株主総会
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なお、過去に野村ホールディングスの株主が同社に対して100項目以上の提案を行うなど[6][7]、「提案権が濫用的に行使される事例があった」として、2019年12月に同じ提案者が1回の総会に出せるのは原則10議案までに制限する改正会社法が国会で可決・成立した[8][9]。しかし、会社法改正後も2020年5月に1株主から複数の議案が三井金属鉱業に対して上程されるなど、根本的な解決に至っていないとする指摘もある[10]
決議方法(議決権行使)詳細は「株主の議決権」および「プロキシーファイト」を参照

株主は、代理人によってその議決権を行使することができるが、出席することができる代理人の数には制限がある。
株主総会決議詳細は「株主総会決議」を参照

各株主(議決権制限株主および当該会社自身を除く)は、1株または1単元株毎に1票を有し、通常は多数決によって議事を決する(308条、309条)。ただし、会社法が定める一定の事項については特別多数による決定(特別決議(309条2項))または特殊決議が要求される(309条3項4項)。なお「4分の3特殊決議(4項特殊決議)」は会社法により初めて定められた決議方法である。

株主総会の決議の省略(319条)

決議の種類

名称定足数決議要件
普通決議
(309条1項)

「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」
※定款で別段の定めをしうる(一般的に上場会社では過半数要件を解除している会社が多い)※ただし役員の選任・解任の場合は3分の1以上でなければならない

「出席した当該株主の議決権の過半数」
※定款で別段の定めをしうる。
役員(取締役・会計参与・監査役)選任・解任の決議
(341条
)

「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」
※定款で別段の定めをしうるが、3分の1以上でなければならない。

「出席した当該株主の議決権の過半数」
※定款で別段の定めをしうるが、過半数を上回る場合でなければならない。
特別決議
(309条2項)
(監査役の解任など)

「出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数」
※定款で別段の定めをしうるが、3分の2を上回る場合でなければならない。
特殊決議
(309条3項)
(公開会社が非公開会社に定款変更する場合など)規定なし

「議決権を行使することができる株主の半数以上かつ当該株主の議決権の3分の2以上」
※定款で別段の定めをしうるが、これを上回る割合でなければならない。
特殊決議
(309条4項)
(非公開会社において剰余金配当・残余財産分配等につき株主ごとに異なる取り扱いをする規定を置く場合)規定なし

「総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上」
※定款で別段の定めをしうるが、これを上回る割合でなければならない。

電磁的方法による議決権の行使

議決権行使の投票については2002年(平成14年)の商法改正で、インターネットによる投票も可能になり、会社法にも引き継がれた。会社が容認すればインターネットによる投票も可能になり(310条)、2004年(平成16年)のソニー川崎重工業NTTNTTドコモ日興コーディアルグループ三井トラスト・ホールディングスなど14社が携帯・ネット端末等による投票を認めるようになった。

しかし、議決権電子行使プラットフォーム(2006年(平成18年)運用開始の機関投資家用のシステム。2002年(平成14年)の商法改正によりインターネット投票ができるようになったのは個人のみ)への参加が全体の2割に届かない状況(例えば、トヨタ自動車キヤノンでも参加していない)であるのを見ても、インターネットによる議決権行使は普及していない状況が伺われる[11]
議事録

株主総会の議事については、法務省令で定める(b:会社法施行規則第72条)ところにより、議事録を作成し株主総会の日から本店に10年間、議事録の写しをその支店に5年間、備え置かなければならない(318条)。
株主総会の運営
総会屋詳細は「総会屋」を参照

株主総会において株主としての地位を利用して会社から不当な利益を得ようとする者をいう。会社から利益を与えられて、株主総会を短時間で終わらせる調整・根回しなどに努める与党総会屋と、株主総会の妨害を予告して会社から利益を得ようとし、得られない場合には株主総会を妨害しようとする野党総会屋に分類される。

これらの総会屋の存在は、特に上場会社において株主総会で決算書等が順調に報告承認されることが現任取締役への株主の信頼度を示すものと考える会社が多かった日本特有の事情に根ざしており、一時は一般の株主の権利行使の妨げとならないか「いわゆる特殊株主」として議論され「株主総会の正常化」が問題視されるほどであったが、会社の株主への株主権の行使・不行使に基づく利益供与の禁止(970条)の法制化が1981年(昭和56年)商法改正で実現し、同時に導入された単位株主制度(現・単元株主制度)による単位未満株主の議決権の排除により現在は沈静化の方向に向かっている。しかし、総会屋に対して露骨に金品の授受を行わないようになっただけで、特定の経済誌への広告の出稿要求や観葉植物のレンタルといった見えにくい形で総会屋への利益供与は継続しているとする見方もある。
しゃんしゃん総会

総会屋対策のため、あるいは会社の方針を株主に非難されるのを避けるため、議事進行を故意に早める総会の俗称。会社の与党株主(従業員持株会担当者や総務部門から招集されていた)が総会の席の前面を陣取り、会社側の説明に大きな拍手や「賛成!」「議事進行!」などの大きな声で議事を早く進める。他の株主の意見はかき消され、総会は30分以内に終わることが多い。

この様な総会はオーナー会社に多く、オーナー以外の株主が株価の変動差益にしか興味を持たないため起こり得る日本独特のものであるが、株主総会の本来の意義からは大きく逸脱していると問題視されていた。総会屋よりも悪質であるという意見もある。

近年は、多くの場合、平日に出席してくれた株主の意見を反映させるべく質問時間を多く取ったり、逆に取締役の役員報酬の開示を求める議案を提出したり、経営陣との懇親会を総会後に設けたりするなど、個人株主を優遇する会社が増加し、株主総会の開催時間は1990年代以降、やや長くなる傾向にある。また、アクティビスト(後述)の登場により、従来は安定株主とされてきた機関投資家も、主に買収防止策や責任免除に関わる定款変更や役員の退職慰労金の議案などにつき、反対意見を投じる場合も多く見られるようになっている
株主民主主義

絶対的な大株主の存在しない上場会社の株式を大量に取得した上で、株主価値の向上や株主への利益還元といった事象について、ファンドマネージャーが、株主総会以外で、つまり、経営者がIR活動として行う「スモール・ミーティング」や「機関投資家説明会」などの場で、経営陣の意向を、より市場株価を向上させる方向へ誘導させるよう直接活動することが、2003年以降、日本にも多くなった。


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