アメリカ合衆国では、1897年から1903年にかけて会社間同士による合併が進み、今まで鉄道分野に限られていた大企業が、他の産業分野にも出現するようになった。こうして、「ビッグ・ツー」、「ビッグ・スリー」、「ビッグ・フォー」といった様な巨大企業が多くの産業で形成されるようになった[34]。 日本での株式会社の設立方法には、発起人(ほっきにん)が全額出資する発起設立と、発起人が一部を出資し、残りの株式を引き受ける者を募集する募集設立の2種類ある[35]。いずれの場合も、発起人が、株式会社の目的、商号、本店所在地、設立に際しての出資額、発起人の氏名(名称)・住所等を記載した定款を作成する[36]。発起人及び募集設立の場合の引受人は、引き受けた株式についてその全額の出資を履行しなければならない[37]。そして、本店所在地において設立の登記をすることによって株式会社が成立する[38]。専門職として、明治5年に司法書士が創設され、株式会社の設立などの業務を行う。 旧商法の下では、株式会社の設立に際して最低1000万円の資本金を必要とする規制があったが、2003年(平成15年)2月の新事業創出促進法の一部改正で一定の条件で資本金1円で会社設立が可能となる「最低資本金規制特例制度」が制定された後、2006年(平成18年)5月の会社法の施行に伴い、最低資本金制度は廃止された[39]。持分会社も、社員となろうとする者が定款を作成し、本店所在地で設立の登記をすることによって成立する[40]。 アメリカでは株式会社を表すため、会社名の後にInc.をつける。アメリカのコーポレーションは、設立人 (incorporator) が基本定款(articles of incorporationやcertificate of incorporation) を手数料とともに州務長官等の州の機関に提出することによって設立される[41]。設立人は出資者でなくてもよく、弁護士などが設立人となることも多い[42]。基本定款には、コーポレーションの名称、存続期間(通常は「永久」)、目的(通常は「すべての適法な事業」)、発行可能株式数、登録事務所、取締役の人数(州によって設立時取締役 (initial directors) の氏名)、設立人の氏名、住所等が記載される[42]。一方、発起人 (promoter) は、自ら出資したり、他の出資者を募ったりして資金を調達し、また各種の設立準備行為を行う役割を担う[43]。 かつてはすべての州に最低資本金(1,000ドルとするのが最も典型的であった)の制度があったが、現在では、ほとんどの州で廃止されている[44]。設立人又は設立時取締役が最初に開く会合(又はそれに代わる書面による合意)で、株式引受けの申込みに対する承諾、株式の発行、取締役・執行役員の選任、その他事業を始めるための契約の承認、附属定款 (bylaws) の承認などが行われる[45]。 法人である株式会社が意思決定をし、行為をするには、自然人や会議体による意思決定・行為が必要である。そのような自然人や会議体を会社の機関という[46]。 株式会社にどのような機関を置き、各機関にどのような権限を配分するか(機関設計)は、各国の法制、各会社の選択によって異なるが、所有と経営が分離した株式会社では、取締役会が経営を行う一方、取締役の選任など株主全員による意思決定を行うために株主総会が開かれるのが典型的である。このほか、監査役や会計監査人などの機関が置かれることもある。なお、本店・支店や、部・課といった会社の内部組織は、機関とは異なる。 どのような機関設計を行うかは、コーポレート・ガバナンス(企業統治、後述)にとって中心的な意味を持つ[47]。 株主総会 (meeting of shareholders) は、株主全員を招集して開かれる会議である。 株主は、(1)配当や残余財産の分配など経済的な利益を受ける権利(自益権)と、(2)議決権など会社の経営に参加する権利(共益権)の双方を有するが[48]、株主総会は株主が議決権を行使する場である。 日本の株式会社では、毎事業年度の終了後、定時株主総会を招集しなければならないほか、臨時株主総会を招集することができる[49]。株主総会を招集するのは取締役であるが[注釈 2]、3%以上の議決権を有する株主は、株主総会の招集を請求することができ、取締役が応じない場合は裁判所の許可を得て自ら招集することができる[50]。株主総会は、非取締役会設置会社 定足数は原則として過半数、議決に必要な表決数も原則として過半数とされているが、決議事項によっては、3分の2の特別多数決が必要とされている[52]。 アメリカの1984年模範会社法(Model Business Corporation Act 1984)は、定時総会 (annual meeting) を毎年開催しなければならないと定めている。その主な目的は取締役の選任であるが、招集通知 (notice) に記載されていない事項でも株主総会の権限内の事項であれば決定することができる。臨時総会 (special meeting) は、取締役会、一定の割合を持った株主(1984年モデル会社法では10%)、一定の執行役員など、州の制定法又は会社内規で定められた招集権者が招集することができる。定時総会と異なり、招集通知に記載された議題に限られる。株主総会の定足数は最低3分の1とする州法が典型的であるが、下限を法律で定めない州もあり、また上限については全員出席を必要とする定めを置くことも可能である。議決に必要な表決数は、出席株主の議決権の過半数とする州法が一般的であり、棄権を除いた議決権の過半数とするところもある[53]。 各国とも、株主によって選ばれる取締役会 (board of directors) が会社の経営上の意思決定を行うとする組織形態が一般的であるが、具体的な経営体制は各国の法制や実務慣行によって異なる。 日本の株式会社では、従来は必ず取締役会が置かれることとされていたが[注釈 3]、新会社法においては、公開会社などでは取締役会を置かなければならない一方、それ以外の会社では取締役会を置くか否かを定款で定められることとなった[54]。 (1)取締役会設置会社では、取締役会が経営に関する意思決定を行い、取締役の中から選ばれた代表取締役が業務を執行し、対外的に会社を代表する。(2)しかし、取締役会設置会社の中でも、委員会設置会社では、執行役が業務を執行し、代表執行役が対外的に会社を代表する一方、取締役会の役割は、基本事項の決定、委員会メンバーの選定・監督、執行役の選任・監督に限られる。(3)非取締役会設置会社では、各取締役が業務を執行するとともに、それぞれ単独で会社を代表するのが原則である[55]。 アメリカの株式会社 (corporation)では、取締役会が経営を行うというのが伝統的な会社法の仕組みである。しかし、実際の大規模会社では、日々の経営は執行役員 (officer)が行い、取締役会はその監督を行うにとどまっており、他に仕事を持つ非常勤の外部取締役が大部分をなす場合が多い[56]。一方、閉鎖会社では株主が直接経営を行っている場合が多いという実態を反映して、多くの州法で、閉鎖会社では取締役会を設置しなくてよいとする立法が行われており、さらに、モデル会社法 一方、役員(officer)は、取締役会により選任され、社長 (president)、書記役 (secretary)、会計役 (treasurer)、1名又は複数の副社長 (vice president)を置かなければならないとするのが伝統的な法制であるが、取締役会はこれ以外にも役員の役職を設けることができる。大企業では、最高経営権を掌握するCEO(最高経営責任者)のほか、CFO(最高財務責任者)、COO(最高執行責任者)といった役職を設けることが多く、しばしばこれらの肩書きの方が法制上の役職よりも重視される[59]。 ドイツの株式会社(AG)では、取締役会 (Verwaltungsrat) が監査役会 (Aufsichtsrat)とその下に置かれる執行役会 (Vorstand)の二層に分かれている。
設立
日本
アメリカ
機関
株主と株主総会詳細は「株主総会」を参照
日本
取締役・監査役などの機関の選任・解任
定款変更、合併・会社分割、解散など、会社の基礎的変更に関する事項
株式併合、配当など、株主の重要な利益に関する事項
取締役の報酬の決定
アメリカ
取締役会と経営詳細は「取締役会」を参照
日本
アメリカ
ドイツ