核戦争が始まる核戦力を用いた攻撃にはいくつかの形態が考えられる。
対都市攻撃
第二次世界大戦中の都市爆撃と同様、相手国の都市を破壊することで、国民戦意や継戦能力、インフラストラクチャーを破壊することを狙った核攻撃である。広島・長崎への核攻撃はこれに分類される。特に冷戦期間中、核保有国・非核国の区別なく各国でシミュレートされ、他の形態の核攻撃と比べて被害が際立って膨大なことから最も恐れられた攻撃である。主に民間人やその住居など、非軍事目標を狙うため非人道性は高いが、一旦大規模な核戦争が起きると、後述する対核戦力核攻撃によって、数時間から数日のうちに彼我の核戦力が沈黙し、以後選択の自由は失われてしまう為、保険的な目的で核戦争勃発時にこうした攻撃が発生する可能性は、今でも高いと考えられている。冷戦期間中は米ソ両国で検討されプラン化されていた。
対核戦力先制攻撃
相手国の核戦力の基盤であるミサイルサイロ、潜水艦基地などに対する核戦力を用いた先制攻撃である。ただし、外洋をパトロールする潜水艦には核兵器が搭載されており、その破壊は難しいため、不完全なものとなる可能性が非常に高い。
対通常戦力先制攻撃
相手国の通常戦力、陸軍・海軍・空軍の駐屯地・基地に対する核戦力を用いた先制攻撃である。この攻撃が行われる場合は、その後に相手国の戦力を完全に無力化するために通常戦力を用いた攻撃が計画されている可能性が高い。
対産業攻撃
発電所、エネルギー施設、産業施設などの経済拠点に対する核戦力を用いた攻撃である。ただし、この攻撃を実施する場合は、目標地域に民間人がいるため、多大な死傷者が出る。
対司令部攻撃
首都、統治機関、軍隊の参謀本部などの司令部に対する核戦力を用いた攻撃である。この攻撃は理論上、相手国の報復攻撃を阻止することを目的としたものであるが、軍指導部は核兵器発射権限を各部隊に委譲できるため、実際に指揮系統を機能停止にし、反撃を封じ込めることは非常に難しい。
報復攻撃
先制攻撃を受けた場合、相手国の核戦力(場合によっては産業・司令部に対して)を無力化するために核戦力を用いて報復のために攻撃を実施する。報復攻撃には主に二つの方法がある。
警報時の発射(LOW)
核兵器が爆発する前に報復攻撃を実行することである。基本的にこの攻撃は人工衛星やレーダーを用いたミサイル警報システムが整備されている必要性がある。
被爆下の発射(LUA)
核兵器が爆発したことを確認してから報復攻撃を実施する。さまざまなセンサーや人工衛星などで情報を確認し、攻撃を実行する。
核テロ攻撃
スーツケース程度の小型の核兵器を用いた攻撃を指す。軍事的な分類ではないが、都市で実施すれば高層ビルを崩壊させ、周囲の建築物に多大な被害を与えるという非常に大規模な攻撃が可能であり、非常に危険性が高い(テロリズムを参照)。他、ハッキングによる核発射や、テロリストが核ミサイルを搭載した潜水艦や人工衛星をのっとることで発射させることもフィクションでよく使われる。
核攻撃の影響詳細は「核爆発の効果」を参照
核戦争は予想されうる事態に過ぎず、歴史的な事例は存在しない。また戦争には多数の不確実性が生じ、その影響も攻撃方法、使用兵器、攻撃対象の位置、環境、人口などさまざまな要素が関連するため科学的な予測は難しいが、2019年にプリンストン大学のアレックス・グラーザーが、アメリカとロシアの間で核戦争が起こった場合、9150万人の死傷者が出るというシミュレーション結果を公開している[3]。