機動警察パトレイバー
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『機動警察パトレイバー』(きどうけいさつパトレイバー、Mobile Police PATLABOR)は、ヘッドギア原作のメディアミックス作品である。

以下の記述は2014年より2015年にかけて公開された連続実写映画作品『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』シリーズを除いて総覧している。

本シリーズのアニメ全作品をビデオソフト化・リリースしているバンダイビジュアルは2018年4月1日より社名をバンダイナムコアーツに変更しているが、現時点ではリリース当時の社名で以下に記載している。
概要

ロボット技術を応用した歩行式の作業機械「レイバー」が活躍する近未来の東京を舞台に、新設された警視庁のレイバー部隊「特車二課」の活躍を描く。OVAを皮切りに、漫画連載や小説、映画・ゲーム作品などを並行展開するという当時としては珍しいメディアミックスを展開した先駆的作品であり[1]、現在もなお関連作品・グッズが数多くリリースされ続けている。

作品は発表された1988年当時は近未来だった1998年の東京を舞台としており、時間軸は媒体ごとに若干異なるが、概ね21世紀初頭(2002年ごろ)までが描かれている。
作品背景

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2012年12月)

作品内では、地球温暖化による海面上昇で東京都が水没する危険に備える目的で、東京湾に横断道路を兼ねた巨大堤防を建設、さらに湾内の大部分を干拓し使用可能な用地に変えるという、国家的な巨大土木事業「バビロンプロジェクト」が進められている。また、開発によって造成した土地を分譲し、首都圏の土地不足を解消するといった題目も語られており、1980年代末からの土地バブルが作品背景に影響している。作中では、1995年に都心部で直下型大地震が発生しており、干拓事業はこの際に発生した大量のガレキの処理を兼ねている。また、バブル期の延長上の世界であるために非常に好況感がある。

都心部では、地震災害からの復興工事や、バビロンプロジェクトに関係する開発事業が多数行われており、レイバーが急速に普及・発展する一因となった。東京湾の埋め立てという大事業は、当然環境に与える負荷が大変に大きく、環境保護団体や漁業関係者を中心に強い反対運動をひき起こし、さらにはエスカレートした環境テロとよばれる破壊活動までもが発生している。

1980年代に設定された世界であるために、現実との差異として1998年でありながらも冷戦状態であり、西ドイツソ連が存在し、それらに関連した設定やレイバーが存在する。本作品のストーリーは2000年代前半まで展開するが、この間実施された省庁再編に関する描写も登場せず、旧省庁名での記述が見られる。

細かい部分では、プルタブ式の缶飲料が登場する点[注 1]Tシャツをズボンの中に入れるファッション、晴海展示場1996年以降も存続、マニアックな部分では米軍の正式採用ヘリがAH-64 アパッチではなくAH-56 シャイアンになっていたり、日本メーカーの自動車ではユーノスブランド[注 2]が存続、欧米で比較的見られるクリスマス休暇を実施する企業が登場するなど、現実の90年代との差異が見られる。なお、劇中に数々登場する企業名に関しては、明確なモデルが存在したとしても、その多くが実名の使用を避けているが、一部に例外もある。実際の2002年(平成14年)になって公開された『WXIII』では年号が平成ではなく昭和のままと設定されている。

現実の世界よりもポケットサイズの携帯電話の普及が少し遅れていると設定されており、携帯電話普及後に製作された『WXIII』でもこの設定は踏襲されている。時間軸上で最後期にあたる劇場版第二作目では一部で携帯電話を使用するシーンが存在するものの、車載電話ポケットベル公衆電話がいまだ主流のものとして描かれている。

一方で、パソコンを主としたインターネットを巡る状況に関しては、実際の2000年代と同程度のレベルにまで発展していると設定されている[注 3]。厳密にはこの設定が考案された当時(漫画版終盤から『WXIII』制作準備中にかけての1990年代中 - 後期)にはブロードバンド環境はいまだ整っておらず、少し先を見据えた状況として設定されていたのだが、本編の公開が数年に渡って遅れたために、結果的に現実の世の中が追いついてしまうという格好となった。
作品解説

原作はヘッドギア。本作品はメディアミックスと呼ばれる手法が導入された作品であり、アニメ版と漫画版が存在する。どの作品も基本設定は同じでキャラクタや登場メカなどはほとんど共有しているが、それぞれの作品が持つ雰囲気は大きく異なる仕上がりとなっている。

当初アニメとして企画・決定していたがゆうきまさみによる漫画が先行してスタートし、その後アニメ作品がリリースされた。全編通してほとんどのレイバーやその他メカニックデザインは出渕裕によるものであるが、モニターコンソールなどの各種インターフェイス類やサブメカを佐山善則、航空機関係を主に河森正治、陸上・海上自衛隊の装備などをカトキハジメに分担することも多かった。また、出渕は劇場版3作目のスーパーバイザーや、エピソードによっては監督や絵コンテを務めることもあり、様々なかたちでシリーズに関わっている。

初期OVAシリーズはビデオ・LD合わせて各巻5万本、スペシャル版2巻を含めると約40万本を販売するというヒットを記録した[2]。以降漫画、映画、アルバム、テレビシリーズと展開し、ほとんど全てのメディアを制覇した[3]。テレビの人気作品が映画化やOVA化するというのがそれまでのヒット作のパターンとされていたが、本作品は逆にOVAからテレビシリーズになるという初の作品となった[4]1991年 - 1992年(平成3年 - 4年)にはテレフォンサービスが配信され、本編などでは語られることのなかったキャラクターの裏話などがキャラ自身によって語られた。この音源はその後新OVAシリーズのDVD版に収録されている。

その後、二度目のOVA化と1993年(平成5年)公開の事実上の完結編にあたる劇場版2作目をもって、アニメシリーズは一区切りとなるがさらに漫画版の完結を経て、およそ9年後の2002年(平成14年)には劇場版3作目にあたるスピンオフ的作品『WXIII』、『ミニパト』が劇場公開。さらに14年後の2016年(平成28年)には新世代のスタッフを主軸として制作されたリブート短編作品『機動警察パトレイバーREBOOT』がイベント上映された。
成立の経緯

1980年代初頭のころ、江古田にある喫茶店「まんが画廊」にて、ゆうきが所属していた「魔法帝国ドロント」という集まりで、とまとあきを中心に「ドロントワイド劇場」[注 4][注 5]というごっこ遊びの中、作業用ロボット「レイバーマシン」[注 6]が登場する『電光石火ギャラクレス』が生まれる[5]

しかし当時『戦闘メカ ザブングル』が流行っており、ギャラクレスの企画は仲間内の範疇で終わる[5]

次にゆうきが考え出したのが『バイドール』という警察ドラマだった[5]。バイドールは全26話分のサブタイトルまで作られ「人間の3倍のロボットが街中に入り込む」「近未来の日本が舞台」など詳細な設定があった[5]。そのころ、ゆうきは下北沢の「パラレル・クリエーション」[注 7]に顔を出しており、出渕裕にパトレイバーの原型となる企画を見せたところ、サンライズに持ち込むこととなったがボツになる[6]

その後、シリーズ構成や脚本を担当することになる伊藤和典や、キャラクターデザインを担当することになる高田明美らと知り合い、当時のバンダイプロデューサーであった鵜之澤伸が加わり、パトレイバー企画の具体的なスタートが形を帯びてくる[6]。パトレイバーという名前は、ゆうきの考えた軍事用レイバー「バトレイバー」が発端で、パトレイバーとして独立の企画にしたのもゆうきである[6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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