欧州委員会委員長
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具体的には、あまり大きな発言力を持たない加盟国からも支持を得ていることや候補者の出身国がユーロ圏シェンゲン圏に含まれていることが挙げられ、またフランスは候補者がフランス語に堪能であることを求めている[22][23]

委員長の指名には、大国出身者の次は小国出身者、左派系所属の次は右派系所属とする合意があるのではないかという仮説があり、実際にロイ・ジェンキンスからジョゼ・マヌエル・バローゾまでそのような法則にしたがっている。しかしながら実際には政治的な対立や加盟国間の連携で委員長が選ばれてきている。たとえばドロールの委員長選出のさいにはクロード・シェイソンを委員長とする案がフランスとイギリスとの間で合意できなかった経緯があり、サンテールの委員長選出についてもジャン・リュック・デハーネを委員長とする案にイギリスが反対したことを受けた妥協の産物であった。またロマーノ・プローディの選出は、フランスとドイツがヒー・フェルホフスタットを推していたことに対して反発した13か国が連携して支持した結果であった[24]
選挙詳細は「欧州議会議員選挙」を参照

2008年2月にバローゾは委員長の民主的正当性について、理論上は首相と同じ正当性を持つとされていたが、実際にはそうではないとして問題があるということを認めた。とくに欧州議会議員選挙における投票率の低迷、つまり「ヨーロッパ規模での政治」という考え方が市民のあいだで欠如していることが委員長の民主的正当性に疑念をもたらしているのだが、これに対して市民が投票のさいに委員長候補者を示されていれば、近年の欧州議会議員選挙の投票率は上昇していただろうという分析がある[25]

欧州憲法条約では、委員長の指名にあたって欧州理事会は直近の欧州議会議員選挙の結果を考慮しなければならず、さらに欧州議会は欧州理事会が指名した委員長候補を、たんに承認するのではなく、選出するとされていた。これは欧州議会の会派に委員長候補を立てさせ、欧州理事会は選挙で勝利した政党の候補を指名するというものとして考えられた[26]。この方法は2004年に一部が実際に行なわれ、欧州理事会はその年の選挙で最多得票を獲得した政党に所属する候補を委員長に指名した。ところがその選挙で実際に委員長候補を立てていたのは欧州緑の党だけであり、欧州緑の党はこの選挙において、参加する各国の政党での合同の選挙運動を展開した初めての欧州政党であり[27]、このときはダニエル・コーン=ベンディットを委員長候補としていた[26]。これに対してほかの欧州政党は内部に抱える事情から委員長候補者を示すことができず、欧州人民党が数名の人物を委員長として望ましいとしていた程度であった[28]

欧州憲法条約は批准手続きが断念されたが、これらの規定は2009年12月に発効したリスボン条約に若干の修正を加えながら引き継がれた。リスボン条約では2009年の選挙で欧州政党が候補者を立てるために、欧州政党の役割を強める内容が盛り込まれた[29][30]欧州自由民主改革党は2007年10月の党大会で、合同選挙運動で委員長候補を立てるという考えを示していた[31]
任期

委員長は再任が可能で、任期は欧州議会議員選挙の6か月後を起点とした5年間である。この起点は欧州連合条約で調整されたものであり、欧州議会議員選挙は5年ごと、6月に実施される[32]。これによって、上述したような欧州政党が委員長候補を立てるということが可能となっている。

欧州議会は不信任を決議することによって委員長と委員会を総辞職させることができる。過去に欧州議会が不信任を決議したことはないが、1999年に予算案をめぐって当時のサンテール委員会に対して不信任を決議するという事態が起こりそうになったということがある。実際にはサンテール委員会が自ら総辞職したため、不信任が決議されることはなかった[33]

また欧州連合条約第15条第5項では、欧州理事会が妨害行為や重大な非行を理由に委員長の任期を終了させることができるとしている。
権能

欧州委員会委員長は欧州連合においてもっとも強力な権限を持つ地位であり[1]、すべての法律の提案を行い、その執行を確保する責任を負う欧州委員会を統率する[1][34]。委員長は任期中における委員会の政策方針をまとめるが、欧州議会が同意しない限りは正式に政策を唱えることができない[1]

委員長の任務は委員会を主導し、委員会と連合全体の方向性を示すことである。委員長は委員、委員長官房、各委員の官房を招集して会議を開き、議長を務める[1][32]。また委員長は個別の委員を解任することができる[32]。機関としての委員会の業務は連帯責任の原則に基づいているが、権限の点において委員長の行為は「機関における首席」というものを越えている[32]。委員長の任務は内閣を主導する首相のそれに類似している[1]

また委員長は欧州連合の内外において委員会を代表する。たとえば委員長は欧州理事会を構成する1人であり、また欧州議会や閣僚理事会における会議にも出席する。欧州連合の外部に対しても、委員長は連合を代表して主要国首脳会議に出席している[32]。ただし外交において、委員長は外務・安全保障政策上級代表欧州理事会議長などの役職と重複していることがある[35]


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