拡大は欧州連合の政治展望において重要な議題である。欧州連合は「インナー6」と呼ばれる、共同体の設立に積極的な諸国によって設立された。当初共同体に対して懐疑的だったインナー6以外のヨーロッパ諸国が加盟に方針転換したのは欧州経済共同体の設立から10年が経過したのちのことであったが、その当時は共同体のほうが拡大に懐疑的な姿勢を見せていた。フランス大統領シャルル・ド・ゴールはイギリスの加盟がアメリカのトロイアの木馬となることを恐れ、イギリスの加盟に拒否権を行使した。ド・ゴールが大統領を退任したことにより、ようやくイギリスは3度目の加盟申請が認められた[1]。
イギリスと同時にアイルランド、デンマーク、ノルウェーが加盟を申請していた。ところがアイルランド、デンマークはイギリスとともに加盟を果たす一方で、ノルウェーは国民投票で反対され、このことは国民によって加盟が拒否された初の事例となった[1][2]。その後グリーンランドが1985年に共同体から離脱するも、冷戦の終結までにさらに3か国が共同体に加盟した[1][3]。1987年にはモロッコが加盟を希望し、このとき共同体の対象となる地理的な範囲が検討されたが、モロッコはヨーロッパの国ではないとして加盟が認められなかった[4]。
1990年になると冷戦が終結し、ドイツ再統一により東ドイツの各州が共同体に組み込まれた。また従来中立的な立場であったオーストリア、フィンランド、スウェーデンが新たに発足した欧州連合に加盟した[1]。その一方でスイスは1992年に加盟を申請したが、国民投票で欧州経済領域への参加に反対するという結果を受けて加盟のための協議が凍結され[5]、また再度加盟を申請していたノルウェーも再び加盟の是非を問う国民投票で反対された[6]。その後旧東側諸国や旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国を構成していた諸国が欧州連合への加盟に動き出した。そして2004年5月1日にこれらの10の国々が欧州連合に加わり、東西のヨーロッパの統合を示す出来事となった[7]。
2007年1月にブルガリアとルーマニアが、2013年7月にクロアチアが欧州連合に加盟し、欧州連合は28か国体制となった[8]。その後も欧州連合は西バルカン諸国の加盟を優先的に協議している。アイスランドは2009年7月23日に正式な加盟申請を行い、加盟候補国として承認されたが、2015年3月12日、加盟申請を取り下げた[9][10]。 コペンハーゲン基準によると欧州連合への加盟は、安定し、自由市場と、法の支配と人権を尊重する民主主義を有するあらゆるヨーロッパの国に対して開かれたものとされている。さらに加盟を希望する国はアキ・コミュノテールの受容やユーロの導入といった加盟国の義務を受け入れなければならない[11][12][13]。 2023年12月現在、トルコ、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、アルバニア、ウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びジョージアの9か国は正式な加盟候補国として認定されている[13][14][15][16]。 トルコは1980年代から加盟を希望しており、長く交渉を重ねてきたが、正式な加盟協議に入ったのは2004年のことだった[17]。 北マケドニアは2006年に加盟候補国となっている(当時の国名は「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」)。長らく隣国ギリシャとの間で国名改称問題を抱えており加盟に際する課題となっていたが、2018年6月12日に国名を北マケドニア共和国とすることでギリシャと合意し[18]、両国の議会承認等を経て2019年2月12日に改名が発効した[19]。2020年3月26日、EUは北マケドニアとの加盟交渉開始に合意した[20][21]。 モンテネグロは2011年10月にEUと本格的な加盟交渉が開始された[22]。2020年6月現在、該当するアキ・コミュノテール全33分野中33のすべての分野で交渉を開始しており、そのうちの3分野の交渉は暫定的に終了している[23]ことから、加盟候補国8か国のなかで最も交渉が進展している国といえる。 セルビアはボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の大物戦犯であるラトコ・ムラディッチとゴラン・ハジッチ アルバニアは2009年4月28日EUに加盟を申請し、2014年6月27日に加盟候補国として承認された[13]。2020年3月26日、EUはアルバニアとの加盟交渉開始に合意した[20][21]。 さらに2022年ロシアのウクライナ侵攻を受けて、2022年2月28日にウクライナが、3月3日にモルドバがそれぞれEUに加盟申請し[25]、6月23日、両国はEUの加盟候補国として承認された[14]。
今後の拡大
加盟候補国