全体の構図としては、玉座に腰掛けた人物が剣と天秤を手にしている様子が描かれ、マルセイユ版タロットもウェイト版タロットも、構図としての大きな変更点はほぼ無い。
マルセイユ版タロットにおける「正義」とは姿かたちを持たず、カードに描かれる剣と天秤を持った女性は「正義」という概念の幻影的イメージの投影として捉えられ、ギリシア神話等をはじめ女神と少なからず関連性はあるものの完全に同一視されることは少ない。「正義」に描かれる象徴が一貫して訴えているのは相反する力同士の調和のとれた結合である。右手に掲げた黄金の剣はその持ち方から「武力」として振り回すのではなく「支配」の証として、王が杖などを掲げるのと同様に扱われていることを示す。また左手の天秤は、均衡を保っているにもかかわらず左右の受け皿の大きさを変えて描かれている。これは「公平」とは常に「左右対称」を示すものではないという基本概念に則ったもので、数学的な均衡よりも調和や機能的な美しさといった感性による均衡を示すことで「正義」という形の見えないものを表す要因となっている。また剣と天秤をもった女性の目は、そのどちらにも向けられること無く正面を見据えている。社会の価値観や個人の感情によって常に普遍とはいかない「正義」という概念を視覚的情報や感情に流されることの無いよう、右にも左にも(象徴学的に)向けられていないのである。尚、マルセイユ版での「正義」は8番に位置しているが、この「8」というアラビア数字は2つの○を一筆で書いた形であり、天秤の2つの皿を垂直に並べた形を容易に連想させる。
ウェイト版タロットに描かれている女性は、ギリシア神話の正義を象徴する女神・アストライアーないしその母・テミスがモチーフとされる。天秤はアストライアーの神話に由来する公正な裁きを意味し、剣は大天使・ミカエルが手にする断罪の証に由来すると言われる。
脚注[脚注の使い方]^ 日本のアレクサンドリア木星王の説。
^ 「黄金の夜明け団」の説だがかならずしも団の独創説ではない。
関連項目
正義の女神
外部リンク
⇒Iconography of Justice
表
話
ヴィスコンティ・スフォルツァ版 - マルセイユ版 - ウェイト版 - トート・タロット - カモワン・タロット
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0.愚者 - I.魔術師 - II.女教皇 - III.女帝 - IV.皇帝 - V.教皇 - VI.恋人 - VII.戦車 - VIII.[1]力 - IX.隠者 - X.運命の輪 - XI.[1]正義 - XII.吊された男 - XIII.死神 - XIV.節制 - XV.悪魔 - XVI.塔 - XVII.星 - XVIII.月 - XIX.太陽 - XX.審判 - XXI.世界
^ a b ウェイト版の場合。マルセイユ版では番号が逆になる。
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