構造主義
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アレクサンドル・コジェーヴヘーゲル理解を承継したルイ・アルチュセール構造主義的マルクス主義社会学を提唱した。[4]

構造主義にとっての構造とは、単に相互に関係をもつ要素からなる体系というだけではなく、レヴィ=ストロースの婚姻体系の研究にみられるように、顕在的な現象として何が可能であるかを規定する、潜在的な規定条件としての関係性を意味する。そのような限りで、フロイトの精神分析の無意識という構造を仮定するアプローチも一種の構造主義と言える。ジャック・ラカン精神分析に構造主義を応用し、独自の思想を展開した。

構造主義を応用した文芸批評は、言語学者ロマーン・ヤーコブソン[注釈 3]の助力の下に、レヴィ=ストロースがボードレールの作品『猫』について言及したことに始まる。彼によれば、人類学が神話において見出した構造と、言語学・文学が文学作品・芸術において見出した構造は顕著な類似性を見出すことができるのである。ここでは、言語、文学作品、神話などを対象として分析するにあたって、表現などが形作っている構造に注目することで対象についての重要な理解を得ようとするアプローチがなされている。このようなアプローチは、ロラン・バルトジュリア・クリステヴァらの文芸批評に多大な影響を与えた。構造を見出すことができる対象は、商品や映像作品などを含み、狭い意味での言語作品に限られない。こうした象徴表現一般を扱う学問記号論と呼ばれる。

ただし、静的な構造のみによって対象を説明することに対する批判から、構造の生成過程や変動の可能性に注目する視点がその後導入された。これは今日ポスト構造主義として知られる立場の成立につながった[注釈 4]
音楽における構造主義

現代作曲家のヘルムート・ラッヘンマンについて指摘される場合があるが、これはベートーヴェンから導き出した変容法や変奏技術が、楽曲の構造に反映していると見られている。また、ブラームスソナタ形式をはじめ、リヒャルト・シュトラウス対位法バッハフーガでも構造上の意図が散見される[5]
生物学における構造主義(構造主義生物学)詳細は「構造主義生物学」を参照

構造主義生物学とは構造主義の考えを生物学に応用しようとする試みである[6]

なお、生体分子の立体構造を解析し研究する生物学の一分野は「構造生物学」と呼ばれるが、これは名称が類似しているだけで直接の関係はない。
開発経済学における構造主義

経済学、とりわけ開発経済学の分野において、構造主義は1940年代?1960年代の主流派であった。ここにおける構造主義とは、発展途上国の経済構造は先進国のそれとは異なるものであり、それゆえに経済格差が発生している、という考えである。南北問題などもこの経済構造の違いが原因で起こるとされた。

こうした構造主義では、先進国と発展途上国で適用すべき経済理論を使い分けなければならないとされたが、1960年代以降に主流派となる新古典派経済学によってこの考え方は否定されることとなる。構造主義にかわって主流派となった新古典派経済学では、先進国と同様に発展途上国でも経済市場のメカニズムは同じように機能する、という考えにもとづく自由主義的アプローチがなされた[7]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 伝統的にフランスの数学者集団ブルバキとのつながりがある。
^ 岩井克人によれば構造主義とは、歴史には方向性があるとするマルクスへの批判であり、歴史の先取りに価値を見るサルトルへの批判であったという(日本経済新聞2013年10月10日(人間発見)国際基督教大客員教授 岩井克人さん 「資本主義」を考え抜く (3))。


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