機械式時計
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また1510年ごろ、ニュルンベルクの錠前職人ペーター・ヘンラインゼンマイを発明し携帯できるようになった。

1583年ガリレオ・ガリレイは、振り子の周期が振幅によらず一定であること(正確には振幅がごく小さい場合に限られる)を発見し、振り子時計を思いついた。1656年クリスティアーン・ホイヘンスは、サイクロイド曲線を描く振り子および振り子に動力を与える方法を発明し、振り子時計を作った[10]

1654年ロバート・フックはひげゼンマイの研究を行い、それが振り子と同じく一定周期で振動することを発見し、1675年、ホイヘンスはこの原理を利用した懐中時計を開発した。18世紀初頭に入ると時計技術の進歩はさらに進み、ジョージ・グラハムによってシリンダー脱進機が発明され、彼の弟子であるトーマス・マッジはレバー式脱進機を発明した[11]

なお中世ヨーロッパでの時計の意義は主に神に祈りを捧げる時を知るためのものであった。ジョン・ハリソンが開発したクロノメーターH5

大航海時代に入ると、天測航法および計時によって現在位置の経度を知るためには、揺れる船内に長時間放置しても狂わない正確な時計(クロノメーター)が必要となった。時刻にして1分の誤差は、経度にして15(1/4、赤道上で28km)もの誤差となり、この誤差が遭難や座礁につながるという事故が多発したためである。1713年、イギリス政府は「5か月間の航海で誤差1分以内」という懸賞条件に2万ポンドの賞金をかけ[12]1736年ジョン・ハリソンが懸賞条件に見合う時計を完成させた。しかし、ハリソンが単なる職人だったためか、イギリス議会はいろいろと難癖を付けて賞金を払わず、40年に渡って改良を重ねさせた。ハリソンはジョージ3世の取りなしがあってようやく賞金を手に入れられたが、それは彼の死の3年前であった。アブラアム=ルイ・ブレゲが1795年ごろに製作した置時計(チューリッヒバイヤー時計博物館所蔵)

時計制作の歴史に革命を起こしたのが天才時計師として名高いアブラアム=ルイ・ブレゲ(1747年 - 1823年)であり、彼によって時計の進歩は200年早まったとされる[13]。ブレゲはスイスヌーシャテルで生まれ15歳でフランスに渡り時計作りの研鑽を積み、以降フランスを中心に時計制作を行い、トゥールビヨン、永久カレンダー、ミニッツ・リピーターなど、現代の機械式時計にも用いられている画期的な発明を数多く行った。ブレゲの顧客にはフランス国王ルイ16世ナポレオン・ボナパルトイギリス国王ジョージ3世ロシア皇帝アレクサンドル1世などがおり、当時の最高権力者たちはこぞって彼に時計制作を依頼していた。ブレゲがその生涯に制作した時計は約3,800個と言われ、数々の傑作を生み出したが、そのなかでも最高傑作として名高い逸品が、王妃マリー・アントワネットの注文に応じて制作された懐中時計「マリー・アントワネット」である。詳細は「アブラアム=ルイ・ブレゲ#マリー・アントワネット」を参照

その後、機械式時計は、精度や携帯性を求めて様々な改良が施された。また、この17 - 19世紀初頭は、職人の徒弟チームによる手工芸的な少量生産から、いかに大量生産で高精度の時計を作れるか・定期的な保守を誰でもできるかという要求により改良がなされていった時代である。ぜんまい動力の掛かる駆動部の歯車は、なるべく均一な力がかかるように歯車の歯数を互いに割り切れないようにする工夫もなされた。気温によって振り子の長さやひげゼンマイの弾性が変化することも精度に影響するため、20世紀初頭に熱膨張率の小さなインバー合金、温度による弾性率の変化が小さなエリンバー合金が発明され、大きな貢献を与えた。各種あった脱進機も、現在のアンクル脱進機にほぼ絞り込まれていった。
20世紀

20世紀に入ると、動力として電動機が使われるようになった。当初は調速機構を在来機械式時計と同じくしながら、動力源をぜんまいの代わりに電動機としたのみであった。電気式時計はクォーツ時計が一般化する以前に用いられ、アナログ式では電源周波数に同期して回転するサーボモータを使ったり、デジタル式では電源周波数から1秒毎のパルスを得て駆動していた[注 2]

さらに、第二次世界大戦後には、小型置時計や腕時計の分野で、電気の安定にトランジスタを使ったトランジスタ時計、調速機にRC発振回路を使った時計、音叉を使った音叉時計などが開発されたが、一般向けの実用時計としては水晶振動子を使ったクォーツ時計、実験施設などの高度な計時装置としてはセシウム原子の振動を利用した原子時計など、新たな高精度な時計の出現によりほとんど姿を消した。世界初のクォーツ腕時計セイコーアストロン(35SQ)

20世紀前半にクォーツ時計が開発され、1969年にはセイコーが世界初のクォーツ式腕時計アストロンを発売した。


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