検索の抗弁権
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委託を受けた保証人の求償権

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する(459条1項)。債務の消滅行為にあたっては後述の主たる債務者への事前通知と事後通知を要する。

2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権の規定が新設された(459条の2)。主たる債務の弁済期前の保証人の弁済等は、委託の趣旨に反すると考えられることから、委託を受けない保証の場合と同様の範囲にまで求償を制限する趣旨である[1]

債務が弁済期にあるときなど以下の場合には、委託を受けた保証人は、保証債務を履行する前でも、あらかじめ主たる債務者に求償することができる(460条、事前求償権)。
主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。

債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。

保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。なお、2017年の改正前の460条3号は「債務の弁済期が不確定で、かつ、その長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。」とされていたが、主たる債務の額すら確定できない場合であったため削除された[1]

委託を受けない保証人の求償権

主たる債務者の意思に反しない場合

主たる債務者からの委託を受けない保証人は、原則として、肩代わりで弁済した当時、主たる債務者が利益を受けた限度で求償できる(462条
1項・459の2第1項)。この場合の求償権の法的性質は、不当利得返還請求権(703条)ないし事務管理の費用償還請求権である。

利益が現存しないことの立証責任は求償を受ける主債務者の側にある[5]

債務の消滅行為をしたときは後述の主たる債務者への事後通知を要する。


主たる債務者の意思に反して保証人となった場合

この場合、保証人は、求償の時点で主たる債務者が利益を受けている限度で求償できる(462条2項)。


通知義務

事前通知

委託を受けた保証人は債務の消滅行為をするにあたり主たる債務者に事前通知を要する
[1][3]。事前通知がない場合、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる(463条1項)。

2017年の改正前の民法では委託の有無を区別せずに、保証人に事前通知義務が課せられていたが、委託を受けない保証人は事前通知の有無に関係なく求償の範囲が制限されることから、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で事前通知義務を委託を受けた保証人に限っている[1][3]


事後通知

委託を受けた保証人及び委託を受けないが主たる債務者の意思には反しない保証人の場合、債務の消滅行為をしたときは主たる債務者に事後通知を要する[3]。事後通知がなく、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる(463条3項)[3]

委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、求償権は主たる債務者が求償時に現に利益を受けている限度とされているため(462条2項)、保証債務が履行された後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合には利益はなく求償できない[3]。そのため2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では、委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、事後の通知の有無にかかわらず、主たる債務者の債務の消滅行為を有効とみなすとされた(463条3項)[3]


特殊な保証
連帯保証
連帯保証の意義

主たる債務の債務者が弁済できない場合に二次的に履行の義務を生じるという性質(補充性)が認められず、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証を連帯保証という。連帯保証をした者を連帯保証人という。
連帯保証の特徴

以下の点で補充性が認められる通常の保証(単純保証)とは異なる。

単純保証の保証人には
催告の抗弁権検索の抗弁権が認められるが、連帯保証人にはこれらは認められない(454条)。よって債権者は主債務者の状況にかかわらず、いきなり連帯保証人の財産にかかっていけることになる。

通常の単純保証では、保証人が数人いる場合には各保証人は債権者に対して保証人の数に応じて分割された部分についてのみ債務を負担する(456条・427条)。これを分別の利益という。連帯保証の場合には、この分別の利益がなく、連帯保証人が数人いる場合であっても、各連帯保証人は債権者に対して債務の全額について責任を負わなければならない。なお、連帯保証人間の内部関係においては、各連帯保証人には負担部分が存在するので、連帯保証人の一人が自己の負担額を超えて弁済した場合には、他の連帯保証人に求償することができる(465条1項・442条)。

連帯保証の場合には連帯保証人に生じた事由について連帯債務の履行の請求等の規定が準用される(458条)。

連帯債務者についての規定が、原則として、連帯保証人について生じた事由に準用されることは従前どおりであるが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で請求等が相対的効力になるなど主たる債務者に対しても効力が及ぶ絶対的効力事由が改正前に比べて少なくなっている[1][6]

連帯保証人について生じた事由は、主たる債務を消滅させる弁済等のほか、458条により更改(438条(旧435条))、相殺(439条(旧436条))、混同(440条(旧438条))は、主たる債務者に対しても効力が及ぶ。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で連帯保証人に対する請求、免除、時効の完成の効力は、主たる債務者に及ばないこととなった[2]

なお、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従うとされた(441条ただし書)。458条によりこの規定は連帯保証にも準用され、連帯保証人に対する請求など主たる債務者にも効力を生じさせたい事由について、債権者と主たる債務者の間でこれらの事由に絶対効が生じる旨の特約を締結することができる[1][6]


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