正義
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ここでプラトンは、正義には個人の正義と国家の正義があると述べているけれども、そのあり方は基本的に一致するとされる[3]。個人の正義と国家の正義という一見異なるように思われる正義が一致するのは、プラトンによれば、国家は究極的には個人の集合体であり、個人の性格に由来しない国家の性格というものは存在しないからである[4]。まず国家の正義について見ると、国家の正義とは、民衆、兵士そして支配者がそれぞれの職分を全うすることであると定義される[5]。つまり、生活に必要な物を生産する民衆、国家を守護する兵士そして全体の監督にあたる支配者が、各人に割り当てられた仕事を果たすこと全体を指すのが、国家の正義という概念である。そこでは、「自分のことをするだけで、余計な手だしをしないのが正義である」と言われる[6]。次に個人の正義について見ると、それは国家の正義の縮小版であると理解することができる(あるいは国家の正義が個人の正義の拡大版であると理解することができる)。すなわち、魂および身体を監督する支配者としての知恵、魂および身体を外敵から保護する勇気、そしてそれ以外の能力がお互いの役割を侵犯せずに調和のとれた形で自己の責務を果たす節制、これらの3つの徳が実現するとき、個人は全体として正義に適った存在となる[7]。このように、プラトンは、自己に相応しい仕事や職分を果たすことが正義であると考えており、アリストテレスの正義論のような単なる財産関係・懲罰関係を超えた人生観と結びついている点が特徴的である。
アリストテレス

アリストテレスはプラトンの弟子であったが、プラトンのイデア論を厳しく批判したのみならず、正義論についても師と袂を分かつことになった。アリストテレスは、正義という概念をまず広義における正義と狭義における正義とに区別して、広義における正義とは徳全般の別称であるとした。他方で、狭義の正義概念については、さらにこれを2つに区別した。狭義における第一の正義概念は、配分的正義と呼ばれ、「各人に各人のものを」という後世において格言となったものである。この正義は、報償であれ罰であれ各人が各人に相応しいものを受け取ることを要求する。そして、この受け取る量は、各人の相応しさに比例して増加減少するため、配分的正義は比例的計算に服する(例えば、2倍働いた人は給料を2倍受け取るべきである、という価値判断はこの配分的正義に属する)。第二の正義概念は、矯正的正義と呼ばれ、ある人が自己に相応しいものを奪われたとき、あるいは自己に相応しくないものを持っているときに適用される。ある人が自己に相応しいものを奪われるときとは、典型的には例えば窃盗による財産減少が考えられる。逆に、自己に相応しくないものを持っている人とは、盗人がこれに当たる。
中世.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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近代

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現代

一方、正義のない状態では社会秩序が保たれないとの危惧から、1971年にアメリカの哲学者ロールズは「正義論」を著し、相対主義下での正義を再構築しようと試み、カントロックルソーなどの社会契約論に回帰する「公正としての正義」を主張した。

「公正としての正義」第一原理、各人には基本的自由に対する平等の権利があること。第二原理、社会的・経済的不平等は最も恵まれない人の利益を最大化するときにのみ許され(格差原理)、いかなる職務や地位につく可能性も全ての人に開かれていること(公正な機会均等の原理)

「無知のヴェール」の下で全ての人によって選択されるこれらの原理に適う制度の確立と、それによって統治される社会の安定性を説き、正義の規範理論を打ち立てようと試みた。

これをきっかけに正義に関する多くの論文が発表され、その勢いは「ロールズ研究産業」と呼ばれるほどで、今もその勢いは衰えず、彼が現代の正義の議論に対して与えた影響はとても大きなものであることがうかがえる。今日でも法哲学上で使われる正義は公正さに重きを置いており、一般に使われる正義とはややニュアンスが違う。ただし、その理論は演繹過剰のきらいがあり、実際の政策論議には妥当しないとも指摘されている[8]
脚注^ 『あいまいな言葉』有紀書房、1957年、146-148頁。 
^ Encyclopaedia britannica, "Talion, lex talionis".
^ プラトン『国家』368e2-3
^ プラトン『国家』435e1-3
^ 野村秀世『プラトンの正義論』東海大学出版会、2008年、260頁。
^ プラトン『国家』433a8-b1
^ プラトン『国家』441d12-e2
^ たとえば、松下圭一 『現代政治の基礎理論』(東京大学出版会, 1995年)

関連項目



社会正義

良心

義人

勧善懲悪 (イスラーム)

義 - an etymological interpretation of 義 and its correspondence to the German homonyms 'geracht'/'gerecht' (German)

外部リンク

(文献リスト)Justice
(英語) - PhilPapers 「正義」の文献一覧。










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