死後変化
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死斑の広がりは、死体の表面にかかる圧力によって異なる。死斑は、皮下の血液によるため、大量出血、または、重症の貧血があった場合は、ほとんど見られないことがある。

次に、周囲の温度によるが、概ね半日後に胆嚢から胆汁腹腔内に漏出、腹部に緑色斑が出現すると、次第に拡大する。また、特に夏季など温暖な季節では、山林、またはハエが多い場所では、死亡後直ちにハエが体表に産卵すると、産卵後わずか数時間で孵化、ハエの幼虫による食害が始まる。
死体の分解

死体の分解は、実際には周辺の環境しだいで多種多様な経過を辿るが、概念的には以下の段階を経て推移する。
自己分解 (autolysis):死体の「自己消化」は体内の酵素の働きによって進む。構造の完全性を失った
細胞膜からは溶解酵素が放出され、高分子と残った細胞膜を変性させる。自己分解は、最も代謝が活発な細胞である分泌細胞大食細胞から始まる。

腐敗 (putrefaction):嫌気性細菌による残された細胞の消化。自己分解の最終段階では、好気性の環境が死体内で確立される。これは、嫌気性菌の成長に有利に働く。これら嫌気性菌の大部分は内生の腸内細菌であるが、一部は外因性の土壌細菌である。これらのバクテリアは死体内の炭水化物蛋白質、脂質を分解、酸とガスを生成して、死体の変色、臭気、膨張、液化を引き起こす。腐敗の進行速度は湿気や気温の影響を受ける。

腐朽 (decay):好気性バクテリア真菌による残された細胞の消化。腐敗の最終段階では液状の腐敗物が流出、軟部組織は縮小する。残った組織は比較的乾燥した状態にある。腐朽の特徴は好気性微生物による蛋白質のゆっくりとした分解であり、これにより硬組織だけが残った死体は白骨化する。

分解 (diagenisis):硬組織であるの分解。バクテリア、藻、菌類などの微生物は、生理的経路をたどるか、骨質を透過することによって、骨に侵入する。骨質の透過は、酸性代謝物質と酵素の代謝物質の排出によって達成される。特徴ある非生理的経路を生成することから、「穿孔経路」と呼ばれる。微生物の進入によって有機骨基質は化学分解される。その結果生じた代謝物質は、周囲にある無機物基質を破壊する。また、結晶質のリン酸カルシウムからなる無機物基質の分解は、環境中の化学要因に影響を受ける。酸性の環境は、部分的な骨の鉱物質消失に至る、リン酸カルシウムの溶解をもたらすと、また部分的に本来よりもかなり大きく、より水溶性のある分子に再結晶化する。これら微生物と環境の働きによって、微小構造が分解される。

腐敗分解過程Decomposition stages

腐敗分解過程(decomposition stages)は5段階に分類される[6]。死から3日目辺りを医学的には、「新鮮期(fresh)」と呼び[7]、体内にガスが発生し、「膨張期(bloat)」に入る[7]。死後10日以上を過ぎると、体内に充満したガスや水分などが体外に噴出し、その後、本格的な腐乱=「腐乱期(腐朽期とも。decay stage)」が始まる[7]。この段階はさらに二つに分けられ、腐朽促進期(腐乱期とも。active decay)と高度腐朽期(後腐乱期とも。advanced decay)と呼ぶ。腐乱期は本来の体重から2割ぐらい減少し、後腐乱期ではさらに腐乱が進み、総量1割に減少した状態になる。数ヵ月から数年経つと白骨化[7]、これを「乾燥期」ないし「白骨期」(dry/skeletonized)」と呼ぶ。
脚注[脚注の使い方]^ 人間の場合の死体現象。死後経過時間(PMI:Post-mortem Interval)も参照。この他、脳死とされた患者に見られるラザロ徴候(英語版)、通常は極端な状況や感情の元で死亡した場合に現われる死体硬直(英語版) などの現象がある。
^ 日本獣医病理学専門家協会 編集『動物病理学総論 第4版』 文永堂出版 2023年 ISBN 978-4-8300-3285-1
^ .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}死体現象. コトバンクより。
^ 1. 遺体に発現する現象 医事出版社
^ “自宅で腐乱死体となっていた独居女性、検視と弔い方 『鑑識係の祈り――大阪府警「変死体」事件簿』より〈4〉”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2023年9月30日閲覧。
^ “「これから研究の話をしよう」第13回 昆虫から死後経過時間を推定!? 知られざる法昆虫学の世界”. 公益財団法人テルモ生命科学振興財団, Inc. 2023年9月29日閲覧。
^ a b c d 『大王の棺を運ぶ実験航海 -研究編-』 石棺文化研究会 2007年 第四章 p.150

参考文献

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2020年7月)


日本獣医病理学会編集 『動物病理学総論 第2版』 文永堂出版 2001年 ISBN 4830031832

伊藤 茂 『ご遺体の変化と管理』 照林社 2009年 ISBN 9784796521956  

伊藤 茂 『遺体管理の知識と技術』 中央法規 2013年 ISBN 9784805838075 

関連項目

死後化学
(英語版)

ホルマリン

突然死孤独死

棺内分娩

死後痙攣(英語版)、ラザロ徴候死後勃起

シャウムピルツ(ドイツ語版)(きのこ状白色泡沫、白色泡沫) - 水死体の口から出てくる泡。

Treibspur(ドイツ語版) ‐ 水に浸かった体が流されたときにできた傷跡。

パルタウフ斑(ドイツ語版) - 水死体にみられる肺の内出血

- 死後、乾燥から目が開く場合がある。死後処置、エンバーミングとして瞼の裏に薄い脱脂綿が入れられる。

白骨化死蝋ミイラ湿地遺体

仮死(ドイツ語版)、臨死体験脳死

法医学検死

法医昆虫学 - 死後の動物に対する昆虫の行動から、死後推定時刻などが割り出される。

死亡時の年齢推定(ドイツ語版)

硝子体 - 目の硝子体液の硝子体カリウムレベルから死後何時間経過しているかが推定される。

九相図

外部リンク

What happens to a body after death?
- BBC Science Focus(英語版)











医学的側面
細胞死
壊死プログラム細胞死アポトーシスオートファジー自己融解かさぶた

妊娠中絶

検死

脳死


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