機動警察パトレイバー_2_the_Movie
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総製作費は4億円[1]。当初は押井の出した制作費にバンダイ側が「押井さんはスタジオを潰すんじゃないかと言う位にかき回す。本気で4億で作らせたらI.G.の将来に関わるから3億で作った方がいい」と難色を示した。しかし、石川は「押井監督のビジョンを壊す方が怖い」という思いから、I.G.の関連会社「イング」から5千万円を出資し、権利を獲得した。アニメーションの制作会社が作品に出資して、権利を獲得して、契約や記録を残しつつ版権事業を自ら手掛け、アニメーション制作会社のブランドイメージを確立するのは当時としては画期的だった[3]
CG

CG技術が未発達のころに制作された本作品では、劇中でコンピュータにより生成され出力される画面をCGを用いて描く試みが行われた。シリコングラフィックスのIRISなど、1992年当時に入手可能な最先端のCGワークステーションが導入され[要出典]、最終的なレンダリングはシェーディング済みの3DCGを投影した2DCGとして行われた。出力されたCGはアナログで制作したアニメパートへのはめこみ合成の素材として用いられた。

作中に66カットのCGシーンがある。しかしCGを売りとする意向はなく、押井の「CGは一素材として単独で使わないでほしい」[4]「CGはもう特別なものではなく、普通に生活の中に入っている」[5]という意向から、使い方は「画面の違和感を無くすため補正をかける」「背景の動画に使う」等高密度な志向ではなく[5]、仕上げの段階で他の映像と合成したり[4]、わざと画像を荒らす用に指示している[5]。理想として「CGがCGらしくみえない」ことを目指した[4]

例としては、物語冒頭のレイバーのシミュレーション画面、戦闘機のHUD、航空レーダーなどがある。戦闘シーンでは、現実の戦闘シーンの様にノイズを入れたりした[4]
音楽

押井は川井に「東南アジアの民族音楽みたいな音色とメロディ」「南雲しのぶの愛のテーマ」「金管楽器はなし」「弦楽器の重低音」を4つの柱にするように注文して、6曲のデモテープを制作した。それは後に「機動警察パトレイバー2 the Movie PRE SOUNDTRACK」としてリリースされた[6]

同じ曲をアレンジしつつも何度も使用するため、前作と違ってバリエーションが少なくなった[6]

川井の一番のお気に入りはオープニングテーマで使用された「Theme of PATLABOR 2」である。押井・音響監督の浅利と相談なしで、川井が勝手に制作したのが採用された。川井は「エンディングもこの曲のアレンジにしようかと思った」と振り返っている[6]
ロケ地

「ランドマークタワー」「警視庁本庁舎」「東京都庁」などのビルや「横浜ベイブリッジ」「勝鬨橋」「日本橋」「永代橋」「佃大橋」等の破壊される橋は、実際の姿で登場する。

時代設定が2002年の本作であるが、自衛隊攻撃ヘリの飛行シーンで頻繁に登場する中央区佃の高層マンション群「リバーシティ21」の一部で、2000年に竣工した最も高層の2棟を含む北ブロックが更地になっているのが確認できる。これは本作の劇場公開が1993年のためである。
作品解説

監督の押井守は『西武新宿戦線異状なし』や『機動警察パトレイバー』OVA第1期ですでに、自衛隊のクーデターをモチーフとした作品を手がけている。また、レイバーによる戦闘シーンが冒頭とクライマックスに数分間挿入されるのみに留まり、極めて抑えられたものとなっている。
世界観

本作品はOVA第1期・劇場版1作目と同じく押井守監督作品だが、公開当時のテレフォンサービスなどではテレビ版・OVA第2期に連なる世界であることが明言されており[要出典]、特車二課棟の所在地もOVA第1期・劇場版1作目で設定されていた大田区城南島の埋立地には存在しない様子である。

本作品中では18号埋立地に通じる海底トンネルの入り口が城南島東端に存在する[注釈 5][注釈 6]。ファンの混乱を避けるため公式ファンブックなどではパトレイバーはテレビ・OVA・映画・漫画・小説全てがパラレルワールドであることが明記されている。

漫画版とは直接的な繋がりはないが、本作品の公開に合わせて、ゆうきまさみが漫画版の扉絵に本作品のキャラクターやレイバーを登場させたほか、「PATLABOR 2002」と題して本作品の野明と遊馬をイメージしたピンナップを描いている。しかし、それらはいずれも週刊少年サンデーに掲載されたのみで単行本未収録となっている。

東京の描写は、劇場版第一作の「過去の東京」に対し、本作品では「現在の東京」がモチーフになっている。
演出

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出典検索?: "機動警察パトレイバー 2 the Movie" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2019年6月)

劇中でテレビなどのニュース番組の内容が映されているが、日本語のアナウンスは複数の文化放送の現役アナウンサー(当時)が声優として出演している。また、自衛官や民間人など、主要キャスト以外の声に敢えて素人を起用している。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}「声優による上手すぎる演技」を払拭することで、現実感や臨場感を強調するための措置であるという[要出典]。しかし、後年のサウンドリニューアル版ではプロの声優での収録となっている。

本作品ではあくまで後藤をメインに話が展開され、一作目に比べ(旧)第二小隊の面々の登場割合が激減している[注釈 7]。一方で、前作以上に「」が随所で登場している。これは、押井の「空を飛ぶものは、人間からすれば怖いもの」という考えに基づいた演出であるという[要出典][注釈 8]。劇中終盤で柘植率いる蹶起部隊が使用する「ヘルハウンド」に関しても、デザインこそ前作のものではあるが、河森いわく「猛禽類が獲物を狙う様をイメージソースとした」と語る本機を、鳥類のメタファーとして効果的に登場させている[要出典]。

本作品では、物語のドラマ性を極力排除する試みがなされ、「人と人を会わせない」「顔と顔を合わせない」という構成と演出に基づいた結果、主役格の後藤喜一と主犯格の柘植行人は一度も邂逅せず、登場人物たちも、終盤で南雲しのぶが柘植行人を逮捕する場面など一部を除いては対面での会話劇が控えられ、常に同じ方向を向いて台詞を喋らせる平行のレイアウトが多用されることになった。特に車内での会話劇に関しては、車専門のレイアウト担当者に車内のレイアウトの間隔を全て統一させることで、3コマ撮りアニメの基本である口パク3枚(閉じ口、中口、開き口)のみで話が進行した際に起こりがちな画面の貧弱さを補う努力がなされている[7]

柘植が野戦基地を構え、ラストシーンの舞台となる「18号埋立地」は架空の場所[注釈 9]であるが、このシーンのロケハンは、実在の13号埋立地[注釈 10]で行われた。国に正式な手段を踏んで許可を取らなければ取材や立ち入りもできない地域とのことで、角川グループを通し、名目上は『埋立地のゴミ処理問題を調査する記事の取材』と称して『そのコメンテーターとして映画監督の押井守氏に同行していただく』という建前で申請された[要出典]。その取材記事は当時のアニメ誌『月刊ニュータイプ』に掲載されている[要出典]。
評価・影響

本作品は富野由悠季による『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を絶賛する押井からの、ある種の回答やテーマに関する呼応の意味が込められていることが、同人誌『逆襲のシャア友の会』における庵野秀明との対談で告白されている[8]。押井が他人の映画を、ほぼ手放しで褒めることは極めて稀なことであるが、押井との対面時にそれを告げられた富野は、同じく庵野との対談で「お世辞だと思って聞き流した」と語り、これに関して庵野は「あの人(押井)はそんなに世渡りが上手くないです」と言い加えている[9]

宮ア駿は当時、押井作品を多く鑑賞しており、その度に不満を口にしてきたが、本作品では一転して高評価している。どうやって作ったのか考えたくなくなるほどの映像表現に感心し、同じジャンルで競合するのは辞めようと話している。さらに「とても見応えがあった、語り口の巧みさも本当に抜きん出ていた」と評価する一方、冒頭では発砲すべき、犯人はつまんなかった、疑問に思ったことが作中の人物の口から語られてしまって、自分は何も言えなくなる、などの意見も述べている[10]


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