また委員長は欧州連合の内外において委員会を代表する。たとえば委員長は欧州理事会を構成する1人であり、また欧州議会や閣僚理事会における会議にも出席する。欧州連合の外部に対しても、委員長は連合を代表して主要国首脳会議に出席している[32]。ただし外交において、委員長は外務・安全保障政策上級代表や欧州理事会議長などの役職と重複していることがある[35]。
ドロールが就任してからは委員長職が大統領制のような性格を持つようになっていき、強力な委員長と有能な官僚はほとんど制止できなくなっている。しかしながら委員会の外部では、委員長は欧州理事会と欧州議会の支持に依存している。ドロールはその任期中において欧州議会の権限を強化し、欧州理事会を構成する人数を増やしたことから両者の支持を受けることができた。ところが現在では加盟国が増え、たとえ委員長がすべての加盟国を満足させようとするものであっても、しだいにすべての加盟国からの支持を得ることが難しくなってきている。委員会が欧州議会に対して解散や選挙の実施を行なうことができないにもかかわらず、欧州議会もまた委員会に対する権限が強くなり、また委員会の提案を否決することができるものになっている[36]。
委員長室はブリュッセルのベルレモン・ビルの最上階にある。委員長は委員長官房から助言を受けている。このような要因が委員長を外部から孤立させている[37]。機構内部においてその強大な権限や象徴性から、欧州委員会の官僚にとって委員長は神のような地位を持っている[38]。委員長は法務局や委員会事務局を管轄する。法務局は法制上の専門的事項に関する法案を却下する権限を持ち、委員会事務局は会議やその議題を準備し、議事録をまとめる組織である。これらを管轄することによって委員長は委員会を指揮する際の政治手段を手にすることになり、また委員長職に強力な影響力を持たせることにもなる[39]。 上述のように委員長が強大な影響力を持つようになったものの、フランス、イタリア、イギリス、ドイツなどの規模の大きい加盟国が委員長の任務を押さえ込もうとしている。このことが欧州理事会議長の常任化につながっていった[40]。欧州理事会議長が常任化されることで欧州委員会委員長との内部対立につながりかねないという懸念があるが[41]、この2つの役職の兼務について想定されることがある。欧州理事会議長は加盟国の首相など国内の役職を兼ねることは禁止されているが、ヨーロッパの機関の役職との兼任は制限されていない。つまり欧州理事会に出席する欧州委員会委員長が欧州理事会議長に任命されるということがありえるのである。 2004年現在で委員長の俸給は266,530ユーロである[42]。委員長には公邸や専用航空機は用意されていないが、住居手当、運転手つきの専用車、およそ20人の職員が付けられる[43]。
欧州理事会議長との関係
待遇
委員長の一覧/自由民主G
代委員長出身国所属グループ所属政党委員会期在任期間備考
001ヴァルター・ハルシュタイン
Walter Hallstein 西ドイツキリスト教民主グループドイツキリスト教民主同盟(CDU)1?1958年1月1日
- 1962年1月9日7000900000000000000?9年 + 180日
2?1962年1月9日
- 1967年6月30日
002ジャン・レイ
Jean Rey ベルギー自由主義グループ自由改革党(PLP)3?1967年7月2日
- 1970年7月1日7000200000000000000?2年 + 364日
003フランコ・マリア・マルファッティ
Franco Maria Malfatti イタリアキリスト教民主グループキリスト教民主党(DC)4?1970年7月2日
- 1972年3月1日7000100000000000000?1年 + 243日
004シッコ・マンスホルト
Sicco Mansholt オランダ社会主義グループ労働党(PvdA)5?1972年3月22日
- 1973年1月5日289日
005フランソワ=グザヴィエ・オルトリ