機長
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航空法上の機長

航空法では機長(英訳は pilot in command)と呼び、小型機・大型機等で名称上の違いはない。

自家用飛行でも自家用操縦士が、使用事業でも事業用操縦士が機長となる。

航空運送事業において、操縦に2人を要する航空機の機長は定期運送用操縦士の免許が必要であるが、1人で操縦できる航空機は事業用操縦士であっても機長となれる。

ただし、航空運送事業の機長は単に定期運送用操縦士等の技能証明を受けているだけでは足らず、小型機を除き機長認定が必要である。

責任者として航空機内において大きな権限が与えられており、安全阻害行為を行った乗客に対し拘束や降機の命令ができる[7][注釈 3]。また緊急時ならば航空管制が行われていない状態でも離陸を決定[注釈 4]できるなど飛行の判断において高い権限を有する[8]
機長認定

日本の場合、航空運送事業の一定以上の大きさの航空機に乗り組む機長は、必要な知識及び能力を有することについて国土交通大臣の認定を受けなければならない[9]

機長認定は事業者や型式ごとになされ、初期認定審査と、所定の定期審査及び訓練がある。機長資格を維持するためには審査・訓練を受け続けなければならない[注釈 5]
審査

具体的には次の事項に関して審査が行われる。1. 航空機の運航に関する次の事項に係る知識及び能力イ 出発前の確認ロ 航空機の出発及び飛行計画の変更に係る運航管理者の承認ハ 航空機乗組員及び客室乗務員に対する指揮監督ニ 安全阻害行為等の抑止の措置、危難の場合の措置その他の航空機の運航における安全管理2. 通常状態及び異常状態における航空機の操作及び措置

上記の1.に関する審査は路線審査、2.に関する審査は技能審査と呼ばれ、それぞれ個別に行われる。
アメリカ、他国

米国では基本的に航空会社の社内審査により機長資格を認定しているが、初期審査時には国の運航審査官が同乗する。

その他の国でも概ね、上記と同様の制度が取られている。
他の輸送機関の長との違い

現代の航空機は最高指揮者である機長が自ら操縦することが多い。航法装置の発展していなかった時代には大型機の『機長』とは爆撃手や航空士であった。多くの軍隊[注釈 6]では副操縦士として経験を積み指揮操縦士へ昇格、その後は機長である航空士や爆撃手になるというキャリアパスが一般的であった[注釈 7]。このためノルデン爆撃照準器のように自動操縦装置と連動し、爆撃行程に入ると操縦が爆撃手に移管される照準器も利用されていた。

現代では航法装置やオートパイロットの進化により自動化されたため航空士は民間航空機には乗り組んでおらず、自動化しきれない部分も含めて航法の総合的判断は操縦士が行うのが一般的である。哨戒機救難機などでは、任務に関する専門的な教育を受けた搭乗員が指揮操縦士と階級が同じ場合、機長扱いになるため『任務機長』とも呼ばれる。また機長ではなくても専門的な判断において指揮操縦士よりも命令優先権がある。海上自衛隊では戦術航空士(哨戒機)や救難航空士(救難機)が任務機長として戦術的な判断を下し、指揮操縦士は任務機長の指示に基づいて航路を設定する。

なお航空機以外では最高指揮者が操縦するとは限らない。

船舶

小規模な船舶(ヨット)では『船長』(: sea captain)が操縦者であることも多い。このように最高責任者と操舵手が兼任の場合、また軍艦の場合は『艇長』(: skipper)とも称される(英語では区別なくcaptain)。

セーリング競技では操舵と最も大きい帆を操作する者がスキッパーと呼ばれる[10]

大型船の場合、船長は他の乗組員への指示など指揮に専念し、個別の業務は操舵手や航海士などの専門職員が担当している。

漁船では船長ではなく漁労長が責任者。

水先区と呼ばれる水域では船長に代わって水先案内人が船員に直接指示を出す。


列車

通常、列車の長は車掌である。ただし、これは業務上の指示命令系統上の取扱いであって、職制上は運転士が上の場合もある。運転指令所からの指示は車掌が受け、それを車内電話や無線で運転士に伝える。ワンマン運転の場合は運転士が長となる。



宇宙船

有人宇宙船の場合も最高責任者は船長と呼称するが、英語ではキャプテンではなく司令官: Commander(CDR))である。


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