死霊のはらわた
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ライミはギリーズからの助言を念頭に置きながら、様々な人から強く援助資金を請うた[8]。キャンベルは家族一人一人に頼みこみ、ライミは興味をもったと思った人に頼んだ[8]。最終的に、当初期待していたほどではなかったが、長編映画の制作に必要になる十分な資金を集めることができた[8]

二人は映画製作に必要な資金を手に、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説の中でライミが面白いと思ったものから「死者の書」という仮のタイトルをつけ、制作を始めた[5][10]。その映画は高い制作費用を使い、短編映画である「ウィズイン・ザ・ウッズ」を長編映画に再映画化したものになると考えられていた。ライミは撮影の直前に20歳になり、彼はこの撮影計画を「通過儀礼」として考えた[11]
制作準備と配役2009年時のベッツィー・ベイカー、エレン・サンドワイズ、テレサ・ティリー

映画『死霊のはらわた』の制作のためにライミはかつて共同で制作していた仲間や友人に援助を依頼した[11]。ライミはキャンベルを主人公であるアッシュ・ウィリアムズに配役した[12]。多くの役者を集めるため、ライミは「ザ・デトロイト・ニュース」に広告をつけた。それに応えた女優の一人であるベッツィー・ベイカーや、「ウィズイン・ザ・ウッズ」に出演していたエレン・サンドワイズも同様に配役した[11]。スタッフのほとんどがライミとキャンベルの友人や家族で成り立っていた。「ウィズイン・ザ・ウッズ」のメイクアップアドバイサーであるトム・サリバンは以前にライミと働くことに対しての前向きな反応をしていたため、特殊効果を制作するために連れてこられた。

キャストはロケーションスカウトの正式な協力なしに、自分自身でロケ地を探さなければならなかった。制作チームは初めにライミの故郷であるミシガン州ロイヤルオークで撮影を進めようとしたが、テネシー州モーリスタウンでの撮影を選んだ。なぜなら、テネシー州は唯一ライミの映像制作に対する意気込みを示していたからであった。制作チームはすぐに他の建物から遠く離れた場所に位置する小屋を見つけた。制作準備の時点で13人のメンバーがそこにとどまらなければならず、 同じ部屋で眠らなければいけなかった。メンバーの中で意見がぶつかってしまうこともあり、生活状況は厳しかった[13]

スティーブ・フランケルは唯一の大工であったため、美術監督の単独貢献者になった[14]。外観撮影のために電動丸のこを使っていくつかの精密な小道具を作らなければならなかったが、小屋のほとんどは制作中に発見された状態のまま使用された。小屋に配管設備はなく、電話の配線だけがつながっていた[13][15]
撮影

この映画ではシェイキーカム(shaky-cam)という撮影技法を用いている。シェイキーカムとは中央にカメラを取りつけた木材を二人の人間が両方で持ちながら全速力で走るといった撮影技法である。本来、監督はステディカムを利用したかったが、予算の都合で使えなかったために発案した苦肉の策であり、これ以後で同じような撮影をする場合はステディカムを使用している[16]

終盤、主人公が壁の後ろから悪霊の手に捕まれる演出が有るが、これは監督の手である。当時、予算と配役の関係上、カメラマンと二人きりになってしまい、その様な演出に変えたとのこと。
編集写真右が映像編集に協力したコーエン兄弟のジョエル・コーエン

大規模な映画製作の過程の後、ライミには編集しなければならない「多量のフィルム映像」があった[17][18]。ライミはデトロイト編集協会を編集場所に選び、そこでエドナ・ポールに会った。ポールのアシスタントをしていたのはコーエン兄弟のジョエル・コーエンであり、彼は映像編集を手伝った[18][19]。 ポールは映画の大半を編集し、ジョエルは特に小屋での場面を編集した。ライミが制作した「ウィズイン・ザ・ウッズ」に触発されたジョエルは、投資者の関心を集めるための試作映画を制作する考えを気に入った[19][20]。ジョエルは弟のイーサンと協力して『ブラッド・シンプル』の制作を促進するためにこのコンセプトを利用した。そしてこの編集過程を通じてライミとジョエルは友人となった[10][20]

最初の編集で117分に達するほどになったが、キャンベルはシナリオでは65分しかなかったことを考えると素晴らしい仕上がりだと思った。その後、より市場向きの85分に至るまで編集を進めた[18]。 ライミはブライアン・デ・パルマが映画『ミッドナイトクロス』の編集をジョン・トラボルタと共同で同じ音響施設で行っていることに触発された[18]。編集期間の中で最も複雑だった状況のひとつに、「死体が溶けていく」場面のストップモーションがあった。その編集には何時間もかかった[18]。映画にはスタッフによる広範囲にわたる録音を必要とする独特な音があった[18][21]。いくつかの音は制作期間中に正確に記録されず、編集室で再び録音しなければならなかった。死んだ鳥の肉を突き刺して切断された肉の音を再現し、またキャンベルは録音のためにマイクに向かって何時間も叫び続けた[18]

『死霊のはらわた』は16mmで撮影した為、映画館で上映されるために当時基準であった35mmまで引き延ばす必要があった[18]。しかし「ウィズイン・ザ・ウッズ」に比べて大きな費用があったため、その作業は比較的簡単なものだった[18]
その後

『死霊のはらわた』およびそのシリーズは映画史上最高のカルト映画三部作と呼ばれるようになった[22][23][24]。小説『The Essential Cult TV Reader 』を記したデイヴィッド・レイヴリーは「キャンベルのキャリアはカルトのアイドルになるための指針」と語った[24]。この映画以降、ライミとキャンベルはよくコラボレイトするようになった[25]。ライミは事実上全ての映画にキャンベルを起用し、キャンベルは映画史上最高の興行収入を得たライミのスパイダーマンの映画作品3作全てにカメオ出演した[25][25][26]。暴力的ホラー映画監督として知られるライミが家族向け映画の監督をすることに難色を示されることも多かったが、ライミにとって監督する映画作品を選ぶのは子供が漫画本を選ぶようなものだと語った[25][27]。2009年、ライミは『スペル』でホラー・コメディ界に戻ってきた[28]

批評家は、キャンベルの当たり役とされるアッシュ役の演技とその後の演技をしばしば比較する[29][30]。キャンベルの演技は映画『プレスリーVSミイラ男』(2002年)のエルヴィス・プレスリー役からテレビドラマ『X-ファイル』のエピソード『愛児(Terms of Endearment)』(1999年)の悪役まで幅広い[31][32]


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