権利自白
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

ただし、英米法ではアドミッション(訴訟の当事者となっている者がした供述で、その者にとって不利益なもの)との関連で、自白の意義に争いがある[1]

古く自白は「証拠の王」または「証拠の女王」と呼ばれ[2]、有罪の認定に最も重要な要素であった。例えばカロリナ刑事法典(英語版、ドイツ語版)では、刑の言い渡しの要件として、犯人の自白または2人以上の信憑性のある証人の証言が必要とされた[2]。しかしフランス革命を契機に、文明国では自白の強制を防止するための法制度が必要と考えられるようになった[3]

犯罪が行われたこと、それを被告人が行ったことの結びつきを「自白の補強法則」といい、これは冤罪の防止に有効である[4]
黙秘権

黙秘権は17世紀後半でイギリスにおいて成立した[5]。当時の星法院裁判所(スター・チェンバー)の審理は何の訴えも待たずに開始され、被告人には宣誓した上で供述することが義務づけられていた[5]。このような制度に反対していた一人がリルバーン(Lilburn)であり、彼は1637年に星法院裁判所での宣誓供述を拒否したため処罰された[5]。1641年にイギリス下院はこのような措置は残虐・不正・野蛮・暴虐であり市民の自由に反するものとして同年に星法院裁判所を廃止した[6]。イギリスでは17世紀末までには「何人も自らの口で自分自身を有罪とするように強制されることはない」とする原則が確立された[7]

その後、黙秘権はアメリカ合衆国憲法修正第5条により「何人も、いかなる刑事事件においても、自己に不利益な供述を強制されない」として具体化された[7]

日本国憲法第38条第1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と規定し、刑事訴訟法は被告人について「終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」権利(第311条第1項)、被疑者について「自己の意思に反して供述をする必要がない」権利を認めている[8]。通説では日本国憲法第38条第1項は、何人も自己に不利益な供述を強要されないと規定し、刑事訴訟法は被疑者や被告人について、その趣旨を拡張したものとする[8]。詳細は「黙秘権」を参照
自白法則

自白法則とは拷問や脅迫などによって獲得された自白を証拠から排除するという原則であり18世紀後半に成立した[7]

沿革上の性質からは、黙秘権は供述義務のない者を法律上供述義務のある立場に置くこと(供述の強要)を禁止する趣旨であり、裁判所が被告人に法律上の供述義務を課す場合にのみ問題になると考えられていた[9][7]。また、自白法則は拷問や脅迫などの事実上の強制(供述の物理的・心理的な強制)を排除するもので公判廷外の自白に適用されるとされていた[9][7]。特にアレインメント制度が採用されている英米法では公判廷での自白と公判廷外の自白は異なる性質のものと理解されていた[2]。そのため、かつては被告人は裁判所との関係で法律上の供述を強制されない特権を有するのであり、捜査機関に対して供述義務を負わない被疑者にはこのような特権はなく捜査機関による供述の物理的・心理的な強制は自白法則で処理すべき問題と考えられたこともある[9][7]。しかし、供述強制による侵害の危険が大きいのはむしろ被疑者の場合であり、裁判所による供述強制だけでなく国家機関一般による供述の強制が禁止されているとみるべきと考えられるようになった[8][10]。アメリカでも最初は裁判所に対する特権と考えられていたが、捜査機関に対する被疑者の黙秘権が強調されるように推移している[8]。このように捜査機関による捜査段階での供述については黙秘権と自白法則の融合がみられる[8]。詳細は「自白法則」を参照
虚偽自白
日本
パソコン遠隔操作事件

神奈川県警察は19歳の大学生を逮捕し、「鬼殺銃蔵」というハンドルネームを使った理由として「強い日本酒の名前から思い付いた。不吉な数字の13から『じゅうぞう』とした」と虚偽の自白を引き出した[11]。少年は、虚偽の自白をした理由として、取調官から「認めれば処分が軽くなる」「少年院に行かなくて済む」と言われたためとしている[12]。詳細は「パソコン遠隔操作事件」を参照



国民性

日本と韓国刑事事件の被疑者を比較した場合、韓国の被疑者の80%は最初から容疑を否認するが、日本の被疑者は逆に80%が容疑を自白するというデータがある。韓国紙である中央日報は、こうした傾向を国民性に基づくものと分析している[13]
脚注[脚注の使い方]^ a b 熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系II自白』1970年、p.6
^ a b c 熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系II自白』1970年、p.3
^ 熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系II自白』1970年、p.4
^ (株)旬報社 発行 今村核 著「冤罪弁護士」
^ a b c 光藤景皎 『刑事訴訟法 I』2007年、p.102
^ 光藤景皎 『刑事訴訟法 I』2007年、pp.102-103
^ a b c d e f 光藤景皎 『刑事訴訟法 I』2007年、p.103
^ a b c d e 光藤景皎 『刑事訴訟法 I』2007年、p.104
^ a b c 上口裕 『刑事訴訟法 I 第4版』2015年、p.186
^ 上口裕 『刑事訴訟法 I 第4版』2015年、p.187
^ “【なりすましウイルス】犯行予告わずか2秒で書き込み 神奈川県警、疑問を放置  - MSN産経ニュース” (2012年11月14日). 2018年12月4日閲覧。
^ 日本放送協会. ⇒“仕組まれた罠(わな) ?PC遠隔操作の闇? - NHK クローズアップ現代+”. NHK クローズアップ現代+. ⇒http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3263/1.html 2018年12月4日閲覧。 
^ “【時視各角】賢い韓日外交”. 中央日報 (2021年6月24日). 2021年6月24日閲覧。

関連項目

黙秘権/拷問

冤罪/痴漢冤罪/誤認逮捕

人質司法/代用刑事施設/留置場

自白剤

秘密の暴露

瑕疵ある意思表示

典拠管理データベース: 国立図書館

日本

チェコ


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:17 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef