植物油
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当時は食用に利用出来るのは富裕層に限られていた[10]

庶民においては植物油は食用はもちろん燈火用にも高価であり、魚油鯨油などが使われていた。 ろうそくは植物油よりさらに高価なものであった。 江戸時代になり菜種油綿の生産増に伴う綿実油の生産が増加し始め、庶民による植物油の利用が広まっていった。18世紀初期には江戸では一人あたり平均年間約7.2リットル[注 1]の消費まで増加し、大坂江戸積油問屋から不足分の供給を仰いでいた[11]。燈火用と食用の比率は分からないが、庶民層においては消費量自体が小さく燈火用が主であったと考えられる。

明治に入り燈火用にはケロシンが植物油にとって代わるが食の洋風化と共に食用の消費が増え、大正には大規模な製油工場も稼働を始めた。昭和になるとさらに食の洋風化が加速し植物油の消費も増えていった[12]。戦時色が強くなった1941年6月から食用油の配給制度が始まったが、配給される油種はごま油と大豆油であった[注 2]
製法詳細は「採油 (油脂)」を参照

油分の多い原料では圧搾し油を絞り出す。大豆米ぬかなど油分が少ない原料では圧搾は行なわず、ヘキサンなどの溶剤で化学的に油分を抽出したあと、溶剤を蒸発させて除去し油分を得る。油分の多い原料の場合は圧搾と抽出を併用する場合もある。この圧搾、抽出の工程は搾油、得られたものは粗油と呼ばれる。粗油には油分以外の澱(おり、ガム質)が含まれており、これを遠心分離器で除去し原油を得る。この原油が脱酸、水洗、脱色、ろ過などの最終精製工程を経て最終商品となる[14]

サラダ油は、原料は菜種、綿実、大豆、ごま、サフラワー(紅花)、ひまわり、とうもろこし、米(米糠)、落花生またはこれらを混合したもの(調合サラダ油)で、脱蝋・精製処理をし固化しやすい成分を除去したものである。

天ぷら油は、香りを重視し調合された油。色や香りの強いごま油の他、綿実油、椿油、オリーブオイルやなたね油も使われる。

成分詳細は「植物油の一覧#植物油の脂肪酸組成」を参照

植物油脂は、組成および物性の違い(不飽和脂肪酸が多く液状、飽和脂肪酸が多く常温で固体[15])から、それぞれ植物油(液体)と植物脂(固体)に分けられる。ヤシ油やパーム油などが植物脂である[16]

多くの植物油は融点が低い不飽和脂肪酸を多く含むため常温で液体であるが、融点の高い飽和脂肪酸を多く含むココナッツ油やカカオバターなどもある。
規格

食用植物油脂は日本では日本農林規格(JAS、Japanese Agricultural Standard)でその品質基準が制定されている。日本油脂検査協会が農林水産大臣より登録認定機関として認められており、同協会が製油工場およびその製品の認定を行い合格品にJASマークが付けられる[17]。各植物油に関しては酸価比重屈折率けん化価ヨウ素価などの規格が制定されている[18]添加物として認められているのは酸化防止剤としてトコフェロール、容量4kg以上の製品の消泡剤としてシリコーン、栄養強化剤としてビタミンEのみである。

欧州においては食用油におけるベンゾ[a]ピレンなどの多環芳香族炭化水素の含有を規制している[19]
植物油の原材料「植物油の一覧」も参照

植物油は油分を多く含む植物の種子や果肉から精製される。その内で種子を利用するものは油糧種子と呼ばれる。油糧種子には大豆、菜種、ひまわり綿ピーナッツゴマなどがある。果肉から取るものにはヤシやオリーブがある。これらをまとめて油糧作物と呼ぶ。

トウモロコシは油糧種子とは呼ばないが、コーンスターチ精製や精米時に分離する胚芽米ぬかなどの副産物から油が抽出される[20]

ヤシ類から各種の油が作られており、ヤシの種類の違いや利用部分の違いで以下のように分類されている。

アブラヤシの果肉(パーム果実)からパーム油

アブラヤシの種子(パーム核)からパーム核油

ココヤシの種子(ココナッツ、乾燥させたものをコプラと呼ぶ)からヤシ油

含油率

含油率は油料作物の単位重量当たりの作物に含まれる油分である。下記の表には記載していないが採油率という定義も使われる。採油率は植物に含まれる油のうち採取出来る率という意味ではなく、単位重量あたりの油糧種子からとれる油の率である。例えば、大豆の含油率は約20%で、その内9割が採取でき採油率は約18%である。

パーム油は果房あたり約20%の収率で、面積当たりの採油量は大豆油の約10倍である[21]。アブラヤシの果肉の含油率は51-67%[22]

各油糧種子の含油率
(油分重量/油糧種子重量)[23]作物含油率備考
アブラヤシの果肉50-60%パーム油
アブラヤシの種子50%パーム核油
ココナッツ、こぷら60-70%
大豆20%
菜種35-50%
ひまわり大粒種10-20%小粒種20-35%
ピーナッツ50%
オリーブ果肉55%種子13%


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