人類社会の発展や進歩に普遍的な目的論を採用せず、自然環境要因と文化の伝播などを重視する考え方。文化伝播論は、厳密には歴史哲学ではないが、文化の伝播に関する巨視的研究や個別の実証研究の総合化の試みは、文明論などの歴史解釈の思想へも影響しているため、あわせて記載する。
枢軸時代論
人類が神話時代から脱し、人間として自己を自覚し、人間存在を意識するようになった「歴史の軸となる転換」が生じた、という論。カール・ヤスパースが1949に刊行した歴史の起原と目標で説かれている。
文化伝播論
各地の文化・文明の発展において、相互の文化の伝播を重視する考え方。アルフレッド・クロスビーが提唱したコロンブス交換や、ウィリアム・マクニールの『疫病と世界史』、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』などが有名。海域世界や交易研究など実証的な研究に支えられ、現在も旺盛に研究されている。近年では、ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』が文化伝播や環境論を取り入れている。
文明興亡論
ドイツの歴史学者シュペングラーが第一次世界大戦後直後に主著『西洋の没落』で提唱した。文明が栄枯盛衰することを主張して、西洋の没落を説いた。シュペングラーは8つの文明に分けたが、アーノルド・トインビーは21の文明に分類し、文明の応答と挑戦を提唱した。トインビーの文明論はハンティントンの『文明の衝突』に継承されている。
生態論・環境論
環境論は、アナール派の創始者のひとり、リュシアン・フェーヴルにより、環境決定論と環境可能論に分けられるが、いずれも歴史の展開に、地理上の環境が大きく影響しているとする考え方。ウィットフォーゲルは、四大河文明の成立理由を、大河の灌漑を管理する統治制度に求めた(水力社会論(英語版))。以降もアナール派のフェルナン・ブローデルの『地中海』や、『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイヤモンドなど、古気候学や考古学、海域世界や交易研究の進展、各地の実証研究の総合化の試みとともに、現在でも様々な研究が発表され続けている。生態論は、人類社会の進歩と環境要因が、どちらか一方が決定するのではなく、総合的に交わりつつ進化するものとする考え方。梅棹忠夫の『文明の生態史観』や、梅棹を批判的に継承した廣松渉『生態史観と唯物史観』などがある。
その他[ソースを編集]
ライプニッツ的歴史観
ドイツの哲学者ゴットフリート・ライプニッツの主張した楽観主義であり、すべては神の予定調和であり、不幸や不合理なことがあっても、それには理由があり、最終的には最善となるように企画されているという歴史観。