歩兵
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また個人が携帯出来る武器の火力が高くなり、ゲリラ戦や市街戦などの非対称戦争が増加する傾向から歩兵に高度に専門的な訓練を施した特殊部隊が各国で配備されつつある。
分類

歩兵は、作戦行動中は主に徒歩で活動する兵士の総称であるので、その装備や技能、運用形態や戦術的役割によっていくつかに分類ができる。
現代の分類

ここでは現代における師団旅団レベルにおける歩兵の基本的な分類を述べる。(Field Manual 100-5を参考)
軽歩兵(Light Infantry)
正規の歩兵に対して、装甲車両火砲などの装備が軽量である歩兵部隊。
空挺兵(Airborne Infantry)
航空機戦略的な長距離を迅速に移動し、空港施設に頼ることなくパラシュート降下で着陸が可能な歩兵を指す。交戦地域に展開した後は軽歩兵と同様の能力を発揮する。降下に高度な能力が必要で人員が限られる上、着地地点にばらつきが生じるため、特殊な作戦以外は、通常歩兵の補助的な役割でしかなくなっている。
空中強襲歩兵(Air Assault Infantry)
ヘリコプターなどの航空機で輸送され、交戦地域に速やかに展開・撤収する空中機動作戦が可能な作戦的、戦術的機動力を有する歩兵を指す。敵の支配地域に潜入し、後方連絡線を切断、敵部隊に対する奇襲破壊工作を実行できる。
レンジャー(Ranger Units)
特殊な作戦において運用されることを想定して訓練された歩兵部隊。組織によって意味付けは異なるが、精鋭歩兵と見做される事が多い。
機械化歩兵(Mechanized Infantry)
装甲車両を用いて地上を迅速に移動できる歩兵を指す。機甲部隊と同等の機動力を持つため、友軍の戦車部隊と連携して作戦を実施できる。


自動車化歩兵(Motorised Infantry)
非装甲の自動車で移動する部隊。現代の歩兵は原則として自動車化歩兵なので、単に歩兵とされることが多い。
現代に於ける代表的な歩兵の区分
ポイントマン
前方警戒を行いながら
部隊を先導する歩兵(斥候)を指す。
小銃手(ライフルマン)
小銃を主たる武装とした歩兵。小銃は歩兵銃とも呼ばれ、最も基本的な武器と言える。現代ではアサルトライフルが一般的。
衛生兵
戦闘において負傷兵に応急処置を施す兵士を指す。一般の歩兵と行動を共にするほか、作戦地域からやや離れた地点で待機する場合もある。純粋な戦闘員ではないが、自衛目的の武器を携行・使用することが認められている。
通信兵
戦闘中でも部隊外と通信するため、トランシーバーを携行した(中くらいの可搬型機器を背負っている)歩兵を指す。
狙撃兵選抜射手
戦闘において比較的遠距離から狙撃を行う歩兵を指す。特に狙撃用スコープ付小銃(狙撃銃)を持つ兵。選抜射手は一般の歩兵と行動を共にする狙撃手で、射撃に秀でた小銃手ともいえる。
機関銃手
分隊支援火器汎用機関銃で武装して、火力支援制圧射撃を行う歩兵を指す。
擲弾手
擲弾発射器火力支援を行う歩兵を指す。一般歩兵に随伴する場合には、小銃に固定式のグレネードランチャーを取り付けるか、専用の擲弾銃が用いられる。
対戦車特技兵(対戦車兵器手)
対戦車ミサイルロケットランチャー、携行無反動砲などの携帯式対戦車兵器を運用する歩兵を指す。
対空特技兵(SAM手)
FIM-92 スティンガー9K32 ストレラ-2などの携帯式地対空ミサイルを運用する歩兵を指す。
迫撃砲兵
迫撃砲を運用する歩兵を指す。迫撃砲は口径により複数種類が採用されていることがほとんどで、大口径のものほど、より上級部隊の管理下に置かれる。
歴史的な分類

歴史的には歩兵もさまざまな装備・編成で用いられてきた。
槍兵
もしくはそれに準ずる棒状の武器武装した歩兵であり、特に長槍兵などは騎馬に対抗する主力となった。古来から世界各地で見られる一般的な歩兵であり、近接戦闘における主力であった。しかし、銃剣の普及に伴って姿を消した。
弓兵
弓矢で武装した歩兵。クロスボウを装備する歩兵もこれに含む。これも古来から世界各地で見られる一般的な歩兵であった。主に遠距離から敵陣にを放って陣形をかく乱したが、大砲の発達によって姿を消した。
重装歩兵
甲冑・脛当て・を装備して防御力を向上させた歩兵で、密な戦列を組んで戦う。密集隊形のおかげで突破力と防御力は高いが、隊列を維持しての高速移動は苦手。古代ギリシャマケドニアファランクス古代ローマレギオンが有名。
戦列歩兵
マスケット銃と銃剣で武装し、戦列(横隊など)を組んで戦闘を行う歩兵である。近世ヨーロッパにおいて極端に発展し、戦闘における主役となったが、銃や砲の性能の向上にしたがって姿を消した。
擲弾兵
擲弾(手榴弾)を投擲する兵士。近世ヨーロッパで登場したが、当時のそれは危険が大きい割に効果が低かったため擲弾を使用する機会がほとんど無くなったものの、精鋭部隊の名誉称号として使われるようになった。現在では手榴弾は歩兵の一般装備と化しており、あえて言うならばグレネードランチャー対戦車ロケットランチャーを運用する歩兵がこれに当てはまる。
散兵
戦列を組まず、散開して遠距離射撃を担当する歩兵で、猟兵とも呼ばれる。現在では密な戦列を組むこと自体がなくなったため、散兵と呼ぶことはほとんどない。猟兵についてはドイツでは空挺部隊降下猟兵)や山岳部隊(山岳猟兵)、軽歩兵部隊の称号として用いており、フランス軍でも一部の部隊が猟兵を名乗っている。
部隊構成

歩兵部隊の編成は組織や時代によって非常にばらつきがあり一概には言えない。

基本的に現代の軍隊では二人から六人程度で構成されるが戦闘の最小の行動単位となり機関銃などの制圧火器がしばしばこの部隊に配備される。二個から三個の班から構成される分隊があり(分隊支援火器として制圧火器がこの分隊に配備される場合もある)、分隊が三個から四個ほど集まった部隊を小隊、小隊が三個から四個ほど集まった部隊を中隊とする。中隊の規模になってくると歩兵の人員数は100?250人程になり、歩兵の部隊における比率は60%から90%程度になってくる。中隊がさらに三個から五個ほど集まって大隊となり、大隊は部隊を支援するための火砲や車両などを装備し、おおむね少佐中佐といった士官が指揮を執る。その大隊を三個から四個ほど擁するのが連隊または旅団と呼ばれる。この連隊や旅団は大体1500?2500人程度の人員を抱え、中佐大佐が指揮を執り、支援として戦車隊や工兵隊なども部隊を構成する場合がある。この程度の規模の部隊になれば歩兵の比率は25%から60%程度になってくる。ちなみに旅団や連隊よりも大規模な師団という部隊の単位も存在する。

時代によっても歩兵の編成は変わってくる。例えば古代中国では卒、伍、隊、旅、軍というような編制の記述が兵法書にみられる。この影響からか近代の日本にも伍長、一兵卒、部隊、旅団というような名称があるように一部名残があるようである。
歩兵の能力

歩兵には非常に多岐にわたる実践的な能力が求められる。その歩兵がどのような任務につく部隊に所属しているか、またどのような適性があるのか、予算がどのていど充実しているのかなどによって大きくその教育内容などが変わるので、概略することは難しい。平均的な歩兵の能力について以下は述べる。

徒歩での移動能力に関しては歩兵は徹底的に訓練で鍛えられる。歩兵はしばしば50kg以上の装備を担いで、
車両が入ってこられないような険しい地形を突破する必要があるため、マラソンや山岳地域の行軍などで体力と強い足腰を鍛える必要性がある。歩兵だけにいえることではないが、歩兵の根本的な任務は徒歩で複雑な地形を走破、また隠密的に移動することであるので、特に重要な事項であるといえる。


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