楕円曲線
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そして、任意の P と Q に対する P + Q は、R を P と Q を含む直線上の第三の点としたとき、P + Q = −R として定義される。

K をその上で曲線が定義される体とし(つまり、曲線を定義する式の係数 K の中にある)、曲線を E で表すと、E 上の点であり、かつx座標とy座標の値が共に K 上にある点(無限遠点を含む)を、E の K-有理点とよぶ。K-有理点の集合は、E(K) で表す。これも群を形成する。なぜならば、多項式の性質から、P が E(K) の点であれば −P も E(K) の点であり、P と Q の 2点が E(K) の点であれば、第三の点も E(K) の点になるからである。加えて、K が L の部分体であれば、E(K) は E(L) の部分群である。

上記の群は、幾何学的に記述されると同様に代数的にも記述できる。体 K (体の標数は 2 でも 3 でもないとする)上の曲線 y2 = x3 + ax + b が与えられるとし、曲線上の点を P = (xP, yP) と Q = (xQ, yQ) として、まず、xP ≠ xQ とする(下図の一つ目のグラフ)。s を P と Q を含む直線の傾き、つまり、 s = y P − y Q x P − x Q {\displaystyle s={\frac {y_{P}-y_{Q}}{x_{P}-x_{Q}}}}

とする。K は体であるので、s はうまく定義できる。すると、R = (xR, yR) = −(P + Q) を x R = s 2 − x P − x Q y R = y P + s ( x R − x P ) {\displaystyle {\begin{aligned}x_{R}&=s^{2}-x_{P}-x_{Q}\\y_{R}&=y_{P}+s(x_{R}-x_{P})\end{aligned}}}

により定義することができる。

xP = xQ の場合は(下の三つ目と四つ目のグラフ)、二つの選択肢がある。yP = −yQ のとき(yP = yQ = 0 を含む)、和は O と定義される。つまり、曲線上の各点の逆元は、x-軸に対して線対称の位置にある。yP = yQ ≠ 0 のときは(下の二つ目のグラフ)、R = (xR, yR) = −(P + P) = −2P は、 s = 3 x P 2 + a 2 y P x R = s 2 − 2 x P y R = y P + s ( x R − x P ) {\displaystyle {\begin{aligned}s&={\frac {3{x_{P}}^{2}+a}{2y_{P}}}\\x_{R}&=s^{2}-2x_{P}\\y_{R}&=y_{P}+s(x_{R}-x_{P})\end{aligned}}}

により与えられる。
結合律EllipticGroup

結合律を除く全ての群法則は、直ちに群作用の幾何学的定義から導くことができる。このアニメーションは幾何学的な結合法則を示している。

六本のどの直線についても、直線上の三点の和が 0 であることに注意。九個の点全ての位置は、0 と a, b, c の位置と楕円曲線によって決定される。九点のうちの中心の点は、a と b + c を通る直線上と、a + b と c を通る直線上にある。加法の結合律は、格子の中心点を楕円曲線が通るという事実と同値である。この事実より、−(a +(b + c)) = −((a + b)+ c) が導かれる。

楕円曲線と点 0 はこのアニメーションの中では不動であることに対し、一方、a, b, c は互いに独立して動く。
複素数体上の楕円曲線複素数上の楕円曲線は、複素数平面を格子 Λ で割ることで得られる。この格子 Λ は、二つの基本周期 ω1 と ω2 によって張られる。4-トーションは、格子 Λ を含む格子 1/4Λ に対応している。

楕円曲線の複素射影平面(英語版)の中のトーラスの埋め込みとしての定式化は、ヴァイエルシュトラスの楕円関数の不思議な性質から自然に導かれる。これらの関数と関数の一階微分は、公式 ℘ ′ ( z ) 2 = 4 ℘ ( z ) 3 − g 2 ℘ ( z ) − g 3 {\displaystyle \wp '(z)^{2}=4\wp (z)^{3}-g_{2}\wp (z)-g_{3}}

により関係付けられている。

ここに、g2 と g3 は定数であり、℘(z) はΛを周期とするヴァイエルシュトラスの楕円関数で、℘'(z) はその微分である。(複素数上の)楕円関数の形の中でこの公式は明らかであろう。ヴァイエルシュトラスの楕円関数は二重周期関数である。つまり、周期の基本対(英語版)の観点から周期的であり、本質的には、ヴァイエルシュトラス関数は、自然に、トーラス T = C/Λ の上で定義される。このトーラスは、写像 z ↦ [ 1 : ℘ ( z ) : ℘ ′ ( z ) ] {\displaystyle z\mapsto [1:\wp (z):\wp '(z)]}

により、複素射影平面の中に埋め込まれる。

この写像は群同型であり、トーラスの自然な群構造を射影平面へ写す。この写像は、リーマン面にも同型であり、従って、位相的には、楕円曲線が与えられるとトーラスのように見える。格子 Λ が、非零な複素数 c による掛け算により、格子 cΛ へ写されると、対応する曲線は同型となる。楕円曲線の同型類はj-不変量により特定される。

同型類は同じ方法で理解することができる。定数 g2 と g3 は、j-不変量と呼ばれ、トーラスの構造である格子により一意に決定される。しかしながら、複素数の全体は、実係数多項式の分解体を成し、楕円曲線は y 2 = x ( x − 1 ) ( x − λ ) {\displaystyle y^{2}=x(x-1)(x-\lambda )}

と書くことができる。

以上のことから、 g 2 = 4 1 / 3 3 ( λ 2 − λ + 1 ) {\displaystyle g_{2}={\frac {4^{1/3}}{3}}(\lambda ^{2}-\lambda +1)}

であり、 g 3 = 1 27 ( λ + 1 ) ( 2 λ 2 − 5 λ + 2 ) {\displaystyle g_{3}={\frac {1}{27}}(\lambda +1)(2\lambda ^{2}-5\lambda +2)}

であることが分かり、このモジュラー判別式は Δ = g 2 3 − 27 g 3 2 = λ 2 ( λ − 1 ) 2 {\displaystyle \Delta =g_{2}^{3}-27g_{3}^{2}=\lambda ^{2}(\lambda -1)^{2}}

である。

ここに λ はモジュラーラムダ関数(英語版)と呼ばれることもある。

注意すべきは、一意化定理は、種数 1 の全てのコンパクトなリーマン面は、トーラスとして実現することができることを意味していることである。

このことは、楕円曲線上の捩れ点を容易に理解することができる。格子 Λ が基本周期 ω1, ω2 ではられると、n-ねじれ点は、0 から n − 1 までの整数 a と b に対し、次の形の(同型類の)点である。 a n ω 1 + b n ω 2 . {\displaystyle {\frac {a}{n}}\omega _{1}+{\frac {b}{n}}\omega _{2}.}

複素数上に、どの楕円曲線も九個の変曲点を持っている。これらの点のうちの二つを通るどの直線も、三つ目の変曲点を通る。九つの点と12の直線はこのようにしてヘッセ配置(英語版)を成す。
代数体上の楕円曲線

有理数体 Q 上、あるいは一般に代数体 K 上定義された曲線 E/K についても接線と割線の方法 (the tangent and secant method) による加法は適用できる。群構造を定義したときにも述べたように、明示公式から、2つの K-有理点 P, Q の和は、P と Q を結ぶ直線は K 上に係数を持つゆえ、再び K 上に座標を持つ。このようにして、E の K-有理点全体のなす集合は E の複素数点(K が実代数体の場合は実数点)全体のなす群の部分群を成す。この意味において、楕円曲線はアーベル群、すなわち P + Q = Q + P となっている。
高さ

代数体 K 上の楕円曲線上の点に対し、高さが定まる。一般に、次数 d の代数体 K 上の射影空間 P n ( K ) {\displaystyle \mathbb {P} ^{n}(K)} 上の点 P = [ x 0 : x 1 : … : x n ] ∈ E ( K ) {\displaystyle P=[x_{0}:x_{1}:\ldots :x_{n}]\in E(K)} の絶対的高さ (absolute height)を H ( P ) = ( ∏ v max i { ‖ x i ‖ v } ) 1 / d {\displaystyle H(P)=(\prod _{v}\max _{i}\{\lVert x_{i}\rVert _{v}\})^{1/d}}


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