欧州連合の言語
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しかしながらこの決定により欧州議会と欧州連合理事会で承認された法令はアイルランド語に翻訳され、またアイルランド語から翻訳された文書は欧州議会の総会や欧州連合理事会の会合において用いることができるようになった。なおこの規定は2007年1月1日より効力を発するようになった。アイルランド語をEUの公用語として翻訳や文書の発行にかかる費用は年350万ユーロ程度と見込まれている[17][13]。この規定は発効から4年以内に見直され、その後も5年ごとに再検討される。

アイルランド語は加盟国内においてあまり使用されていないEUの公用語であり、2006年の統計調査ではアイルランドの人口は424万人であるが、多少の知識を持つ者は166万人であるが、完全な母語としているのは、僅か4万から8万人の間とみられている。また北アイルランドでは、アイルランド語の知識が多少あると自己申告した者は(2001年国勢調査時)16万5000人である。さらに小規模ではあるがアイルランド語を話すコミュニティが世界中にあり、最もコミュニティの規模が大きいアメリカでは25,000人がアイルランド語を話すことができる。
英語

イギリスのEU離脱を受けて、英語が公用語から外される可能性があるとされている。イギリスの他には加盟国ではマルタアイルランドにおいて英語が公用語に規定されている国となっている。しかし、アイルランドではアイルランド語、マルタではマルタ語が第一公用語として制定されており、EUはその国が通達した第一言語のみを公用語とするという規定通りにいくと、イギリスのEU離脱により英語が公用語から除外されることになる。マルタにおいてはマルタ語が97%の母語であるが、アイルランドにおいては殆どの国民がEUに第一言語として通達されたアイルランド語ではなく英語を日常生活で使用している事や、英語は既にフランス語、ドイツ語と並ぶEUの作業言語となっているために、英語が公用語から除外された場合は問題となる可能性がある[18]
地方言語・少数言語

スペイン政府はバスク語カタルーニャ語バレンシア語ガリシア語についてEUにおける公用語の地位を与えることを模索してきた。先述の第2667回欧州連合理事会において、正式な作業言語以外にも加盟国によって承認された言語をEUのレベルにおいて限定的に使用することを認める決定を下した。欧州連合理事会では、規則1/1958において言及されている、加盟国の最高法規によって、または慣例的にその全土または一部の領土で国語として使用されている言語以外の言語については法令でその地位を定める、とした。このような言語を正式に使用することは、欧州連合理事会と使用を求める加盟国間での調整に基づくとされている[14]

ルクセンブルクの公用語であるルクセンブルク語や、キプロスの公用語であるトルコ語はいまだこれらの規定が適用されていない。
カタルーニャ語、ガリシア語、バスク語

カタルーニャ語、ガリシア語、バスク語はスペインにおける全国規模の公用語ではなく、スペインの憲法によって特定地域での共同公用語とされており、これらの言語は2005年6月13日の欧州連合理事会決議により、EUの機構において正式に使用することができ、スペイン政府はこの規定に同意した。

カタルーニャ語は数百万人の市民が話す言語であるが、その地位については議論されてきた。1990年12月11日、カタルーニャ語の使用は欧州議会決議[19]の定めるところとなった。

2005年11月16日地域委員会議長ペーター・シュトラウプはEUスペイン代表部大使カルロス・バスタレーチェ・サグエスとの間で合意文書が取り交わされ、その中でスペインの地域言語が欧州委員会の通訳を介してEUの機関で使用することが認められた[20][21]

2006年6月3日欧州議会事務局は、2か月前に一度拒否していたスペインの州からの提案である、欧州議会内でバスク語、カタルーニャ語、ガリシア語の使用を承認した[22][23]

2006年11月30日欧州オンブズマンであるニキフォロス・ディアマンドロスとEUスペイン代表部大使カルロス・バスタレーチェはブリュッセルにおいてスペイン市民が欧州オンブズマンに苦情を申し立てるさいに、バスク語やカタルーニャ語(バレンシア語)、ガリシア語のスペイン国内での3つの共同公用語の使用に合意する文書に署名した。この合意によると、翻訳する組織をスペイン政府が財政を負担して設立し、先の言語で苦情の翻訳にあたるとされている。またこの翻訳組織はオンブズマンの決定をスペイン語・カスティーリャ語から苦情の申立てのさいに使用された言語に翻訳する。なおこの組織が設立されるまでは苦情の申し立てに先の言語を使用することはできない。

2022年7月27日、スペイン政府はカタルーニャ語について、欧州議会の本会議で使用できるよう同議会に求めることで自治州政府と合意し、欧州議会に「技術的、財政的提案」も示して年内の実現を目指して取り組むとしている[24]
ウェールズ語、スコットランド・ゲール語、スコットランド語

先述の2005年6月13日決議で議論された議会の質問を受けて、イギリスのヨーロッパ担当閣外大臣ダグラス・アレクサンダーは同月29日に、イギリス政府は今のところイギリス国内のウェールズ語スコットランド・ゲール語スコットランド語などの言語に関して同様の規定を作成する計画はないと述べた。
欧州憲法条約における規定

欧州憲法条約では、起草された当時は21の言語(従来の公用語にアイルランドを加えている)をEUの公用語としており、これにルーマニア語、ブルガリア語、トルコ語の加盟3候補国の言語を付記していた(なおルーマニアブルガリアは2007年にEU加盟を果たしている)。これに関しては以下のように規定されている。

Article IV-448(2): This Treaty may also be translated into any other languages as determined by Member States among those which, in accordance with their constitutional order, enjoy official status in all or part of their territory. A certified copy of such translations shall be provided by the Member States concerned to be deposited in the archives of the Council.

(日本語訳)第4部第448条(2) 本条約は加盟国の憲法の定めにより、その領域の全部または一部において公用語の地位を享受する言語の中で、加盟国が決定したものに翻訳されることもある。この場合における翻訳の謄本は当該加盟国により作成され、閣僚理事会において保管される。

欧州憲法条約は全加盟国により調印されたものの、その批准過程においてフランスとオランダでの国民投票で拒否されたため発効が断念された。
移民の言語.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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移民が母語としている言語はEU機構およびEU域内においては正式な地位や認証が与えられておらず、またEUの言語教習プログラムの対象となっていない。加盟国政府または地方政府において、移民に対する受入国の言語習得支援が実施されている。
手話

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およそ1000人に1人が国内で通用する手話を第1言語としているが、第2言語として使用している者はさらに多い。加盟国の増加により手話の認識にさまざまな形態が出ることになり、たとえばベルギーにおいてはフラマン手話 (VGT) とフランス手話 (LSFB) 、イギリスではイギリス手話 (BSL) がある。また北アイルランドではアイルランド手話 (ISL) と北アイルランド手話 (NISL) があり、両者とも公用語として認知されている。


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