比較神話学
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このローラシア神話に属するものは、ウラルアルタイ日本インド・ヨーロッパ、オース トリック(東南アジアとポリネシア)、古代エジプトメソポタミア中国、アメリカ先住民(アタバスカン、ナバホアルゴンキンアステカマヤインカアマゾン、ティエラデルフエゴ)の神話がある[8][9]

ヴィツェルの世界神話学では、個別モチーフの比較も重要だが、それ以上に神話モチーフの連続の比較が系統性を明らかにするとし、たとえば、言語の比較においても、単語や格変化よりも文法全体を比較する方が有効であるとしている[8]。また、ヴィツェルは、神話体系は歴史的に知られている個別語派が成立する以前にすでに存在していたのだから、デュメジル のインド・ヨーロッパ語族神話研究のような語派を超えようとしない比較は、むしろ比較研究の可能性を自ら狭めているとみなす[8]。同語族間の比較は精度が高いが、しかし、類型論(typology)にとどまらない、系統論としての語派を超えた比較研究も行われるべきであるとしている[8]。なお、日本の比較神話学者松村一男は、このような研究について、個別の神話から例外を持ち出してくる反論が必ずなされるが、研究の大きな方向性を個別例によって全面的に否定しようとするような態度は非学問的だとコメントしている[8]。2012年出版のヴィッツェルの新書「世界神話の起源」(The Origins of the World's Mythologies, NY Oxford University Press)の中でヴィッツェルはこれらの言語学者に対してこう論じている:ヴィッツェルは歴史的比較神話学という全く新しいメソッドを駆使して、神話の連続(ストーリーライン)で可能な有史以前の太古の神話の再構築を成し遂げた。この再構築は1)ローラシア神話の神話連続。2)ローラシア神話が考古学と遺伝学でみられる進化及びその結果と平行対応している。という二点で裏打ち、証明されている。
ベレツィンの神話分布理論

ロシアのサンクトペテルブルク人類学・民族学博物館(Kunstkamera)アメリカ部門主任教授ユーリ・ベレツィン(ベリョースキン)は世界の神話のカタログを作成し、1400以上の神話モチーフが分類され、地域ごとの分布地図を作成している[10]。ベレツィンは、インド・パシフィック(Indo-Pacific, IP)とユーラシア大陸(Continental Eurasian, CE)という二群に分類する[8]。ユーラシア大陸群には北米を含み、星図や月のモチーフが特徴的である。インド・パシフィック群にはアマゾンやメラネシアが含まれ、人体の解剖学的な考え方に共通性が認められる[8]。しかし、サハラ以南アフリカの神話には星の神話も人体の解剖モチーフも乏しいことから、現生人類が出アフリカをした時期には神話はまだ充分に発達しておらず、その後の氷河期に二つの大きな集団が枝分かれした後に個別の発展を遂げた可能性があると指摘している[8]。ベレツィンの神話分布にもとづくグループ、グループ形成の過程の仮説は、ヴィツェルのものと共通するところもある[8]

2008 年、国際比較神話学会(International Association for Comparative Mythology,IACM)が発足した [8]
脚注^ a b c Littleton p32
^ Scott Leonard (2007年). “ ⇒The History of Mythology: Part I、Scott A. Leonard's Home Page”. Youngstown State University. 2010年5月17日閲覧。
^ a b千の顔を持つ英雄』ほか。Northup, p. 8
^Modern Humans Came Out of Africa, "Definitive" Study Says
^ Christopher Stringer and Peter Andrews (1988) "Genetic and Fossil Evidence for the Origin of Modern Humans" in Science 239: 1263-1268
^ Witzel, Michael 2000-2001: “Comparison and Reconstruction: Language and Mythology”, Mother Tongue 6, 45-62.
^ Witzel, Michael 2005: “Creation Myths”, in Osada, Toshiki et al. eds., Proceedings of the Pre-symposium of RIHN and 7th ESCA Harvard-Kyoto Roundtable, Kyoto, Research Institute for Humanity and Nature (RIHN), pp.284-318.


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