ここからが毛織物の歴史となるが、歴史学者たちによると、メソポタミアの人々はその後、ウールを紡いで織って[注釈 1]毛織物として使うようになり、それがメソポタミアにとって重要な産品となり、東はインド、西は地中海世界、南はアフリカ大陸との貿易が行われた。[4]
古代の毛織物
古代では、遊牧民は獣毛を原料に布を織ったりフェルトを作った。(一方、その後人類の中に農耕を始める人々が(紀元前9千年前後と言われている時期に)に登場したが、彼らは麻を織った布を利用していた。)
古代エジプトでは、亜麻布と毛織物の両方が使われたが、亜麻布のほうが"清浄"と見なされたのに対して毛織物のほうは"不浄"と見なされ、富裕な人などが着用したものの、神殿(en)では着用できなかった。古代ギリシアの毛織物づくり
古代ギリシアでも羊が飼われ毛織物が織られた。古代ギリシア人は毛織物を贅沢品だとみなした[5]。詩人ホメロスは羊毛を紡ぎ織ることを詩にした。
古代ローマではウールは一番大切な繊維とされ、家族のためにウールを紡いで糸をつくりそれを織ってウールの衣類を作ることは古代ローマの女性全員の義務であり、それを行うことは、美徳と女性らしさの象徴であった[6]。ローマの女性たちの墓石にはしばしば、誇らしげに「私は家を守った」や「私はウールの仕事をした」などの文言が刻まれており、さらに杖、紡錘、ウールのかご、ウールを紡いだ毛糸の玉のレリーフが墓石を飾っていることもよくある[6]。ローマ人は、女性の美徳とウールを紡ぎ織ることを、かなり強く関連づけていて、初代ローマ皇帝のアウグストゥスは彼の妻や娘に対して彼のトーガを紡ぎ織ることを求め、それをローマ帝国の女性たちへの良き手本としようとした[6]
シリア砂漠の古代都市パルミラからも、細い羊毛の織物が出土している。
日本
日本では、古くから越後国が「兎褐(とかち)」と呼ばれるウサギの毛を綿糸に混ぜて織った生地の産地として知られており、『扶桑略記』にも慶雲元年(704年)に朝廷に献上されたことが記されている。もっともこれは限定的なものであり、本格的な毛織物工業の成立は明治時代以後のことである。
脚注[脚注の使い方]^ a b 東洋紡糸の糸づくり ⇒http://www.toyoboshi.co.jp/toyoboshi/making.html
^ a b 繊研 素材を学ぶ ウーステッド ⇒http://www.senken.co.jp/knowledge/material/wool/4672/
^ a b 繊研 素材を学ぶ 紡毛 ⇒http://www.senken.co.jp/knowledge/material/wool/4675/
^ a b c d e f Great stories and history of wool
^ [1]
^ a b c Wool in Ancient Rome
^ 繊維を紡いで糸をつくり、その糸で織ることを、ひとまとめにして「紡織」「紡織する」と言うことがある。
関連項目
ウール
布
服飾
動物繊維
マンチェスター
一宮市 - 尾州毛織という名称で世界的に知られている。
梳毛織物
紡毛織物
繊獣毛 - 羊以外の繊維として使われる獣の毛。