横溝正史
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

「金田一耕助ファイル」設定以降にも1990年代の間に既存89編のうち他の10編(うちジュブナイル作品2編、その他の金田一耕助登場作品6編)が通常の角川文庫として紙媒体で出版された形跡があるが[68]、再度品切れ状態になっているものが多い。そのほか、ジュブナイル作品7編が初期の角川スニーカー文庫に新装改訂されて出版されている。2000年代以降には、別の既存版(由利麟太郎ものが比較的多い)を改版して再刊行する例がみられる[注 52]

なお、通番「304」を使わなくなった以降に新たに編集して紙媒体で刊行されたものとしては、『人面瘡』のほかエッセイ集や未収録作品集、最近発見された『雪割草』、あるいは人形佐七捕物帳などの傑作選がある。

2018年より「金田一耕助ファイル」以外の作品で杉本一文の絵が描かれた表紙カバーと巻末解説付きにて改版・復刊が始まり、2021年は「没後40年記念」[69]、2022年は「生誕120年記念」と銘打ち[70]、月1 - 2冊ペースで発行されている。

2023年現在ではジュブナイルと怪獣男爵を含めた金田一耕助シリーズの全編は、角川文庫から展開されている金田一耕助ファイル22冊[71]と同文庫からAmazonで展開されている「金田一耕助シリーズ」28冊[72](内3冊はエッセイ(21,26))と重複(28))および『金田一耕助の冒険』(旧文庫版1と2の内容を含む)[73]、『怪獣男爵』[74]、柏書房の「横溝正史少年小説コレクション2」(黄金の花びら)[75](唯一電子版が存在しない)の計50冊を以ってすべて入手することが可能となっている。
春陽文庫

春陽文庫は1974年 - 1975年に「横溝正史長編全集」と銘打って20編を刊行した。しかし、「長編全集」と銘打ちながら代表的な長編はほとんど収録されず、むしろ中短編について金田一耕助登場作品の8割近くを網羅している(詳細は金田一耕助#文庫などへの収録を参照)。20編のうち第2編『蝶々殺人事件』のみが由利麟太郎登場作品を収録しており、他はすべて金田一耕助登場作品を収録している。

1996年 - 1998年には「横溝正史長編全集」というシリーズ名を外して「新装版」として改めて刊行された。刊行順序は異なっているが収録作品の組み合わせは同じであり、それに『死仮面』が追加されて21編となった。表題作である『死仮面』は角川文庫刊行に伴う網羅作業の中で発掘された作品で、角川文庫の段階では欠落部分を中島河太郎が補完していたが、その欠落部分が発見されて本来の形としたものに「長編全集」に収録されていなかった『鴉』を合わせて1編としている。

また、春陽文庫は1984年に「人形佐七捕物帳全集」と銘打って14編を刊行している。さらに、春陽文庫を出版している春陽堂書店は、2019年 - 2021年に「完本人形佐七捕物帳」10編を刊行した。詳細は「人形佐七捕物帳#シリーズ一覧」を参照
横溝正史自選集

出版芸術社から2006年 - 2007年に刊行。横溝正史は自選作品を何度か挙げているが、そのうち1977年1月16日に「毎日新聞日曜くらぶ」に掲載された「わたしのベスト10」(角川文庫『真説 金田一耕助』 ISBN 4-04-130463-6 に収録)に挙げたものが広く知られており、この自選集もこれによっている。講談社の全集を底本に初出誌と校合してテキストを確定するという方針で編集されている[76]。また、横溝正史とのインタビューに際して製作され「著者公認」とされている、獄門島と鬼首村の地図が本文中に挿入されている[77][78]

1 本陣殺人事件 / 蝶々殺人事件 ISBN 978-4-88293-308-3

2 獄門島 ISBN 978-4-88293-313-7

3 八つ墓村 ISBN 978-4-88293-316-8

4 犬神家の一族 ISBN 978-4-88293-309-0

5 悪魔が来りて笛を吹く ISBN 978-4-88293-318-2

6 悪魔の手毬唄 ISBN 978-4-88293-323-6

7 仮面舞踏会 ISBN 978-4-88293-324-3

柏書房によるコレクション

柏書房は2017年 - 2018年に『横溝正史ミステリ短篇コレクション』6巻、2018年 - 2019年に『由利・三津木探偵小説集成』4巻、2021年に『横溝正史少年小説コレクション』7巻を刊行した[79]。角川文庫収録作品の多くが出版されなくなった状況を受けての刊行であるが、初出または初刊の状態を基準として校訂し直すという方針も強調している。

『横溝正史ミステリ短篇コレクション』は、金田一耕助、由利麟太郎、三津木俊助が登場しない短編作品で、捕物帳などの時代小説でもジュブナイル作品でもないものを集めている。すなわち、1984年までの角川文庫に収録された作品のうち、

『自選人形佐七捕物帳』に収録された作品

別番号のシリーズに収録されたジュブナイル作品

金田一または由利&三津木が登場する作品

『びっくり箱殺人事件』『神変稲妻車』『髑髏検校』『女が見ていた』『呪いの塔』

を除いた全作品を、角川文庫と同じ順序(一部に編冊単位の順序が違う部分、ごく一部に編冊内での順序が違う部分がある)に収録し、さらに角川文庫未収録の『湖泥』(金田一耕助登場作品とは別)および『鬼火』の自筆原稿に基づくオリジナル版も収録されている。

『由利・三津木探偵小説集成』は由利麟太郎または三津木俊助が登場する作品を集めている。角川文庫(ジュブナイル作品以外)に収録された由利&三津木登場作品のすべてと、翻案ものという理由で収録されなかった『迷路の三人』[注 53] および未完の『神の矢』[注 54]『模造殺人事件』が収録されており、確認されている全作品(『仮面劇場』を長編化する前の原型作品[注 55]およびジュブナイル作品を除く)と考えて良いと思われる。

『横溝正史少年小説コレクション』はジュブナイル作品を集めている。ジュブナイル作品は読者層が短期間で成人向け作品に移行すると想定されることなどにより、時代背景を変更したり掲載媒体に合わせて短縮したりするなどの改変が加えられて再公表されることがあり、元の形が判りにくくなる場合がある。当初は由利&三津木登場作品だったものが金田一ものに改稿された事例もある。このような状況を踏まえて、初出または初刊を重視する方針に基づいて再整理し系統的なコレクションとしたものである。また、掲載誌の休刊により中断し改めて書き直された作品は両方のバージョンを併録するなど、未完作品や未発表作品も積極的に収録している。なお、一般にジュブナイル作品は掲載誌が散逸しやすい傾向があり、横溝正史作品についても多数の角川文庫未掲載作品が論創社の『横溝正史探偵小説選』に収録されているが、重複は原則として避けている[注 56][80]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:182 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef