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右手で柄尻に近い側を握り、左手を前に出して支える構えから、左手の中で滑らせながら右手の力で突き出すというのが最も基本的な使い方である。重量のある長槍では両手で握り締め突進しながら突き出すほか、高く差し上げて打ち下ろす使い方も洋の東西で見られる。古代ギリシャの重装歩兵は盾と併用し片手で投槍の要領で肩の上に構えたが、いずれにしても得物の長さや状況に応じて臨機応変に構えを変えたようである。突き刺す以外にも、叩く、なぎ払う、かすめ・叩き斬る、絡める、引っ掛ける、フェイント的に柄の側を使うなど、さまざまな用法が開発されている。

日本では槍術と呼ばれる技術体系がある。槍術は、棒術と組み合わせることも多く、棒術などの他の武術体系の領域とも重複し習得内容の幅が広く、非常に難しい。とは言え、同じ長物である大剣などと比較すると、そこまで扱いづらいものではない。

槍はその威圧感を利用されることもあり、特に衛兵門番は槍を持った姿が多い。
投げ槍

槍を投擲する概念も、紀元前から存在する用法である。腕の延長としてスイング半径を拡大し飛距離を増大させる槍投器が世界各地から発掘されている。投擲用の槍は、適当な重量やバランスが手持ち用の物とは異なるため、独自の発展を遂げた。古代ローマのピルムは最も高度に発展したものの一つと言える。

弓の発明・伝来がなかったアフリカ、オーストラリアニュージーランドニューギニア島ポリネシアメラネシアミクロネシア太平洋諸島圏及びハワイ諸島、南米奥地などでは、近代まで狩猟具や武器として用いられてきた。現在の陸上競技でも投げた槍の飛距離を争うやり投が存在する。
変化形、バリエーション

両手剣類を扱いやすくする形で槍に似た形を得た武器もある。長巻ツヴァイヘンダーなどが好例であり(刀身根元付近に刃着けしないかあるいは革柄で覆ったリカッソと呼ばれる部分を施したグレートソードや、同様に大太刀から長巻に変遷する途中に刀身中程まで柄巻きを施した中巻野太刀のように、形状は異なっても扱いが槍や薙刀に近似しているものもある)。

最初期の銃も、すでに存在していた同じ投射武器であるには似ておらず、むしろ槍に似た長柄の先に薬室と銃身を取り付けた形態であった。その銃が発明された中国では現在でも主力小銃を「歩槍」と呼ぶなど銃に「槍」の字を充てている。

19世紀頃になるとその銃器の普及が進み、槍は取って代わられていった。しかし、戦闘時における槍としての機能の有効性は未だ健在であり、軍用のサバイバルナイフの中には柄の部分が空洞になっていて、木の枝などを挿し込んでソケット式の槍にするものもある。銃剣は剣と書くが、実質は扱い・形状共に槍(剣部=穂、銃身=柄、とも見て取れる)であり、現代の主力歩兵小銃もほぼ全てに銃剣が取り付け可能であり、実戦で使用するための訓練も行われていることから、未だもって銃剣ひいては槍は全世界で実戦配備されているとも言える。

21世紀に入っても、イギリス軍がアフガニスタン紛争において銃剣突撃で武装勢力を壊乱させた事例が存在する。その他、土木用具のシャベルも、特に塹壕戦では白兵戦用の武器の中で最も活躍した立派な武器として認知されている。現代の非対称戦においては、いかに先進した軍備を誇る大国の軍といえども、劣弱な後方部隊が襲撃される状況がままあり、銃剣を含めた兵士個々人の気力体力に依存する戦闘力の意義がむしろ大きくなっているとも言える。
武器以外の用途

軍旗の旗竿としても使われる。(そこから転じた優勝旗などの旗竿はしばしば槍を模した穂先などの装飾が施される。)担架もっこの代用品として、戦場で負傷者や荷物などを運ぶ道具として使用されることもある。
歴史

旧石器時代には既に人類は投石棍棒と槍を使用していたことがわかっている。鋭い牙や爪、突進力を有する動物に対するために槍の長さは有効であり、この利点はそのまま対人の兵器としても発展していった。

旧石器時代の槍先

石器時代の槍の再現。狩猟につかわれていたと考えられている。

先史時代の槍の刃先。紀元前5000年- 紀元前2500年のもの。(ドイツの博物館所蔵品)

古代世界では槍の使用は広まっていた。

シュメールの槍兵部隊。紀元前2450年。

古代ギリシアの槍をかついだ兵士

古代シリアの槍兵

古代ローマの軍の槍と盾をもつ兵(の再現)


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