本作品の制作に当たっては、「劇場版3つの誓い」なるものが発表された。それは、「娯楽の王道をいくこと」、「主役でありながらOVAでの活躍が少なかった遊馬と野明が大活躍すること」、「レイバー対レイバーの戦いを描くこと」である。詳細は機動警察パトレイバーの項を参照。
しかし監督の押井は「誓いは聞いていたが、映画を作り始めたらすべて忘れていた」という[3]。
近未来の東京を強く演出するため下町的雰囲気の残る場所に対する綿密なロケハンが行われ、松井刑事たちが帆場の痕跡を求めて東京を巡るシーンなどに結実し、近景の下町と遠景の超高層建築とが対比されている[要出典]。
押井は、制作において予算もスケジュールもなく四苦八苦したと語っている[3]。例えば松井のシーンにて、本来ならば活劇だが完成に間に合わせるには静的なサスペンスシーンで尺を稼ぐ必要があると考え、しかし実際にロケハンした結果そちらの方が映画的に面白いだろうと思い、アクションは人に任せるつもりだった[3]。映画のラストも方舟が崩壊するシーンで終わる予定だったところ、零式を活躍させて欲しいと依頼があり、割り当てに苦心したと明かす[3]。
帆場暎一についても、押井は「実はいなかった」というシナリオを考えたが、脚本の伊藤に猛烈に反対されている[3]。このことに対し伊藤は「映画の次元は上がるが、観客が混乱する」としてその理由を挙げている[3]。 プロデューサーの鵜之澤伸によれば、元々はテレビシリーズの企画が断念したことから始まり、のちにテレビシリーズを制作するためにパイロットフィルムに近い形でOVAを作り、その成功をもってあらたにテレビ化を打診したところスタッフの反応が悪く、押井からは「テレビシリーズはスタッフがボロボロになるから、その前に劇場版をやりたい」と断られたという[3]。 同プロデューサーの真木太郎によれば、OVAのヘッドギアへの印税を払うために自分が押井に劇場版を頼んだのがきっかけであるという[3]。 脚本の伊藤和典は、初め押井は劇場版に乗り気じゃなかったが、車の移動中にアイデアを思いつき、その時には本作品の骨格が出来ていたと話す[3]。 これらに対し、押井は鵜之澤と真木の話に異を唱え、OVA6本の監督後はプロデューサーの厳命で現場に触れさせてもらえず、自分としてはパトレイバーは終わりだと感じていたと明かした[3]。また劇場版についても「最後の打ち上げ花火」として鵜之澤から持ち掛けられており、テレビシリーズの話は聞いていないと語っている[3]。 作画監督の黄瀬和哉の手により、劇中キャラクターの作画はキャラクターデザインの高田明美の絵柄から遠ざかり、目を小さく描き、口元や頬の下に影を描くなど、OVAシリーズのアニメ的な絵と大きく異なる写実的なテイストが加えられた[注 1]。これについて高田は「アニメは共同作業なので仕方ない」と答えている[4]。本作品に続く劇場版2作目ではそうした作画の傾向がさらに推し進められ、高田も当初よりそれを考慮してデザインをあげたという。 また黄瀬は、本作品にて時間のかかっていた動画を、1コマや2コマから3コマにすべて打ち直した[3][注 2]。リアルなスタイルの作品では、1?2コマでは滑らかなぶん力が抜けるためとし、押井は「1つ勉強になった」「大英断」と評価している[3]。 監督の押井は、本作品の最大の山場を「松井と片岡が東京を歩き回るシーン」と語り、「キャラクターでなく、東京の街そのものを見せる」ことに重点を置いていた[5]。 本作品で使われた手法の1つに“カメラを遅く動かす”ことがあり、これは背景の重さを見せ印象を強めるためのもので、押井はスタッフに対し「とにかく重さが大事」と念を押し、質感に関しても重視していた[5]。
経緯
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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