次長検事
[Wikipedia|▼Menu]





検察官の職責は、検察庁法第4条で、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う

と規定されている。

また、検察庁法第3条の規定により、検察官は、検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事に区分される。
地位

検察官はそれぞれが検察権を行使する独任制官庁である。検察庁は検察官の事務を統括する官署にすぎない。検察官は刑事裁判における訴追官として審級を通じた意思統一が必要であることから、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統に服する(検察官同一体の原則)。

検察官が事務の途中で交代しても、同一の検察官が行ったと同じ効果が発生する。また、検察捜査の殆どは地方検察庁の検察官が直接行うため、上級庁(最高検察庁と高等検察庁)は、地方検察庁から報告を受けて了承や指示はするものの、上級庁自身が逮捕をして直接捜査を担当することはほとんどない(例外として、1957年東京高等検察庁が「2人の代議士を収賄容疑で召喚」と誤報した読売新聞記者を名誉毀損罪で逮捕・取調べをした事件(売春汚職事件)と、2010年に最高検察庁が特捜部長・特捜副部長・主任検事を証拠偽造罪犯人隠避罪で逮捕・取調べ・起訴した事件(大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件)などがある)。

検察官は、例外を除き起訴権限を独占する(国家訴追主義)という極めて強大な権限を有し、刑事司法に大きな影響を及ぼしているため、政治的な圧力を不当に受けない様に、ある程度の独立性が認められている。端的なものが法務大臣による指揮権の制限である。

起訴した事件に対して裁判所無罪判決をだすのは稀(0.1%ほど)なため、実質的に有罪無罪を決めているのは検察ではないかという識者もいる。

検察庁は、司法権立法権行政権の三権の内、行政権を持つ行政に帰属する官庁である。検察庁は、国民の権利保持の観点から、俗に準司法機関とも呼称されている。日本国憲法第77条では「検察官は、最高裁判所の規則に従わなければならない」と規定されている。

検察庁は行政機関であり、国家公務員法の規定に基づき、その最高の長である法務大臣は、当然に各検察官に対して指揮命令が可能だが、この指揮権については検察庁法により、「検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」(検察庁法第14条)として、具体的事案については、検事総長を通じてのみ指揮ができるとした。前述の検察官同一体の原則から、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統として、検察権は行政権に属して統一されている。

検察官の定員は、2022年(令和4年)、検事(検事総長1名、次長検事1名、検事長8名を含む)1954名、副検事800名で、検察官合計2754名である。

身分証明書は制定されていないので、必要な場合は側近の検察事務官が代理で「検察事務官証票」を示す。公務執行の際は必ず検察官徽章(秋霜烈日章)を身に付ける。
報酬

検察官の給与については、検察官の俸給等に関する法律に基づき、俸給が支給される。
職務権限
捜査

検察官は訴追機関であると同時に捜査機関でもある。実際には補充的な捜査にとどまることが多いが、検察庁法第6条や刑事訴訟法第191条の規定に基づき、大型経済犯罪や政界絡みの汚職事件等、単独で犯罪捜査を行う場合もある。

ただし、警察とは異なり、実力をもって「犯罪を予防鎮圧する(行政警察活動)機能」は与えられていない。そのため、専ら行政警察活動を適切に遂行し得るために警察官に付与されている武器の携帯使用、職務質問、立入権限、保護、交通規制等の権限は保有しない。
検察官の捜査権限の歴史

戦前、検察官は捜査を主宰するとされ、強い指揮権限が認められていた。もっとも、法の建前は別として、現実には通常の捜査は警察が主として行い、検察官は補充的な役割を担っていた。

警察と検察はその所属官庁を異にし(警察は内務省、検察は司法省)、検察官の指揮権を実行あらしめるための身分上の監督権を与えなかったこともあって、検察官の指揮命令の徹底を欠き、現実には捜査の二元化をきたしていたともいわれている[1]。戦後においては、公訴機関と捜査機関を原則としてそれぞれ分離し、人権保護が図られた。

その結果、警察は第一次捜査機関としての役割を担うこととなり、検察官と対等・独立の協力関係を確立したが、公訴提起・公判維持の観点から検察官には依然、一定の指揮権限を与えられている。(検察が不起訴にしてしまえば、いくら警察が証拠を固めても、有罪にはできず、反対に検察が強引に起訴しても、警察が証拠集めを怠れば、公判維持はできない)
検察官による捜査の指示・指揮

検察官は警察官等に対して、一般的指示権、一般的指揮権、具体的指揮権を有するほか、正当な理由がなくこれらの検察官の指揮に従わない場合、検事総長、検事長、検事正は従わない司法警察職員の懲戒の請求を公安委員会に対してすることができる。検察官自身には懲戒権限はない。
一般的指示(刑事訴訟法第193条1項)
検察官が管轄区域の司法警察職員に対し、公訴の遂行を全うするために行う一般的指示である。これは公訴提起及び維持に関わる限度での一般的準則を定めるもので、例えば、捜査書類書式例などが検事総長名で指示されている。これはあくまでも一般的準則を定めるものであり、捜査を監視・監督するわけではない[2]。また、一般的指示により、個々の事件捜査を直接指示することがないよう、昭和28年7月の第16回国会において付帯決議がなされている。
一般的指揮(刑事訴訟法第193条2項)
検察官が管轄区域の司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮である。これは2つ以上の捜査機関が一つの事件を捜査する場合、その間の調整を目的としたものである[3]。同時並行で競合して捜査する場合に、捜査の協力を求めるために必要な範囲で行われるものである一般的な調整権限である。
具体的指揮(刑事訴訟法第193条3項)
検察官が自身が独自に捜査を行う場合に、検察官の責任において司法警察職員を指揮して独自捜査を補助させるものである。補助命令とも呼ばれる。
懲戒・罷免の訴追(刑事訴訟法第194条)
司法警察職員が上記、検察官の指示、指揮に正当な理由なく従わなかった場合、その管理者、懲戒・罷免権者にその訴追を求めることができる[4][5][6]。ただし、検察官個人には司法警察職員を処分する権限はない[2]。「懲戒処分#司法警察職員に対する懲戒手続の特例」も参照
公訴の提起

公訴は原則として検察官が行う(国家訴追主義・起訴独占主義、刑事訴訟法247条)。公訴を提起することを一般的に起訴と呼ぶ。「起訴」も参照

犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないと検察官が判断した場合には、検察官は公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法248条)。これは起訴便宜主義と呼ばれ、訴追を必要としないと判断された事件については起訴猶予処分(不起訴処分の一種)にすることができる。
起訴独占主義の例外
準起訴手続

起訴独占主義の数少ない例外として準起訴手続(刑事訴訟法262条?269条)がある。

これは、刑法破壊活動防止法(破防法)、団体規制法(オウム規制法)における公務員の職権濫用などの罪について検察官が公訴を提起しない場合に、その罪の告訴・告発者が不服なときに裁判所に付審判を請求できる制度で、付審判の決定があったときは、公訴の提起があったものとみなされる(刑事訴訟法267条)。

またこの時、裁判確定までの検察官としての職務は、裁判所が指定する弁護士(特別検察官、指定弁護士)が務めることとなり、この職務に当たる弁護士はいわゆる「みなし公務員」となる(刑事訴訟法268条)。
検察審査会の議決に基づく強制起訴

2009年(平成21年)5月21日から、検察官が不起訴にした事件で検察審査会が起訴議決制度において起訴相当を2回議決した場合も、公訴が提起されたものとみなされ、指定弁護士が特別検察官として公訴・公判を維持する強制起訴の制度が設けられた。
訟務
刑事訴訟

検察官は刑事裁判に訴追側当事者として参加し、訴訟行為を行う。詳細は「公判」および「公判前整理手続」を参照
刑事訴訟以外

人事訴訟において訴訟担当者として被告となる場合がある。

訟務検事として行政訴訟国家賠償請求訴訟で国の代理人を務めることもある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:76 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef