毛皮貿易
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インディアン問題担当局はインディアン準州内での交易に免許を発行した。1834年、アメリカ合衆国のミシシッピ川から西では大半にこれが適用された。そこではメキシコからのマウンテンマンや貿易業者が自由に活動していた。

初期の探検隊はしばしば毛皮貿易遠征隊であり、その多くは北アメリカの特定地域にヨーロッパ人が初めて到達した記録となった。例えば、エイブラハム・ウッドはアパラチア山脈南部を探検する毛皮貿易隊を派遣し、その過程でニュー川を発見した。サイモン・フレーザーはフレーザー川の大半を探検した毛皮貿易業者だった。

1834年、太平洋毛皮会社を創設し、アメリカで最大の毛皮貿易会社としたジョン・ジェイコブ・アスターは、毛皮を得ていた動物全てが希少になったことを認識して引退した。ヨーロッパ人の開拓地が拡がり、先住民社会を最良の猟場から移させた。毛皮に対する需要はヨーロッパの流行が変わって低下していった。アメリカ先住民の生活様式は貿易によって変えられた。ヨーロッパ製品を得続けるために借金に頼り、支払が難しくなって、しばしばヨーロッパ人開拓者に土地を売るようになった。土地を売ることを強制されたときの不満は戦争に繋がった。
毛皮貿易と経済人類学

経済史学者人類学者は初期北アメリカでの毛皮貿易業者の重要な役割を研究したが、先住民族の経済態様を表現する理論的枠組みで理論の一致を見ていない。

ジョン・C・フィリップスとJ・W・スマーは、毛皮貿易とヨーロッパ列強の権力闘争とを結びつけ、毛皮貿易は覇権の拡大と支配権の維持手段として役立ったと指摘している。個々人の経験は捨ておいて、その「高度に政治的かつ経済的重要さ」を露呈した世界的な舞台における関係を求めた[2]。E・E・リッチは経済の視野を貿易会社やその雇員の役割に焦点をあてるレベルにして、彼等が大陸を開拓する国や州の役割の代わりにカナダの領土の大半を「開拓」したと指摘している[3]

リッチの他の著作では、この分野を支配しているか、あるいは混乱させていると考えるようになる者もいる形式主義者と実在主義者の論争の核心に触れている。ハロルド・イニスのような歴史家達は、特にカナダの歴史では以前から形式主義者の立場を採り、新古典派経済学の原則が西洋の社会に影響したまさにそのように西洋とは違う社会にも影響したと考えている[4]。しかし、1950年代以降、カール・ポラニーのような実在主義者はこの考え方に異議を唱え、伝統的な西洋市場の貿易に変わるもの、すなわち、贈与交易と管理交易として原始社会が関わることができたと主張している。リッチはある影響力ある記事でこの議論を取り上げ、インディアンは「ヨーロッパ人の概念あるいはヨーロッパ人が接触してくることの基本価値の受容を一貫して躊躇した」とし、「イギリスの経済ルールはインディアンの交易には適用されなかった」と主張した[5]。インディアンは経験豊富な交易者だったが、基本的に資産について異なった考え方を持っており、そのことがそのヨーロッパ人交易相手を混乱させた。エイブラハム・ロートスタインはその後、これらの議論を明白にポラニーの理論的枠組みに当て嵌め、「管理された交易は「湾」での操作とロンドンでの市場貿易だった」と主張した[6]

アーサー・J・レイは2つの影響力ある著作で毛皮貿易の経済的研究の方向を恒久的に変え、イニスとロートスタインの極論の間で修正された形式主義者の立場を示した。レイは「この貿易の仕組みは、「贈与交易」とか「管理交易」とか「市場貿易」とかにきっちりとラベル付けするのは不可能である、というのもこれら全ての形態要素を包含しているからである」と説明した[7]。インディアンは様々な動機で交易に携わった。形式主義者や実在主義者がやったようにこれらを単純な経済あるいは文化の二元論に落とし込むことは無益な単純化であり、それが説明できる以上に曖昧にしている。さらにレイはハドソン湾会社に残される交易勘定や帳簿を優れた質的分析に用い、この分野の方法論の限界を拡げた。レイの立場に従って、ブルース・M・ホワイトは先住民族がそれまでの文化様態に新しい経済関係を当て嵌めた複雑な方法をより微妙に描写することにも貢献した[8]

リチャード・ホワイトは形式主義者と実在主義者の論争が「古臭く飽きられた」ことを認めたうえで、実在主義者の立場を再活性化しようとした[9]。安易な単純化に対して警告するというレイの中庸的な立場を採りながら、ホワイトは形式主義に対する単純な議論を進めた。「生活は事業ではなく、そのような単純化は過去を歪めることに過ぎない[10]」その代わりにホワイトは、ヨーロッパ人とインディアンがその文化的違いを適合させようとした「中立地帯」の部分を毛皮貿易が占めていたと主張した。毛皮貿易の場合に、これはインディアンが毛皮貿易に吹き込んだ政治と文化の意味合いからフランスが学ぶことを強いられたことを意味している。支配ではなく協調が必要だった。
毛皮貿易基地や砦のリスト(一部)

1800年代初期までに、幾つかの会社が北アメリカ中に一連の毛皮貿易基地や砦を建設した。

カナダ

ブルボン砦:現在の
マニトバ州グランド・ラピッズ近く

ドーフィン砦:マニトバ州

エドモントン砦:アルバータ州

ド・ル・コルヌ砦:サスカチュワン州、後にア・ラ・コルヌ砦、北アメリカのフランス帝国の基地として最西

カールトン砦:サスカチュワン州

エリス砦:マニトバ州

フロントナック砦:当初はカタラキ砦、オンタリオ州、1673年建設

ギャリー砦:マニトバ州ウィニペグ

ジブラルタル砦、ウィニペグ

下流ギャリー砦:マニトバ州

カミニスティキア砦:オンタリオ州

ラ・レーヌ砦:マニトバ州

ルイブール要塞:ノバスコシア州

モールパ砦

マクマレー砦:アルバータ州

パスコイア砦:マニトバ州

ルージュ砦:マニトバ州

ウィリアム砦:オンタリオ州

クータニー・ハウス:ブリティッシュコロンビア州

オールドフォート・プロビデンス:ノースウエスト準州

ロッキーマウンテン・ハウス:アルバータ州

ヨーク・ファクトリー:マニトバ州

アメリカ合衆国

カバンヌ交易基地:ネブラスカ準州

フォントネル基地:ネブラスカ準州

アストリア砦:オレゴン州

ボイシ砦:アイダホ州

ブエナベンチュラ砦:ユタ州

コルビーユ砦:ワシントン州

ド・ビュアード砦:ミシガン州

ブリッジャー砦:ネブラスカ準州

デトロイト砦:ミシガン州

デュケーヌ砦:ペンシルベニア州

ホール砦:アイダホ州オレゴン・カントリー

ホイ・デ・ゲーデ・フープ砦:コネチカット州ニューネーデルラント

リーザ砦:ネブラスカ準州

マキナック砦:ミシガン州

ナッソー砦:ニューネーデルラント(ニューヨーク州オールバニ

オレンジ砦:ニューネーデルラント(ニューヨーク州オールバニ)

ミチリマキナック砦:ミシガン州

ニスクァリー砦:ワシントン州

ロス砦:カリフォルニア州

セントチャールズ砦:ミネソタ州

セントジョセフ砦:ミシガン州

スネリング砦:ミネソタ州

バンクーバー砦:オレゴン準州

バスケス砦:コロラド州

ビンセンヌ砦:インディアナ州

グランド・ポーテージ:ミネソタ州

カリースペル・ハウス:アイダホ州

マッサカー・アイル:アラバマ州

ニューアムステルダム:ニューネーデルラント(ニューヨーク州)

サリーシュ・ハウス:モンタナ州

スーセントマリー:ミシガン州

スポーケン・ハウス:ワシントン州

ロス要塞 : カリフォルニア州


現在

現在カナダには約8万人の罠猟師(罠免許に基づく)がおり、その約半分は先住民族である[11]
脚注^Introduction of alcohol through the fur trade
^ John C. Phillips and J.W. Smurr, The Fur Trade, 2 vols. (Norman, Oklahoma: University of Oklahoma Press, 1961), xx.
^ E.E. Rich, The Fur Trade and the Northwest to 1857, (Toronto: McClelland and Stewart Limited, 1967), 296.
^ Innis, Harold Adams. The Fur Trade in Canada: An Introduction to Canadian Economic History, (New Haven: Yale University Press, 1930).
^ E.E. Rich, “Trade Habits and Economic Motivation Among the Indians of North America,” The Canadian Journal of Economics and Political Science 26:1 (Feb., 1960): 46; 47.
^ Abraham Rotstein, “Karl Polanyi’s Concept of Non-Market Trade,” The Journal of Economic History 30:1 (Mar., 1970): 123. See also Rotstein, “Fur Trade and Empire: An Institutional Analysis” (PhD diss., University of Toronto, 1967).


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