殺処分
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

2013年9月、動物愛護法の改正により、相当の理由がない限り自治体は引き取りを拒否できるようになったため、各自治体は飼い主に新たな飼い主を探すよう指導している[7]。自治体が引き取りを拒否できる項目は以下のとおり。
犬猫等販売業者から引取りを求められた場合

引取りを繰り返し求められた場合

繁殖制限のための指導に従わず子犬・子猫の引取りを求められた場合

犬猫の老齢・疾病を理由として引取りを求められた場合

飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合

譲渡先を見つけるための取組を行っていない場合

となっている。

なお、2013年(平成25年)の改正法の施行後には以下の問題が生じていることが指摘されている。

所有者不明の猫の引取りについて、拒否する運用をしている自治体も多いこと。
特に野良猫については、自活できないもの(離乳期前の子猫等)を除いて一切の引取りを拒否するケースが増えている。このような実態について、所有者不明の猫による継続的な生活環境被害を受けている住民等からは、自治体が所有者不明の猫を引き取らないのは明確な法律違反であるとの指摘が多数寄せられている。[4]

殺処分がなくなることを目指して譲渡の促進に努める旨の規定が追加されたことから、自治体は引き取った犬猫の譲渡活動が促進された。
近年の急速な譲渡の促進(殺処分率の低下)の要因としては、一般飼い主に加え、動物愛護団体への団体譲渡の寄与するところも大きい。
その一方で、自治体によっては、殺処分がなくなることを最優先とした結果、譲渡適性のない個体を譲渡したことによる咬傷事故の発生や、団体譲渡した動物愛護団体のシェルターが過密飼育となっており動物の健康安全の確保の観点から問題が生じているのではないかとの指摘がある。[4]

動物の保護・譲渡活動は、海外(イギリス、ドイツ)では、民間団体が寄付金等の自己資金を用いて実施。これらの国では、野良犬や野良猫がほとんど存在せず、シェルターに収容される動物の多くは飼い主が所有放棄したものが多いという。
一方、日本の場合は、北関東西日本を中心に野良犬の収容が多く、全国的に野良猫の数も多いことから、保護収容した個体のうち人間との社会化ができておらず、馴化が困難で飼養に適さないものも多い。[4]

日本国内においても、大都市部においては、過去の捕獲の努力や適正飼養の徹底の結果、野良犬がいなくなり、野良猫についても多くの愛護団体の協力が得られるため地域猫として管理できるケースが増えている。
他方、西日本等の地域では、温暖で餌も豊富なため、多くの野良犬や野良猫が生息・繁殖しやすく、依然として自治体の収容数が多い。このように自治体の置かれた状況が大きく異なる中で、大都市部と同様の動物愛護管理手法について、それ以外の地域に要求することは困難な状況である。 [4]

自治体は、動物の引取り・譲渡等の活動の他に、多岐にわたる業務を担っている(動物愛護管理推進計画の策定・推進、一般飼い主に対する適正飼養の普及啓発や指導、多頭飼育者に対する指導・勧告・命令、動物取扱業の登録制度の運用、特定動物の許可制の運用、動物虐待事案への対応等。)。また、動物保護管理法制定当時から、公衆衛生の確保など動物の管理(動物による生命・身体・財産の侵害の防止、前回改正時からは動物による生活環境被害の防止)の観点からの施策が行政機関としての基本であり、保護法益に鑑みても優先事項とすべきである。
しかしながら、近年では、動物の愛護を優先する結果、動物の管理に係る施策を十分に講じることが難しい環境に置かれる自治体もあるのではないかとの指摘もある。 そうした中で、法において動物愛護管理行政が自治事務とされた趣旨に照らし、引取りや譲渡のあり方を含め、動物愛護行政のあり方については、各自治体の実情に応じ、地域に根ざす住民や愛護団体のニーズやリソース等を踏まえて、限られた人的・物的行政リソース(人員と予算)の効率的・効果的な活用方法について、各自治体ごとに検討することが必要となっている。[4]

なお、2022年度(令和4年度)の環境省の統計資料によると、引き取られた全ての犬猫の内、飼い主からの引き取りは犬が約11.5%(2,576頭)、猫が約31.4%(9,559頭)である[3]
収容日数

狂犬病予防法により定められた公示期間は2日間であるが、収容期間は法令によって定められておらず、実際の収容期間は各自治体の条例に基づいた日数であり[要出典]、各自治体により様々である。その間に捕獲・収容した地域、動物の種類・品種・性別・毛色・首輪の有無及びその他の特徴といった内容を、収容された地域の市役所の掲示板に公示することで飼い主が名乗り出るのを待つことになる。
処分

動物愛護法第35条1項及び第3項と第36条第2項によって定められた犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置第4で定められている「処分」とは、「所有者への返還、飼養を希望する者への譲渡し及び殺処分とする。」とあり[8]、殺処分以外に飼い主への返還や里親募集業務による希望者への譲渡も含めた「愛護施設から出て行く全ての事例」を指している。

なお、令和4年度の環境省の統計資料によると、返還・譲渡率は犬が約87.8%(19,658頭)、猫が約67.3%(20,471頭)、殺処分率は犬が約10.9%(2,434頭)、猫が約31.2%(9,472頭)となっている。また、殺処分された幼齢個体(主に離乳していない個体)は、犬は449頭と犬殺処分の約18.4%に対して、猫の場合は5,878頭と猫殺処分の約62.1%を占める。但し、成熟個体と幼齢の個体を区別していない自治体にあっては、すべて成熟個体として計上していることに留意する[3]

また、殺処分分類別では、

譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)と判断された動物の殺処分 犬:1,701頭(内幼齢個体199頭) 猫:3,855頭(内幼齢個体1,363頭)

譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)と判断された動物以外の殺処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難) 犬:281頭(内幼齢個体103頭) 猫:2,857頭(内幼齢個体2,186頭)

引取り後の死亡 犬:452頭(内幼齢個体147頭) 猫:2,760頭(内幼齢個体2,329頭)

となっている。譲渡することが適切ではない犬以外が殺処分されたのは、殺処分された犬の内約30.1%、猫の場合は約59.3%であった。特に犬は、愛玩動物又は伴侶動物として家庭で飼養できる動物の殺処分が4割以下となっている。

日本においては、殺処分方法は政令[9]に定められており、対象となる動物は動物愛護法第44条4項に定められた家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物が対象[10]であり、すなわち人が所有する動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものが対象となる[11]

政令「動物の殺処分方法に関する指針」[9]で、「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。」と定めている。また「苦痛」とは省令[12]で「痛覚刺激による痛み並びに中枢の興奮等による苦悩、恐怖、不安 及びうつの状態等の態様をいう。」(同省令 第2(4))と定められている(具体例については後述する)。

高濃度の二酸化炭素は哺乳類の呼吸中枢を麻痺させるので、小・中型動物の場合には二酸化炭素による昏睡と自発呼吸の停止による窒息死で処分するという方法が一般的であり、最終的に死体は焼却される。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:65 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef