検疫とは、元来は上記のように病原体や害虫などの有害生物の侵入を防ぐ意味を持つものであった。しかし、近年では、生物多様性の観点からの検疫も行われる。典型的な例はオーストラリアで、雑草の種子が含まれている可能性のある品目など、国外から生きた動植物や食料品が入ることを厳しく制限している。これは、オーストラリアの生物相が、世界の他の地域に比べて特異であり、これまでに国内に持ち込まれた他地域の生物が、オーストラリア大陸で大被害を与えた例が多々あることと共に、国内の特異な生物相を保護することを目ざしての措置である。
なお、ガラパゴス諸島では更に厳格な措置が設けられ、島に立ち入る際には足を洗わなければならない。 この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 日本における検疫の手続は検疫法(昭和26年6月6日法律第201号)などの法令による。検疫法は国内に常在しない感染症の病原体が国内に侵入することを防止することなどを目的として制定されているものである(検疫法第1条)。なお、日本国内での感染症予防や感染症患者に対する一般的な措置については「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症予防法)の項目を参照。 検疫の対象になる、検疫感染症については、検疫法第2条の各号で次のようなものが指定されている(検疫法第2条の1号から3号までの区分により隔離や停留などの内容が異なる)。 検疫感染症の疑似症及び無症状病原体保有者に対する検疫法の適用基準については検疫法第2条の2に定めがある。 検疫所長は検疫法第2条1号・2号に掲げる感染症患者を隔離し、また、検疫官に感染症患者を隔離させることができる(検疫法第14条1項1号)。日本の検疫法上の隔離の措置は、既に検疫感染症にかかっていることが明らかとなった患者を対象とする措置である。 検疫所長は外国で検疫法第2条1号・2号に掲げる感染症が発生し、その病原体が国内に侵入し、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときには、検疫法第2条1号・2号に掲げる感染症の病原体に感染したおそれのある者を停留し、また、検疫官に感染したおそれのある者を停留させることができる(検疫法第14条1項2号)。日本の検疫法上の停留の措置は、検疫感染症に感染しているおそれのある者を対象とする措置である。
日本における検疫
検疫感染症
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法) に規定する一類感染症(検疫法第2条1号)一類感染症については感染症予防法第6条2項に規定があり、具体的には、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう(天然痘)、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱が指定されている。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)に規定する新型インフルエンザ等感染症(検疫法第2条2号)新型インフルエンザ等感染症については感染症予防法第6条7項に規定がある。
国内に常在しない感染症のうちその病原体が国内に侵入することを防止するためその病原体の有無に関する検査が必要なものとして政令で定めるもの(検疫法第2条3号)政令として検疫法施行令第1条に規定があり、具体的には、ジカウイルス感染症、新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。)、チクングニア熱、中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)、デング熱、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1またはH7N9であるものに限る。)、マラリアが指定されている。
検疫法の適用
検疫法第2条1号に掲げる感染症の疑似症を呈している者については、同号に掲げる感染症の患者とみなして検疫法が適用される(検疫法第2条の2第1号)。
検疫法第2条2号に掲げる感染症の疑似症を呈している者であって当該感染症の病原体に感染したおそれのあるものについては、同号に掲げる感染症の患者とみなして検疫法が適用される(検疫法第2条の2第2号)。
検疫法第2条1号に掲げる感染症の病原体を保有している者であって当該感染症の症状を呈していないものについては、同号に掲げる感染症の患者とみなして検疫法が適用される(検疫法第2条の2第3号)。
隔離の措置
隔離される医療機関(検疫法第15条1項)
検疫法第2条第1号に掲げる感染症の場合 - 特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関
検疫法第2条第2号に掲げる感染症の場合 - 特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、これら以外の病院・診療所で検疫所長が適当と認めるものにその入院を委託することができる。
病原体保有の確認隔離されている者やその保護者(親権を行う者又は後見人)が、検疫所長に対して隔離されている者の隔離を解くことを請求した場合(検疫法第15条4項)には、検疫所長は隔離されている感染症の患者が感染症の病原体を保有しているかどうかの確認をしなければならない(検疫法第15条5項)。
隔離措置の解除検疫所長は隔離の措置がとられている感染症の患者について感染症の病原体を保有していないことが確認されたときには、直ちに隔離の措置を解かなければならない(検疫法第15条2項)。
罰則規定隔離措置の継続中に逃げ出した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される(検疫法第35条2号)。
停留の措置
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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