導したトルコの音楽の土台は中央アジア共通の民俗音楽であり、太鼓による軍楽の要素はトルコの軍楽のルーツである。 キュイ(カザフスタン) シャシュマコーム(ウズベキスタン・タジキスタン)など サハラ砂漠より南の地域は黒人の数が圧倒的に多い社会である。言語はスワヒリ語やズールー語などで、声調を持つことを特徴としている。2000を超すといわれる多数の部族の中で伝承されている音楽は、きわめて多様であるが、いくつかの共通する特色をもっている。(1)さまざまな宗教儀礼や祭りなどと深く結びつき、部族社会の生活との深い関係があること(2)音楽や歌の旋律が声調に対応していること。話し太鼓として知られるトーキング・ドラムは、その典型の一つ。(3)きわめて複雑で高度なリズム。同時にいくつかのリズム型を奏するポリリズム、複数のリズムが交錯するクロスリズム 楽器でアフリカにおいて最も注目されるのは、マリンバ、バランキ
東南アジアの民族音楽の例合奏(タイ) ティンクリン(フィリピン)など
西アジア・マグリブ
西アジア・マグリブの民族音楽の例(アゼルバイジャン・ダゲスタン)など
中央アジア
中央アジアの民族音楽の例
サブサハラアフリカ
バラフォンの演奏、トーキングドラムの演奏、グリオ(世襲の演奏者)の演奏(西アフリカ) 指ピアノの演奏(全域)など
ヨーロッパ
ほとんどの国がキリスト教を信仰している。教会で聖歌を歌う習慣がどの国にもあり、それぞれの民族音楽に影響を与えている。上流階級的な音楽はどの国も舞踏会だったり、オーケストラの演奏会だったり、オペラやバレエだったりであまり差はないが、お祭りや結婚式や酒場での歌・楽器の演奏・踊りなどの中に特徴的な民族音楽が見られる。
ヨーロッパの民族音楽に共通する特徴は以下の通り。
音階は通常のドレミで書ける音階。5音音階が最も多いが、7音音階も広く見られる。
基本的には単旋律だが、和声的につくられた音楽も広い範囲で見られる。(特にヨーロッパ中央部)ただし、クラシック作品に比べればずいぶん単純な和声である。
楽器はヴァイオリン・クラリネット・トランペットなど、クラシックと共通するものが広く使われるが、バグパイプ・ツィンバロムなど昔の楽器も(特に辺境で)使われる。
ただ、イスラム勢力に支配されていたことのあるイベリア半島諸国やバルカン半島諸国は、ドイツ・イタリアを中心とするヨーロッパ中央部の音楽とは音階やリズムにかなり違った特徴も見られる。特にバルカン半島諸国では奇数拍子や変拍子が良く見られる。また、東欧諸国では明らかに西欧諸国と違う地声による発声、輪舞を主とする舞踊など、共通性が見られる。ピレネー山脈、鉄のカーテン(概ねゲルマン民族とスラブ民族の境界線)、オスマントルコの最大時の国境線(バルカン半島諸国を示す境界線)、カトリックと正教の境界線など、よくヨーロッパの潜在的な境界線とされるものは、民俗音楽の特徴の違いにも表れている。
さらに、東欧諸国やイベリア半島にはジプシー(ロマ)がかなりの数いる。ジプシーはさまざまな町を移動しながら、音楽を演奏したり、金属を加工した馬具を販売したりして生活していた人たちで、インド北西部が発祥の地と言われている。ジプシーは職業音楽家としてこれらの国で人気を博し、これらの国の民族音楽に影響を与えたとされている。 フラメンコ(スペイン) ヨーデル(スイス) カンツォーネ(イタリア) チャールダーシュ(ハンガリー) コサック・ダンス(ウクライナ) チャストゥーシカ(ロシア) バグパイプ演奏(スコットランド)など 極東シベリアにはロシア人が進出する前から遊牧民・狩猟民・漁労民が生活しており、それぞれ固有の文化を今でも残している。極東シベリアでは口琴や団扇太鼓が広く使われているが、衣装がモンゴル・中国・アイヌ・日本のはっぴに少しずつ似ていたり、祭りの雰囲気が日本の東北地方を思わせたりするのが興味深い。エスキモーの文化はロシア・アメリカ・カナダからグリーンランドまで広がっているが、死霊を慰め狩猟(クジラ,クマ,アザラシなど)の成功を祈願する儀礼、歓迎や娯楽のために、踊りや太鼓をともなう歌をうたう。歌は個人の所有財産で、贈答も可能である。喉を緊張させ声門と横隔膜を震わせる発声法が用いられ、舌打ちや叫び声などが装飾的に使われる。やはり団扇太鼓の使用が見られる。 ジャンル名は明確なものはないが、歌・民族楽器アンサンブル・民族舞踊(極東シベリア)や歌・ドラムダンス(エスキモー)など ネイティブ・アメリカンについて書く。
ヨーロッパの民族音楽の例
極東シベリア・エスキモー
極東シベリア・エスキモーの民族音楽の例
北アメリカ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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